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異世界未確認生物  作者: ダンディー
2/6

No.2 幼女な少女

異世界に来てから12年。


自分が異世界にいるということは理解していても、ここがどんな世界なのかは理解出来ずにいた。


それどころか、住んでいた村には疫病が流行り、気づけば俺はどっかの博士のモルモットになっていた。


「なぁ、いい加減威嚇するのやめろよ。仲良くしようぜ。」


俺は長時間俺の事を威嚇し続ける少女に向かって言う。


「お前...怖い...」


すると、彼女からそんな答えが返ってきた。


怖いなんて言われても、俺なんかやったかな?


そんなことを考えながら俺は彼女を見る。


髪の色は金髪で、幼く、少し猫っぽい容姿。目なんかはくりっとしていて、猫特有の、あの若干怖い目をしている。


(怖いかどうかは人によるけど...)


「もうあれこれ五時間は経ってるぞ。流石に気を張り巡らせるのも疲れてきた。俺は寝るぞ。」


そう言って俺はベットに横たわった。


ずっと視線を向けられているのでかなり寝にくい。


だが、とりあえず根性で寝ることにした。


それから起きたのはかなり後だった。


俺は時計を見る。


「もう4時間か...」


6年ぶりに動いたからか、たった数分歩いただけで俺は爆睡してしまった。


じー


俺がぼーっとしていると、1つの視線に気づく。


「おいお前。まさか4時間の間、ずっと俺のことそうやって威嚇し続けていたのか?」


俺は4時間寝いてもなお、俺を威嚇し続ける少女に言った。


「お前...いつ起きるか...わからない。」


なんだかなぁ。ここまで来ると流石にちょっと引いちゃう...


とりあえず、どうしたらこの子が普通に自分に接してくれるか考えないと、気まず過ぎる。


いつまで博士にここにいされられるかも、わからないしな。


ということで俺はこの少女と話すことにした。


「なぁ、お前名前なんて言うんだ?」


「・・・」


少女は黙り込んだ。


まじか…名前を聞くのもダメなのか?


そう、俺が考えていると一言返事が返ってきた。


「ミャオ。それが…私…名前。」


俺は少し驚き、次の質問をした。


「なぁ、お前って猫との合成生物なのか?」


すると、驚いたのか、ミャオは大きく目をひらいた。


「なんで...わかる?」


「いや、見た目とか色々猫っぽいし...」


ミャオが黙り込んだせいか、なんだか気まずい空気が流れる。


「お前...蛇?」


数十秒経ってから彼女は話しかける。


「あぁ、そうだよ。ちなみに俺の名前はゲイン、よろしくな。」


「蛇...博士...ずっと...作りたがってた。」


ミャオは呟いた。俺は、その意味深な一言になにか引っかかる所があり、彼女に質問した。


「博士が俺を作りたがってた?どういうことだ?」


「蛇は...特別な魔獣...だから...人と...合成...無理だった。」


特別な魔獣?なんだそれ。というか蛇って動物じゃなくて魔獣なのか?


まぁ、俺は動物と魔獣の違いなんてわからないんだけどな。


「つまり俺は博士にとっての念願の存在だった訳だな。」


俺がそう言うと、彼女は頷く。


いいぞ、ちょっとずつだけど、彼女が心を開いてくれている。


そんなことを考えながら俺はミャオに続けて聞く。


「なぁ、ミャオってどんな経緯でここにいるんだ?まさか自分から博士の実験体になった訳じゃないろだろ?」


彼女は黙りこむんで下を向いた。


アレ!?


どうやら俺は彼女の触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。


しばらく少し黙っておくか?


すると、ミャオは口を開けて喋りだした。


「私の村...無くなった。魔獣達...攻めてきて...みんな...死んだ...。お父さんも...お母さんも...アーニャも...みんな...いなくなった。だけど...私...生き残った...。」


彼女は涙を流し始めた。


アーニャというのは彼女の友達だろうか?


俺は無言で彼女の話を聞き続ける。


「私...何も食べられない...何も飲めない...友達もいない...家族もいない...。何もできない。もう...死にそうだった。それで...その後...気づいたら...5年経ってた。体も...猫になってた。」


俺はそこで理解した。


なぜ彼女と話す時、幼い子と話している感覚に陥ったかということを。


そう、彼女はまだ幼児なのだ。


もちろん体的には俺と同じくらいである。


しかし、彼女の精神年齢は5年前に止まっていたのだ。


村を魔獣立ちに滅ぼされて、自分自身も長い眠りにつかされて。


この少女は一体どんなに辛い思いをしてきたのだろうか?


俺と同じ...いや、俺以上に辛い経験をしてきたのではないのだろうか?


俺だって親は死んだ。


流行病で死んだ。


それは彼女と何ら変わらない。


しかし、彼女と俺とでは、圧倒的に違うものがある。


孤独感だ。


俺は、この世界で生きた年数が6年でも、前の世界ではもっと長い間生きていた。


精神年齢は、肉体年齢をとっくに上回っている。


しかし、彼女には俺のようなアドバンテージはない。


彼女は正真正銘、まだ幼児を脱出しただけの子供だ。


まだ小学1.2年の子と変わらない。


そんな子が、突然親や友達を無くして、更に孤独になったのだ。


その時の精神ダメージは一体どんなものなのだろうか?


