第66話【世界の終焉】
遂に封印が解かれたゼンヴァール……イージスは最後の戦いに挑むもゼンヴァールの圧倒的な力を前に苦戦してしまう。
すると戦いの途中、 イージスはゼンヴァールに世界に終焉をもたらす理由を聞く……
「……それは……余はこの世の全てに失望したからだ……」
「失望……? 」
「余も以前、 英雄を志した人間だった……」
ヒュリス様から聞いた通りだ……
ゼンヴァールは話を続ける。
「余は世界の人々の為に悪を滅するために尽力した……しかしどうだ……余が助けた人間は皆、 余を化け物と呼んだのだ……」
「……」
「しかし余は諦めずに人々を助け、 悪を滅していった……だが……最終的には人間達は余を処刑しようと迫ってきた……挙句の果てには勇者にまで殺されかける始末……」
ゼンヴァール……
「そして余は捕まり、 処刑台に掛けられた……その時になって余はようやく気が付いたのだ……」
「この世界に救う価値なんて……無いのだと……」
「……」
ゼンヴァールも以前は英雄を目指した一人の人間だったのだ……しかし勇者でもないただの冒険者が過度な強さを持つことは当時の人々にとっては脅威でしかなかった……そして何時しかゼンヴァールは人々から迫害され、 化け物と呼ばれるようになってしまったのだ……
「所詮は称号が無ければただの化け物呼ばわり……化け物は殺せという世界……」
するとゼンヴァールは怒りを顕わにして言った。
「余が何をした! 余は罪のない者を傷つけたか? 余は世界のどんな悪よりも邪悪な罪を犯したか! ? 」
「……」
「世界が余を悪とするのなら、 余は悪になってやろうと思った……世界の誰もが絶望に叩き落されるような……そんな悪になってやろうと思った……それが全ての始まりだ……」
次の瞬間、 ゼンヴァールはイージスの目の前に瞬間移動した。
「分かるか? 余を作り出したのは……貴様ら人間なのだ……」
イージスの耳元でそう囁いた瞬間、 ゼンヴァールはイージスの腹にパンチをした。
イージスはそのまま地面へ落とされてしまった。
「ぐっ……! 」
防御結界が貫通された……? まるでそこに無いかのように……!
イージスは体制を立て直し、 ゼンヴァールの方を見上げるとゼンヴァールは再び黒い炎の槍を出した。
「お喋りは終わりだ……死ね……! 」
「っ! 」
そして無数の槍がイージスに目掛けて降り注いだ。
しかしイージスはゼンヴァールに目掛けて飛び上がり、 槍の雨に突っ込んでいった。
イージスは剣で槍を弾いていく。
しかしあまりもの数に捌ききれず、 イージスの左目に一本の槍が刺さってしまった。
「ぐぁっ! ! ……うぉぁぁぁぁぁぁ! ! ! 」
赤く熱された鉄を突き刺されたような激痛が走る中、 イージスは決して止まらなかった。
(スキル、 万能解呪を獲得しました。 呪いの効果が消えます。 スキル、 不死身が発動します。 傷の治癒を開始します)
イージスは目に刺さった槍を抜き、 ゼンヴァールの方へ槍を投げた。
ゼンヴァールはその槍を手で弾いた。
その瞬間、 イージスはゼンヴァールの背後へ瞬間移動した。
「剣技、 末刃! 」
「神殺し! ! 」
イージスは剣に青い炎を纏わせ、 高速でゼンヴァールの背後に移動し、 通過した。
「……なるほど……レベルはあてにならんという訳か……」
「……! ? 」
ズネーラに致命傷を負わせたイージスの奥義を受け、 ゼンヴァールは平然としていた……
目立ったダメージはゼンヴァールの首に僅かに切り傷を付ける程度だった。
……やっぱり駄目か……でも……今の一瞬、 ゼンヴァールを守るバリアを貫通した……やっぱりこの剣に何かあるんだ!
ゼンヴァールを倒す僅かな希望が見え始めたその時だった……イージスは頭上から何か重たい気配が出現したのを感じた。
イージスが見上げるとそこには赤黒い巨大な火の玉があった。
「なっ! ? 」
「少し時間が掛かるのでな……雲の中に隠していたのだ……」
(超位魔法を遥かに超える魔力反応です。 回避不能……)
回避ができないだって! ? 転移魔法は!
