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15-5.屋敷への帰還

午後の更新です






 *・*・*







 行きより人数は少なくなったけど、来た時にも使った馬車で帰る事になり。


 門を過ぎる頃には、何故かジョシュアさんに引き止められて。



「チャロナちゃん達のお陰で、あのアホ子爵捕まえてくれたんだって聞いたぜ? ほんと、あんがとな!」



 他にも数人の衛兵さん達からはお礼を言われたけど、やっぱり実感がわかない。


 エピアちゃんを守りたいと思って、勝手に飛び出して勝手に罵倒して……それだけしか覚えてないのに。



「チーちゃん気にしなくていいわよ? てか、あん時無茶苦茶助かったし」



 悠花(ゆうか)さんは悠花さんでこう言ってくれるが、本当にあの時私何したんだろ?



「ほんと、全然覚えてないんだけど……」


「まあ、そっち気にし過ぎると帰ってからの方が大変だから、忘れちゃいなさい」


「帰って?」


『かりゃ?』


『あ〜〜……旦那っすね、ローザリオンの』


「え、カイル様?」



 エピアちゃん達が先に帰ったから、報告はされてるにしても何が大変なんだろう?


 そう、この時はよくわからずにしてたのが甘かった。



「───────…………おかえり」


「───────……………………た、ただいま、戻り……ました」



 そのまさか、悠花さんとレイ君が言ってたように大変な事が起こったのだ。



(カイルキア様が、わざわざお出迎えされるなんて思わなかったもの!)



 あとなんか、無茶苦茶怒ってるモードで、顔が怖過ぎて背けたいけど出来ない!


 ロティでガードなんて出来ないし、そのロティは馬車から降りる前にレイ君が保護してくれてたけど。



「遅くなったのは……別に構わない。だが、あの糞子爵の前に単身で向かい合ったと聞いたが」


「は……はひ」



 思わず噛んじゃうくらいに、カイルキア様の気迫に押しつぶされそう……。


 でも、心配してくださっているのはよくわかる。


 カイルキア様や悠花さんとは違って、私は冒険者だったにしてもただの女の子。


 戦闘術を何も身につけてないに等しい、普通の女の子だ。


 相手がどんな変態野郎でも、男の人に変わらないから。もし襲われでもして、怪我どころで済まなかったとしたら。



「……………………心配、させるな」



 また説教かと思ったら、違って。


 伸びてきた手が後頭部に回され、抱きしめられはしなかったが、カイルキア様との距離が少しだけ近くなった。


 声も怒りが消えて、何かを堪えるかのような弱々しいものに。



「お前が弱い女ではないのはわかってるつもりだ。だが、相手は男だ。何かあってからでは遅い」


「…………そう、ですね」


「反省してるならいい。…………よく帰って来てくれた」



 温かい手が離れてから顔を上げると、思わず目を疑いたくなった。


 だって、だって。


 ほんの少しだけ表情の変化しか見せて来なかったカイルキア様が、明らかに穏やかな笑顔見せてくれてるもの!


 ドキドキしないわけがない!



「あんら〜〜、カイルってあの様子だと?」


『可能性はなきにしもあらず、でやんすか?』


『でふぅ?』



 後ろで騒ぐ人達は無視無視!


 カイルキア様が私みたいな小娘にだなんて、そんな事絶対にあり得ないから!



「…………ところで、シュラの奴も一緒だとは聞いていたが。……転移の魔法で、先に帰ったのか?」


「あ、はい! えと……ゆ、マックスさんのお店で」



 次に顔を見た時には、もういつもの無表情でも凛々しい状態だった。


 少し残念に感じたが、質問にはきちんと答えたんだけど。


 何故かカイルキア様は、思いっきり、しかめっ面になってしまった。



「報告書以外にも、チャロナへの感謝状の件についての打ち合わせがあるはずなのに……使者への取次はともかく、あとは俺に丸投げか!」



 どうやら、シュライゼン様があそこで別れたのは別の理由もあるらしく。


 私や悠花さんへの感謝状の件は、シュライゼン様が手配したと言っても、実質はカイルキア様のお仕事に加えられてしまったようで。


 今もまだ、カイルキア様はぶつぶつと何かを呟かれていた。



「まあまあ、カイル。例の糞子爵がやっと捕縛されたんだからいいじゃん、それくらい。あ、お帰り、チャロナちゃん」



 その様子がまた怖いな〜って、今度は目を逸らしていると。


 彼の背後から、どうやらずっと居たらしいレクター先生が顔を出してくれた。


 そのほんわかな笑顔に少しほっと出来た。



「ただいま戻りました。ご心配をおかけしてすみませんでした」


「いやいや。ほんとに勲章物だよ、チャロナちゃん。あの男は可愛い子綺麗な子なら選り好みせずに、誰でも欲しがるんだ。まさか、エピアが狙われるとか思ってもみなかったけど」


「エピアちゃん、すっごくすっごく可愛いですよ!」


「うん。僕も帰って来てから知ったんだ。あ、そうそう。そのエピアなんだけど」


「す、すみません! チャロナちゃんが帰って来たって!」



 何かを教えてくれそうなレクター先生の言葉に被さるように。


 エピアちゃんらしい女の子の大声が、先生の後ろから聞こえてきた。



「あ、ちょうど良かった。エピア、今さっき帰って来たよ?」


「は、はい。チャロナちゃん!」


「エピア…………ちゃん?」



 ちょっとハキハキした言葉遣いだなと思っていたら、先生の隣に立ったエピアちゃんにすごい変化が起きていた!



「ま……前髪、切った……の?」



 そう、彼女は思いっきりイメチェンしてたんです。


 かなり長く伸ばしてた前髪を、少しサイドに流せられるくらいのとこまでばっさり。


 顔も隠さず、メイクは落としているが可愛い顔がすっきり見えてる状態になってた。



「う、うん! チャロナちゃんと別れる前に……ちょっと色々あって、決めたの」


「色々?」


「そ、それは、あとで話すから」



 大勢の前では言いにくいこと。


 帰る前、と言えばサイラ君が一緒だったこと。


 そこで何かあったに違いない。


 ガールズトークならどんとこい!


 と思いながら、わかったと返事をした。



「め、メイミーさんやメイドの先輩達に……切ってもらったんだけど、どう?」


「すっごくすっごく可愛いよ!」



 これはもしや、サイラ君へのアピールのためか、何かしらの気持ちの切り替えなのかもしれない。


 思わず抱きつけば、エピアちゃんもぎゅっと抱き返してくれた。



「今度は、二人で遊びに行こうね!」


「う、うん!」


「あ、ずっるいわチーちゃん! マブダチのあたしを抜きにしてー」


「マックスさんはまた別ー」


「んも〜〜!」


「チャロナちゃん……お帰りなさい」


「うん、ただいま!」



 友達の前進に役立てたなんて、嬉しい。


 パーティーの女の子達とも、こんな風になることは最初の頃以来なくなってしまったけど。


 レクター先生の隣で苦笑いされてるカイルキア様に拾われて、このお屋敷で働けれるようになって。


 本当に良かった!


完結風に見えますが、違いますよ!?(இ௰இ`。)

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