「そうか...辛い思いをしたんだな。」


俺は静かに、しかし彼女に聞こえる声で言った。


彼女はさらに泣き始めた。


一体俺はどう答えるのが正解だったのだろうか?


俺はどう行動することが正解だったのだろうか?


その時の俺の感情は複雑で、彼女にどう接すればいいのか、俺はわからなくなってしまった。


その日は、俺達は一言も言葉を交わさなかった。






そして、それから3日が経った。


最初は気まずかった空気も、今では完全に打ち解けて、みゃおと話す時間も長くなった。


というか、基本この部屋には何も無いので、ミャオと話すくらいしかやることがないのだが...


まぁそういう訳で、俺は多少は充実した生活を送っている。


食事はちゃんと配られるし、不便はない。


既に1度死にかけた俺にとっては、とても幸せな生活だ。


こんな生活ができるのも、実験体としてだが、俺を助けてくれて、保護までしてくれた博士のおかげだろう。


あの博士自体はあまり好きではないが、彼にはとても感謝している。


俺はふと、ガラスの外の廊下を見る。


そこには博士の姿があった。


「おい、ゲイン。出てこい。」


博士は俺にそう言って、扉にかかっていた鍵を開けた。


俺はミャオに、じゃああとでな、と言って部屋を出た。


その時のミャオはなんだか寂しそうにしていた。


「ついてこい。」


博士は俺に言って歩き出した。


俺は博士の後ろをついていく。


前廊下を歩いた時も思ったが、この研究所はとても広い。


俺の村にはなかった電気もあるし、なんだかとても近代的に感じた。


この世界の文明レベルは恐らくとても高い。


完全に俺のいた世界と同じ、またはそれ以上である。


「なぁ、ゲイン。お前にひとつ聞きたいことがあるのだが、いいかね?」


博士は俺に言った。


そういえばなんで博士は俺の名前を知っているのだろう?と思ったが、それはとりあえずほっといて俺は答える。


「なんですか?」


「この世界には錬金術なんて存在しない。」


え?


そう言われて俺はかなり戸惑った。


3日前、彼は錬金術で俺を作ったと言った。


なのに錬金術なんて存在しないなんて、話が矛盾している。


「どういうことだ?」


俺は言う。


「要はね、錬金術という単語はこの世界に存在しないのさ。この世界で錬金術を知っている者はいない。それに君、この廊下を見てなんとも思わなかっただろう。」


彼は続けて言う。


「この世界の電気の光源は、豆電球しか存在しない。しかし、ここには蛍光灯が存在し、他にも鉄の扉など、この世界の文明をはるかに上回っているものがたくさんある。だというのに、お前はこの光景に何も感じず、ただ普通に廊下を歩いていただろう。まるで既に見慣れているかのように。」


その言葉を聞き、俺は博士の言いたいことを理解した。


それと同時に、もうひとつの可能性にまで気づいてしまった。


博士はニヤッと笑いながら言う。


「言いたくなければいいのだが、ひとつ聞かせてくれ。ゲイン。お前は何者だ?まぁ、既に察しは着いているのだがねぇぇ。」


俺は何も答えなかった。


いや、答えようとしなかった。


別に理由はない。


ただの野生の勘だ。


しかし、この博士にこの事実を言ってはならないと、俺は思った。


この博士にこの事を言えば、大災害が起きると、俺は感じた。


「そうか言う気は無いか。まぁ、そのうちきっとわかる事だ。先急ぐ必要も無い。」


博士は奇妙な笑い声を上げて言った。


そして、それと同時に、俺はもうひとつのとんでもない考察を頭の中で繰り広げていた。


この博士もしかすると、異世界人では無いのか?


しかも、俺と同じくらいの時代に住んでいた、地球人なのでは?


彼は元々は地球人で、俺のように何かあってこの世界に転生した。


だとすれば、ここに、異常な科学力を持つ研究所があることには納得が行く。


しかし、それでは説明がつかないことがあった。


それは、彼は錬金術を使って俺を作った事だ。


俺の前にいた世界では錬金術なんてものはない。


もちろんそう呼ばれるものはあるが、それは空想上の術に過ぎず、実際に使ってる人も見たことがない。


しかし、博士は錬金術を使ったとはっきり言った。


俺は心の中で問いかける。


なぁ、ドンマ博士お前こそ一体何者なんだ?





その後、俺は変な部屋に連れていかれ、色々な質疑応答を受けた。


体の調子や、前の生活と変わった所。


さらにその後、俺は身体検査を受けた。


身長や体重から、体の柔軟性、合成した動物の力をどこまで引き出せるのかなど、かなり慎重に行われた。


やはり、俺が博士にとって、念願の実験体だからか、かなり細かいところまで検査を受けさせられた。


最後には、大量ではないが、血まで抜かれた。


全て終わった後、博士はとても嬉しそうに俺に指示を出した。


「ゲインよ。お前、来るまでの道は覚えたか?これ、鍵だから、自分で部屋まで帰ってくれ。俺は少しやりたいことがあるからな。」


はぁ?


俺は少し怒りが湧いた。


やるだけやって放置かよ。


まぁ、最初からそういう人だってことは知ってたけど。


とりあえず俺は呆れながら、博士から鍵を受け取った。


そして、周り右して、自分の部屋に向かって歩き出した。

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