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テオドラン様は、学園に通われていない。
これは国の取り決めなどではなく、テオドラン様の神の一族が持つお力が強すぎた為にご自分から通わない事を決められたのだ。歴代の神子が通われた所であり、国一の学園であってもテオドラン様のお力を止めることなど出来ないからだ。
今までテオドラン様はお力を暴走された事はない。それでも同年代の不特定多数の学友と過ごすうちに、心を乱し暴走する可能性を危惧されたのだ。
私としてはテオドラン様がその様な事になるとは思えないのだが、テオドラン様の決められた事に意見はしなかった。お力が強力だからこそ念には念を入れたいのだろうと、理解していたからだ。
神の一族は神の子孫である。故に人には為せない事を為せる力がある。私も全てを知っている訳ではないけれど、例えば人の病を癒す事が出来たり、自然災害を引き起こせたり、未来を垣間見る予言をもたらしたり、等が出来るのだとか。
とは言っても、風邪を治せる程度とか、雨を数分降らせたりとか、国や人の生死、人生が関わるほどの重大な予言ではなく数日後の天気とかその様な程度らしい。
まあ、テオドラン様は違うのだが。
テオドラン様のお力は本当に強く、不治の病や死が目前な程まで進行してさえいなければ、殆どの病を癒せるのだ。自然災害もやろうと思われたら大概の災害を引き起こせるだろうし、国の存亡程は難しくとも国家規模の危機に発展しそうなものは予言出来るのだとか。
テオドラン様は頭脳明晰でもあられるので、所謂生まれながらのチートなお方だ。力に驕り、他者を下に見る様な方ではなく、他者を慮る事のできる方なのが幸いだ。
神は正しく制御できる方だからこそ、これ程のお力を与えるほどの寵愛をされているのだろう。テオドラン様の事に関してのみだが、神とは話が合いそうである。
因みに病を癒す事と怪我を治す事は別物だ。癒しの魔法は存在しおり、その系統の魔法は総じて白魔法白魔法と呼ばれている。
そうこの世界には魔法が存在しているのだ。魔法によって起きた事象は発動後効果を発揮したのち、一定時間経てば消える。
例えば魔法で火を出しても、一定時間が経てば引火していたとしてもその炎ごと消える。魔法で火事は起こさないのだ。ボヤは起きるけど、消化活動はいらない。
起きた事象は消えないので、回復したままだし、燃えていた物は焦げていたりする。
少し不思議なのだが、出した水は何かを濡らしたりしていなければ跡形もなく消えるのに、魔法で濡れた物があったらそのまま濡れているのだ。火を消すのに魔法で水を出して消化したら、そのまま消化できるし魔法が当たった物は濡れている。魔法でびしょ濡れになったら、一定時間過ぎてもびしょ濡れのままなのだ。
魔法で出した水は飲めもするし、きちんと水分補給になる。魔法で起きた事象は巻き戻ったらしないのだ。
私は魔法を使えないので全て聞き齧った知識でしかないのだが。教えて下さったのはテオドラン様だ。
テオドラン様のお父上、ニグール・フォン・オルトロス伯爵様は魔法士であり、魔道研究所の所長をされている。
この魔道研究所は国の研究機関で、魔法や魔法具魔法具の研究をしているため魔法研究所ではなく魔道研究所なのだそうだ。
魔道研究所の所長は国の魔法と魔法具の責任者になる。伯爵様が国王陛下から信頼されているからこそ、研究者達を任されているのだ。
故にか、テオドラン様も魔法や魔法具に興味を持たれている。一流の魔法士から教わり、ご本人のやる気もあり魔法士としての腕前は確かだ。
また魔法や魔法具から歴史にも興味を持たれ、魔法や魔法具がどの様に生まれ扱われてきたかを勉強された。魔法と儀式の違いを1番熱心に勉強されていた様に思う。
魔法の勉強だけでなく、学園で教わる様な事柄は殆ど勉強されている為、テオドラン様が学園に入学される必要性はあまりない。まあ、同年代の方々との交流はあまりないので勉強のみが目的ではない学園に通われたときのメリットが、あまりないなんて事はきっとないのだろうけど。
ただこれからテオドラン様は学園に通われる時間がなくなる。リョースリンダと教会にて神子としての勉強が始まるのだから、お忙しくなられるテオドラン様のが学園に通われなかったのは、正解だった様だ。