(周囲の魔力が非常に不安定になっています、 恐らく滅黒点が原因かと思われます……)
ヤバい、 魔力が不安定では転移魔法は使えない!
イージスは咄嗟に防御魔法を何重にも重ねて防御した。
「無駄だ……そろそろ終わりだ、 堕天星……」
するとゼンヴァールは片手を上から下へ振り下ろした。
それと同時に赤黒い火の玉は地上に目掛けて落ちてきた。
イージスは防御魔法で火の玉を止めようとするも押し負け、 そのまま地面へ叩き落されてしまった。
そして赤黒い火の玉が地面に着弾した瞬間……
『……! ! ! ! 』
不気味なことに爆発音は無く、 凄まじい光と共に辺りが見えなくなった。
・
・
・
『……ス……-ジス……イージス……』
「はっ……! 」
どこかで聞き覚えのある声と共に気が付くとイージスは謎の暗い空間にいた。
「……ここは……」
『イージス……』
声の方へ振り向くとそこにいたのは……
「……な……何で……あんたがここに……! 」
かつてイージスが倒した相手、 ガインだったのだ。
『イージス……何故過去の自分を否定する……? 』
「それよりここはどこなんだ……? 」
イージスの問いかけに答えることなくガインは質問を繰り返す。
『答えよ……何故過去のお前を否定し続ける……何故前世の自分から離れようとする? 』
「……それは……俺は昔から弱くて……何事にも逃げようとして……とにかく駄目な奴だったからだ……」
『何故そんな自分が嫌いなのだ……? 』
「俺は……弱者を守れる英雄になりたかった……だから……俺は強くなくちゃいけないんだ……もう、 弱い俺に戻るのは嫌だったんだ……」
イージスは昔から誰かを守れる強い人間になりたいと願っていた……しかし前世の彼は体が弱く、 意志も弱かった……
「だから俺は生まれ変わって、 前世の俺とは違う人間になりたかった……」
『……イージス……それは間違っている……』
「あんたに何が分かるんだ……」
するとガインはイージスの元へ歩み寄った。
「分かるとも……俺は……」
「ずっとお前を見ていたんだから……」
その言葉と同時にガインの声色が変わった。
「っ! ? その声……! 」
イージスがガインの方を見ると……
『……龍人……やっとこうして話せる時が来たな……』
「……父……さん……? 」
なんと、 ガインの正体は龍人の父親だったのだ……
ガインの姿は悪魔のようなものから普通の人間の姿になっていた。
そんな……俺が殺したのは……!
するとガインはそっとイージスの肩に手を置いた。
『龍人……気にするな……あれは俺が望んだ結果だ……どっちにしろゼンヴァールを倒すのにはああするしか無かったんだから……』
「父さん……俺……どうすれば……」
『簡単な事だ……龍人……ありのままの自分を受け入れるんだ……弱かった自分を……』
「でも……」
受け入れろったって……そんな簡単に……
イージスが戸惑っているとガインはイージスの胸に拳を当てた。
『龍人……弱くたっていいんだ……お前には、 誰かを守りたいと思える……優しい心を持っているんだから! 』
「……! 」
『龍人……何も恥じることはないんだ……人間力も意志も弱くたってな……誰かを思いやる気持ちさえあれば……それだけでも救われる人だっているんだから……』
「父……さん……! 」
イージスは涙を溢した。
龍人の父親は龍人が幼くして亡くなってしまっていた……しかし父親は龍人の強さを知っていた……誰かを守る強さよりも大切な……誰かを守りたいと思える『優しさ』という強さを……
「俺……ようやく分かった……英雄とは……強さとは何なのかを……」
『……そうだ……決して自分を嫌いになるな……』
「……」
するとイージスの体は光に包まれ始めた。
「これは……! 」
『そろそろ時間のようだな……さぁ……行ってこい! 英雄ダイアの息子、 イージス! 』
すると父親はイージスの頭を撫でた。
『……でかくなったな……』
「……父さん……行ってきます……」
そしてイージスは意識を失った。
・
・
・
「……! 」
目を覚ますとそこは暗い瓦礫の下だった。
イージスは瓦礫をどかし、 外へ出た。
「……これは……! 」
外は辺り一面火の海、 壊れた街の残骸は炎の明かりで赤く照らされている……正に地獄のような景色になっていた……
(報告、 周辺数千キロメートル圏内が爆風により破壊されました。 しかし、 圏内にいた人間は避難施設にいたため、 死亡者数は……0です)
あの火の玉一つでそんなことに……
「……でも……まだ間に合う……まだ皆は生きてるんだ……」
するとイージスは片手を前に出した。
それと共にイージスの剣がどこからともなく飛んできた。
もう……俺は恐れない……何としてでも守りたい人々がいるんだから!
