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14-2.事件の匂い

午後の更新です!






 *・*・*







 なんとか悠花(ゆうか)さんを復活させた頃には、もうリュシアの街が見えてきていた。



「チャロナくん、せっかくだからロティくんと窓から顔を出してみるといい。すぐに見えるよ」


『「は〜〜い」』



 復活した悠花さんを落ち着かせるのは、もうエイマーさんに任せて。


 こちらはお言葉に甘えて、窓に駆け寄り少しだけ開けさせてもらう。


 ロティを抱っこしてからひょこりと顔を出せば、もう街の門まで近かった。



「すっごい! 城壁みたい!」


『でっふでふぅ! お屋敷以外のおしょと初めてでふぅ!』


「ロティはそうだね?」



 冒険者だった頃は二年以内でもセルディアス王国以外はそこそこ回ったつもりではいたけど。


 ここまで要塞じみた壁を設けた都市は見たことがなかった。


 ロティは、出てきたのがカイルキア様のお屋敷だから、敷地外に出るのは初めてだから全部に驚いても当然。


 もうすぐ門前に着きそうだったから、はしゃぐのはやめて中に戻ったら。



「このままパス(許可証)で中に入ってもいいが……チャロナくん達は通行証がまだない。ひとまず、顔出ししてもらってもいいかな?」


「わかりました」



 完全に新人なのは私とロティ。


 これからもこの街に来る事が多くなるから、顔出しくらいどうってことはない。


 一応、シュライゼン様に言われた通りカツラで髪色も隠してる。ロティは大丈夫だから、私は目の色に合わせて淡い茶色。


 確認のやり取りをしていれば、少しして馬車が止まった。




 トン、トン。





 ノックの相手は多分、門にいる衛兵さんだろう。


 入り口に近いエイマーさんが窓を開けると、それらしい兜の飾りがちらっと見えた。



「お手数おかけします。新規の入門者がいるとの報告を受けましたので」


「ああ、お願いするよ。さ、チャロナくん達は少しこっちに」


「はい」



 エピアちゃんに場所を交代してもらいながら窓辺に座り、衛兵さんが見えやすいように顔を見せたら……何故か衛兵のお兄さんと目が合った瞬間。


 その後ろにいたらしい、もう少し年齢を重ねたおじさん衛兵さんが、彼を押し退けた。



「こりゃ珍しい! 若いのに契約精霊持ちとは聞いてたが、それが緑の髪とはなぁ?」



 おじさんがびっくりしたのは、多分ロティの方だけど。それでも緑の髪って珍しいのだろうか?


 私は今隠してるが、気づかれたらどんな反応されちゃうんだろう。とにかく、人見知りしてないロティを眺めるのはいいが、腕で押さえつけられてるお兄さんが心配!



「…………だ、だいぢょ……お、おも、おもい゛……です」


「おー、すまんすまん。つい、この嬢ちゃん達が珍しくてなぁ?」



 やっとこさ腕を上げてくれた、どうやら衛兵の隊長さんらしきおじさんは、お兄さんから離れるなりまた私達を見始めた。



「マスターもかわいこちゃんだけど、契約精霊もいるから大丈夫だろうな? おじさんは、この街の衛兵隊の隊長さんだ。ジョシュアつーんだよ」


『でっふぅ!』


「よ、よろしくお願いしますっ」



 なんか物騒な言葉が聞こえた気がしたけど、ロティがいるなら大丈夫そう?


 すると、エイマーさんといつの間に席を変わった悠花さん……が、何故か元のマックスさんの状態で出てきた。



「よぉ、ジョシュア。俺もしばらくは、この嬢ちゃんの護衛なんだ」


「お、マックスじゃねーか! またどっか行ってると思ってたが……ん? 護衛?」


「色々あってな? 不定期じゃねーよ、ちゃんとカイルに承認をもらってっからな?」


「ほーぅ。じゃ、嬢ちゃんが危険に巻き込まれる可能性は低いな? 今、ちぃっとばっかし面倒な事になっててよ」


「「面倒??」」



 思わず、悠花さんとハモってしまったが、ジョシュアさんも隣に立って落ち着いてたさっきのお兄さんも大きくため息を吐いた。



「…………あの胸糞悪りぃ、子爵野郎が来てんだよ」


「…………おいおい、カイルに報せたか?」


「それはついさっき、な。だが、その嬢ちゃん」


「あ、チャロナ=マンシェリーと言います」


「おお、そうだった。チャロナちゃんみたいな別嬪さん以外にも、エイマーの嬢ちゃんもいんだろ? 別嬪揃いの今日は、万が一のことも出てくるかもしんねぇ。マックス、頼んだぞ?」


「ぜってぇ、近寄らせやしねーよ!」



 悠花さん、私もだけどエイマーさんが心配だもんね。


 お互い両思いなのは知らずでいるけれど、是非とも護っていただきたい。エイマーさんが護身術出来るかどうか、私は知らないから。



「ふむ。私はともかく、エピアは少しまずかったな。今の内に前髪で少し顔を隠すか」


「…………そ、そう……ですね」



 そう言えばそうだった。


 エピアちゃんは今前髪を上げて美少女状態。


 どうやら、パワハラで変態な子爵様とやらがこの街に着てる上に面食いらしく。


 私は置いとくにして、エイマーさんやエピアちゃんは狙われる可能性が高い。なので、仕方なくエピアちゃんは少し前髪を下げたけど……ダメです。十分可愛い。


 結局、メインを悠花さんにターゲットを絞らせるように、また美女化してもらったら。



「ぶわっはっは! ひっさびさに見るが、その鎧だと意味ねーだろ!」


「しっつれいね!」



 ジョシュアさんはお腹を抱えるくらいツボってしまったようだ。


 それでも、いつまでもここにいてはいけないので、通行証をロティの分も作っていただいてから馬車ごと門をくぐった。


 そして、駐車場のような場所に止まってから、ようやく降りられました。



「うっわ! 市場が近いんですね!」



 わざわざその近くに止めたかもしれないが、すