出会い 前編
今日は最悪な日だ。大学1年の初めから約2年付き合った彼女にはフラれるし、その慰め会では飲みすぎて吐くし、真冬なのにマフラーと手袋を失くすし、なんて日だ!
「・・・いつもの神社に行こうかな。」
深夜、駅から家に帰る途中で神社のことを思い出し、そこに向かって歩き始めた。僕には、嬉しいことや悲しいことがあった時に必ず行く神社があった。大学に入って彼女ができてからは行くことがなかったけど。
「久しぶりに来たけど、また寂れたなあ。」
この神社は決して大きくない、中に猫が一匹入るくらいの小さな社と、社の前に人が二人横に並べば通れなくなるほどの鳥居があって、小判神社と書かれた小さな札が鳥居の前に置いてある。前に来た時よりもさらに寂れていて、今にも幽霊が出てきそうだ。
「5円を入れて、二礼二拍手一礼と。」
いつものようにお賽銭を入れて鈴を鳴らしてお参りをする。子どもの頃から通っていたから手慣れたものだ。
「良いことがありますように。」
そして最後の一礼をした瞬間、真っ白い煙に覆われて何も見えなくなった。
「えっ、なんだ!?」
僕は驚いて周りを見渡すと、煙はもくもくと神社一面に広がって、数秒ののち消えていった。
「今の煙は・・・?」
不思議に思いつつも視線を前に戻すと、社の中にかわいい猫が一匹立っていた。
「猫?いつの間にいたんだ。」
この神社ではよく野良猫が寝ていたりするので、猫がいることは不思議ではない。しかし、さっきまではいなかったはずだ。見間違いかもしれないと思い、目を凝らしてみてもやはりいる。そしてこの猫尻尾が――。
「二又・・・、妖怪!?」
「妖怪とちゃうわ!」
不意に関西弁でツッコミを入れられて、周りを見渡したが誰かがいる気配はない。
「今の声は誰だろう。」
「わしやわし!」
「えっと、わしさんはどこにいるんですか?」
「だから目の前におるやろが!」
半分怒り気味な口調にムッとしながら視線を前に向けると、変わらず二又のかわいい猫が一匹いるだけだった。
「まさか・・・、猫が喋ってる?」
「そうや!やっと気付きよったな。」
「まったく、やっと見えるようになりよって、遅いんじゃ!」
僕は現実ではあり得ない光景を前に、アルコールが抜けていない頭で思考を巡らせたが、どう考えても夢以外の結論が出ない。
「うーん、飲みすぎてどこかの道端で寝ちゃって夢を見てるのかな。」
「そんなわけあるかい。これは現実や。」
猫に現実だと言われて、ますます意味がわからない。この猫は何者なんだ。
「タイチ!」
「はい!」
急に自分の名前を呼ばれて反射で返事をしてしまった。
「お前には今からわしに協力してもらう!」
「は?」