そしてイージスはゼンヴァールの元へ急いだ。
…………
ヒュエルの王城にて……
ゼンヴァールは壊れてむき出しになった玉座の間にある玉座に座っていた。
「……これで余の望みが叶う……世界に……終焉を……」
ゼンヴァールが滅黒点の完成を待っていると……
「……ん……? 」
どこからか足音が聞こえてきた……
そしてゼンヴァールの前に現れたのは……
「……まさか……! 」
「ゼンヴァール……決着だ……! 」
イージスだ……
ゼンヴァールは驚き、 思わず立ち上がった。
「何故生きている……ダイアはあの技で死んだというのに……! 」
「悪いが俺は母さんよりも頑丈なんだ……そう簡単には死なないぞ」
それに……守りたい人を残して死ねないしな……
そしてイージスは剣を構えた。
それを見たゼンヴァールも片手に黒い剣を出した。
「いつもそうだ……いつもその剣を持つ者は余の邪魔をする……何なのだ……その剣は……! 」
「俺にも分からない……だが……今俺のすべきことは……自身のやり場のない悲しみと怒りを何も関係も無い今を生きる人々に押し付け、 その人たちの作ってきた世界を壊そうとするお前を……止めることだ! 」
次の瞬間、 イージスは姿を消し、 ゼンヴァールの目の前に瞬間移動した。
そしてイージスはゼンヴァールに斬りかかった。
ゼンヴァールはギリギリで剣を使い防御した。
するとゼンヴァールの体はイージスの力で弾き飛ばされ、 上空へ舞い上がった。
(この力……速さ……先程とは何か違う……! 何が起こった! )
「うおらぁぁぁぁ! ! ! ! 」
イージスはゼンヴァールを追って上空へ飛び上がった。
ゼンヴァールは慌てた様子で黒い炎の槍と炎の球を飛ばした。
しかしイージスはそれらを剣で斬り刻み、 次々と弾いていく。
(やはり速くなっている! )
ゼンヴァールがそう思った瞬間、 イージスはゼンヴァールの背後に瞬間移動し、 斬りかかった。
するとゼンヴァールの体を覆っていた膜にヒビが入り、 ガラスのように割れた。
「なっ! 」
ゼンヴァールは咄嗟に防御魔法を使い身を守った。
しかしイージスに力で地面へ叩き落されてしまった。
そのままイージスも地上へ突っ込み剣を突き刺した。
「……! 分身……! ? 」
しかしイージスが刺したゼンヴァールは分身だった。
本物のゼンヴァールは上空へ飛び上がり、 体制を立て直していた。
「まさか……一体何が起きた……先程とはまるで別人のようだ……一体何が貴様をそこまで……! 」
するとイージスはゼンヴァールの方を見上げ、 言った。
「俺は気付いた……英雄は強いだけじゃない……人々を思いやる優しさも持ってこそなんだと……そして……今まで出会ってきた、 救ってきた人達の想い……それが紡ぎ合って俺を強くする……! 」
「英雄の強さというのは……人々の持つ『優しさ』そのものなんだ! ! 」
そういうとイージスは剣を両手に持ち、 騎士のように剣先を真上向けた。
するとイージスの剣は輝き出し、 バラバラに散開した。
散開した欠片はイージスの周囲を囲むように円を描き、 更に強い光でイージスの全身を包み込んだ。
イージスを包んだ光は上空へ舞い上がり、 ゼンヴァールの前で止まった。
『英雄よ……希望となれ……』
謎の声と共に光は勢いよく散っていった。
そして光の中から現れたイージスの姿は一変していた。
「……これが……覇神の力……」
(スキル、 覇神化を獲得しました)
イージスの着ている服は神々しく光を放ち、 背後には光の翼のような物が浮いていた。
イージスの顔にも奇妙な模様が刻まれており、 輝いていた。
「何なのだ……その力……! 」
「……最終局面だ……ゼンヴァール! 」
続く……




