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I am Aegis 最終章  作者: アジフライ
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第68話【避けられぬ運命】

イージスがゼンヴァールを倒してから二年後……

イージスはメゾロクスから離れ、 今後のメゾロクスの管理者は守護者達に役職を分けて任せた。

すなわち日本政府で言う所の大臣である。

そしてヒューゴはイージス達と別れ、 一人で冒険者を続けることにした。

「……」

「イージス様、 また日向ぼっこですか? 」

「ん、 あぁ……こうも平和だとやることが無くてな……」

イージスは大きな大陸から離れた孤島にて自給自足の生活を送っていた。

そしてザヴァラムは時々、 個人としてイージスの様子を見に来ていた。

あれから二年……もうあの服も剣も装備してない……でも……案外冒険が無くても充実できるもんだな……前世の世界ではこんな原っぱも無いしなぁ……

そんなことを考えているとザヴァラムはイージスの隣に座った。

「……イージス様……今日、 イージス様のくらす……めーと? がやってきましたよ……」

「そうか……皆は相変わらず冒険者をやってるんだな……」

「皆さんイージス様に会いたがっていましたよ……行かないのですか? 」

……そうだな……もう二年も会ってないからな……久しぶりにメゾロクスの様子を見に行くか……

「よし、 外出の準備をしよう! 」

「では私はメゾロクスにてイージス様をお迎えする準備をして参ります! 」

そしてザヴァラムは姿を消した。

イージスは一人小屋に戻り、 準備をすることにした。

…………

「……どうしたものか……」

服が……ない!

家のクローゼットの中にはイージスが普段着る作業着や地味な部屋着しか無かった。

イージスが頭を抱えているとふと部屋の壁に飾られたイージスの装備に目が留まった。

……まぁ……戦う訳ではないし……

…………

その頃、 メゾロクスにて……

「イージス様が戻って来られるのですか! ? 」

「えぇ、 しかし盛大な出迎えはイージス様の好みではない……いつも通り、 イージス様をお迎えするのだ! 」

『はっ! 』

そして守護者達はイージスを迎える準備をした。

そして数分後……

メゾロクスの城の扉が開かれた。

「……ただいま、 皆」

『お帰りなさいませ、 イージス様! 』

イージスが玉座の間に入ると守護者達はいつものように出迎えた。

そしてそこにはイージスのクラスメートもいた。

「お、 英雄様が二年ぶりに帰ってきたな」

「相変わらずだなぁ……」

「皆だって変わり映えしないじゃないか」

そんな会話をしながらイージスは再開を喜んだ。

皆本当に変わってないな……二年程度じゃ変わりはしないか……

そしてイージスはその日、 再開を祝って軽い宴会を行った。

「……」

宴会途中、 イージスは城のベランダで夜空を眺めていた。

そこに勇斗がやってきた。

「イージス……」

「龍人でいいよ……久しぶりの再会だ、 前の世界の名前を忘れるのは嫌だしな……」

「……龍人……君は前の世界が恋しくは思わないのか? 」

「……」

確かにここに来て何年も過ごしていれば前の世界の風景を見たくなるな……でも……

「……思う時もあるさ……でも……この世界には大切な人がいる……」

「……ザヴァラムさん……か? 」

「あぁ……彼女は一番最初に出会った仲間であって、 大切な恋人……でもあるからな……」

……柄でもないこと言っちゃったかな……体は成長してないが……俺も大人になってきてるということか……

不老不死のスキルを持っているイージスは見た目は高校生の時のままなのだ。

しばらくイージスは勇斗と一緒に会話を楽しんでいると……

『イージス様……聞こえますか……? 』

「! ? この声は……! 」

聞き覚えのある女性の声が辺りに響いた。

……ヒュリス様! ?

イージスが空を見上げた瞬間、 真っ暗な夜空に一つの眩い光が現れた。

そこにいたのはヒュリスだった。

『お久しぶりですね……イージスさん……そして皆様……』

「ヒュリス様……どうして……」

「もう会うことは無いかと思っていたが……」

イージスと勇斗が驚いていると守護者達とイージスのクラスメイトがベランダへ出てきた。

「何事ですか! イージス様! 」

「あれって……あの時の女神様じゃねぇか! 」

ヒュリス様……一体何をしにこの世界に……

するとヒュリスは深刻な顔をしながら話し始めた。

『イージスさん……そしてクラスメイトの皆さん……あなた方は今すぐ前の世界に戻らねばなりません……』

「! ? 」

前の世界に……戻れだって……! ?

それは突然やってきた……イージス達は女神の指示により、 この異世界……ヴェルゾアとの別れを告げよ……と……

「前の世界に戻れって……どうして! ? 」

『勿論理由はあります……私はこの世界からゼンヴァールが消えた時、 ずっとこの世界における闇の動きを監視してました……そしてやはり……最悪の事態が起きようとしていました……』

最悪の事態……?

