最初の戦い 前編
小判猫は社から跳び、僕の前に降りるやいなや社の方を向いて猫パンチとしか思えない動きで右前足を地面に叩きつけた。
「なんで猫パンチしてんの?」
「猫パンチとちゃうわ!害魔を呼び出しとるんや!」
あまりに気が抜ける光景にやっぱり夢なのかもと考えている間に凄まじい地鳴りとともに地面が揺れ始めた。
「来るぞ!!」
「待って武器は!?武器をくれ!」
「後でちゃんとやるわ!」
そして僕と猫が武器のことで揉めている間に、地鳴りと地震は収まった。
「あれ、来な――」
安心しかけたその瞬間、シャンッという鈴の音を響かせて鳥居の方から全身真っ黒なモヤを纏った人型の何かが歩み寄ってきた。
「何あれ・・・。」
「あれが害魔みたいやな。」
「みたいやなって、見たことないの!?」
「うるさいわ!実物は見たことないし戦ったこともないわ。」
僕は呆れて言い合う気もなくなった。そして僕達がそんなことを話している間に害魔の親玉は僕達の数歩先で歩みを止めた。
「ちょ、武器は?」
「まあ待てや。」
そう言うと猫は顔をあげ祈るように目を閉じた。そしてそれと同時に害魔を覆っていた黒いモヤが神社に広がり始め、僕達の足元が黒いモヤで満たされた。
「なんかやばそうだよ!」
僕が焦っている間にも猫は黙って祈っている。
「どうすればいいんだ!コバン!」
そうこうしている間に、辺り一面の黒いモヤが再び害魔に集まって覆い、次の瞬間モヤが形を変え、木くらいの高さはあろうかという化け猫になった。
「なんだよ・・・これ・・・。」
僕が諦めの感情を抱き始めたその時、猫が叫んだ。
「次代の者に力を!破魔錫杖!」
猫がその言葉を言い終わると同時に僕の目の前に、人の背くらいの長さがある杖の頭にいくつかの輪がかかっている、三蔵法師が持っていそうな錫杖と呼ばれるものが現れた。
「これは・・・。」
「それが武器や、早よ取れ!この破魔錫杖には害魔を倒す神聖力が込められとる。害魔にはどこかしらに弱点があるから、その錫杖でそこを刺すんや!」
それを聞いて僕が錫杖を取ると同時に、化け猫の害魔が片方の前足で僕達を潰しに来た。
「うわっ!」
僕は反射で後ろに避けることができた。この錫杖を持つと不思議とどういう動きをすればいいのかがわかった。猫も横にいて、無事に避けられたようだ。しかし――
「弱点なんてどう見つければいいんだよ!」
「そんなもんわしもわからんわ。とにかく動き回って見つけるしかないやろ。」
「そんな無茶苦茶な――」
そこまで言いかけて、次の攻撃が来たのでまたとっさに避けた。今度は猫と分かれてしまった。すると猫が叫んだ。
「とりあえずあの害魔は、攻撃したわしを狙うはずや!注意を引き続けるから弱点を見つけろ!」
「わ、わかったよ!」
後編に続く




