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蝋剣の退魔士 ~最強の剣はエクスカリバーでも斬鉄剣でもなく、ロウソクでした~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 シャルブック教団・入団編

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第五話 入団テスト

 〈ヴィスコ〉を出て、次の日の朝に〈ダーナ〉に着いた。

 〈ダーナ〉は海に近い街で、潮風が街に吹いている。見る限り活気があって良い街だ。


 俺は〈ダーナ〉を散策し、街の人に話を聞いて教団支部へ辿り着いた。


「ここが教団ね……」


 教団支部は教会の形をしている。

 入口まで行くと、白い制服を着た女性が近づいてきた。


「おはようございます。私は第二教団所属の司祭マーサです。御用はなんでしょうか?」

「エクソシストになりたい。どこへ行けばいい?」

「入団希望ですか……わかりました。ではこちらへ」


 誘導に従い、支部に入る。

 礼拝堂を通過し、着いた部屋には多数のエクソシストと思しき人たちと、多数の掲示板・机があった。


「ん?」


 部屋の隅に面妖な存在を発見した。

 たぬきだ。

 茶毛の子たぬきが、床に布団を敷いて眠っている。たぬきはむにゃむにゃと頬を掻き、寝返りをうつ。


「あのたぬきはなんだ?」

「あー、その子は放っておいてください」


 マーサは溜息交じりに言う。


「こちらです」


 マーサは机の1つにつき、


「まず、紹介状などはお持ちですか?」

「あ、ちょい待ち」


 ハーツから受け取った手紙を渡す。

 マーサは手紙の封を剥がしながら、


「これは誰からの紹介状ですか?」

「ハーツ=ヴァンクード。俺の師匠から受け取った物だ」

「ハーツ――ヴァンクード!?」


 マーサは和やかな表情を崩し、ぎょっとした顔で俺を見る。


「「「ハーツ=ヴァンクード!!?」」」


 マーサの反応に呼応するように、周囲のエクソシストたちが一斉に俺に視線を集めた。


「この筆跡、霊印……間違いありません。ハーツ枢機卿のものです……!!」


 マーサが言うと、他のエクソシストが一斉に詰め寄ってきた。


「おい! あの人はいまどこに居るんだ!? あの人宛ての仕事が山ほど溜まってるんだぞ!」

「ハーツ枢機卿の修行に耐えられた人がいるなんて……あなた名前は!?」

「あの迷子姫に遂に正式な弟子ができたのか!」

「いま近くに居るのか! 行方不明になってからもう1年経ってるぞ!!」


「おいおい! 一気に聞くなって!!」


 反応を見るに、やっぱあいつ、凄いんだな(色んな意味で)。


「ごほん。皆さん、お静かに」


 マーサがエクソシストを静かにさせる。


「たしかに、紹介状を受理しました。ですが、すぐにあなたを入団させることはできません」

「なにをすりゃいい?」

「入団資格を得るためにはFランク任務を3つ、こなしていただかなければなりません」

「任務?」

「はい。エクソシストの任務には7つのランクがあります」


 マーサは任務の説明が載った表を見せてくる。


―――――――――――――――


【Sランク】

 枢機卿2名から受けることができる任務。任務の受理には教皇の承認も必要。一国の危機レベル。

【Aランク】

 枢機卿1名もしくは大司教3名から受けることができる任務。任務の受理には枢機卿2名の承認が必要。都市の危機レベル。

【Bランク】

 大司教1名から受けることができる任務。任務の受理には枢機卿1名の承認が必要。悪魔被害が10000人を超えているような案件。

【Cランク】

 司教1名もしくは司祭3名から受けることができる任務。任務の受理には大司教1名の承認が必要。悪魔被害1000人レベル。

【Dランク】

 司祭2名から受けることができる任務。悪魔被害100人レベル。

【Eランク】

 司祭1名から受けることができる任務。悪魔討伐が想定される案件。

【Fランク】

 教団に所属していない者にも任せてもいい任務。悪魔の被害か定かではない案件。


※悪魔被害がなくとも、潜在的に100人以上が被害に遭うような案件でもDランク任務にあてられる。他のランクも同じで、潜在的に一国の危機になりそうな案件、都市の危機になりそうな案件ならばSランク、Aランクにあてられる。あくまで指標。

―――――――――――――――


「Fランク任務なら、教団に入ってない俺でも受けていいわけか」

「Fランク任務は霊力を扱えるなら守護神がいなくてもこなせるぐらいの任務です」


 それなら余裕だな。


「Fランク任務を3つこなせば、俺は教団に入れるわけだな」

「はい。ですが、教団に入るだけではエクソシストとは認められません」

「どういうことだ?」

「エクソシストとして認められるには教団に入った後で、“シャルブック聖教学校”、“シャルブック大聖教”、“シャルブック騎士団”のいずれかに属さなければなりません」

「全部知らねぇ」

「聖教学校は4年制のエクソシスト専門学校です。エクソシストとしての知識を勉強しつつ、エクソシストの任務を果たしていただきます。

 大聖教は教団が管理する宗教団体です。シャルブック教団の表の顔とでもいうのでしょうか。神に従事し、神への理解を深め、信徒を募ります。貴重な教団の資金源でもあります。エクソシストの任務もこなしますが、他2つの団体に比べれば任務をこなす数は少ないでしょう。

 騎士団はエクソシストの任務に特化した団体です。過半数のエクソシストはここに属しています。ただひたすらに任務をこなし続けます。聖教学校を卒業するか、大聖教で6年働くと騎士団に入る権利が与えられます」


 教団という大きな枠組みの中に、聖教学校、大聖教、騎士団の3つの組織があるわけか。


「つまり、俺がいま入れるのは聖教学校か大聖教なわけだろ?」

「その通りです。大聖教は教団に入団した後、希望すればすぐに入れます。聖教学校は入団した後、さらに入学試験を受けていただき、合格すれば入れます」

「それなら俺は聖教学校がいい。宗教に興味はないからな」

「わかりました」


 Fランク任務を3つこなし、教団に入る。

 ↓

 教団に入った後、聖教学校の入学試験に合格する。

 ↓

 晴れてエクソシストになれる! 


(ってわけだな)


 まずはFランク任務を片付けよう。


「今あるFランク任務を見せてくれ」

「少々お待ちください」

【お願い】

「面白い!」

「続きが見たい!」

「更新頑張って!」

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