『……ゼンヴァールと同等の力を持つであろう存在が……再びこの世界に現れようとしているのです……』

「なんだって! ? 」

ヒュリスの話によると、 イージスがゼンヴァールを倒した時、 ゼンヴァールの根源となった闇の因子がこの世界にばらまかれた……普通、 闇の因子というのは散開したのち他の魔物達に吸収され、 無害化するのだ。

しかしゼンヴァールの闇の因子は規格外だった……世界を焼き尽くすほどの力を持った闇の因子は魔物のみならず、 世界に住まう人々の中に入り込んだのだ……そして闇の因子は人々の持つゼンヴァールの記憶を糧に刻一刻と成長している。

これを放置すればいずれ、 闇の因子は再び集結し、 ゼンヴァールの力を持つ存在が復活してしまう恐れがある……

「そんな……だったらまた俺が倒せばいい! 俺なら倒せる力を持っている! 」

『確かに……イージスさんならば止められます……しかしそれは一時しのぎにしかなりません……何度倒しても……闇の因子は決して消えることはありません……人々の中に、 ゼンヴァールという記憶がある限り……この世界にゼンヴァールという記憶を残している限り……』

「……マジかよ……」

つまりこの世界の人々からゼンヴァールに関する記憶を完全に消さないといけないのか……

つまりそれはゼンヴァールと戦ったイージス達に関する記憶も消さねばならないということ……世界の脅威となる存在に関わった者に関する記憶は完全に消さなければならないのだ……それはメゾロクスの守護者達も例外ではなかった……

「……っ」

『イージスさん……苦しい決断ですが……こればかりは私の力でもどうしようも……世界の均衡を保つためにはあなた方の記憶からもゼンヴァールに関する情報を消し、 この世界から去らねばならないのです……でないとこの世界の歴史にも影響が……』

するとイージスはザヴァラムを見た。

「イージス様……」

「ザヴァラム……どうやら選択の余地は無いみたいだ……分かってくれ……」

イージスがそう言うとザヴァラムはイージスを抱き締めた。

一緒にいるって……約束したんだがな……

『……さぁ……皆さん……時間がありません……このゲートを通って下さい……そうすればこの世界の記憶を消され、 皆さんは前の世界へ戻ります……体もその世界も時間は巻き戻され、 クラス全体が行方不明になる前の時間に戻ります……』

するとイージスのクラスメイトは大人しくゲートに入っていった。

……まぁ……皆には前の世界に未練だってあるだろうしな……自分の勝手でこの世界をめちゃくちゃにする訳にもいかないし……どうせ記憶を消されるならこの世界への未練も糞もない……

クラスメイト全員がゲートを通り終わろうとした時、 勇斗と香苗がイージスの方を見た。

「……龍人……あっちで待っているぞ……どんな再開をするのかも分からないが……」

「龍人君……またね……」

「……あぁ」

そしてクラスメイト全員がゲートを通り終えた。

『……イージスさん……最後に一つ、 貴方の願いを聞きましょう……それは必ずや現実にします……』

……願い……か……

その時、 イージスはミーナの事を思い出した。

……決めた……

「それじゃあ……消えてしまった人達を……蘇らせてくれ……」

この時、 ゼンヴァールによって殺された人々の魂は依然として呪いから解放されず、 未だに蘇らせる方法は分かっていなかったのだ……

恐らくこれもゼンヴァールの持っていた闇の因子によるものだろう……

するとヒュリスは少し困った顔をした。

『……残念ですが……全ては不可能です……ゼンヴァールの呪いを受けた魂はより闇の因子の影響を受けています……例え記憶を消したとしても、 闇の因子はこびりついてしまうのです……』

「そうか……」

まぁ……元から無理なお願いだとは思ってたが……

『しかし……一人だけなら可能です……』

「! ……なら、 ミーナを頼む……そして記憶は残していて欲しい……彼女は……大切な俺の仲間だ……彼女にだけでも覚えていて欲しい……」

イージスに迷いは無かった。

……他にも蘇らせたい人はいたが……

するとヒュリスは優しく微笑んだ。

『承知致しました……願いは必ず実現しましょう……』

そしてイージスはザヴァラムを見た。

ザヴァラムはまだ受け入れられない様子だった。

……ザヴァラム……よし……

するとイージスは背中の剣を手に取った。

「覚えていてくれ……ここに……俺がいたということ……そして……君を愛していたことを……」

そしてイージスはザヴァラムに今までイージスが愛用していた背中の剣を手渡した。

そしてザヴァラムにはその剣の重さを感じなかった……

「イージス……様……」

涙をボロボロと溢しながらザヴァラム達はイージスの顔を見た。

「……皆、 メゾロクスを頼むよ……きっとまた戻れる日だって来るだろうしさ! 」

イージスがそう言うと守護者達は涙ながらイージスに跪いた。

『はっ! 我ら守護者、 至高なる聖神国、 メゾロクスを永久なるものとし、 主のお帰りをお待ちしてます! 』

さようなら……皆……

そしてイージスは光の門の中へと姿を消した……

(イージス様……私は……貴方の事を決して忘れません……例え記憶を消されようと……! )

ザヴァラムは心にそう強く誓った。

続く……

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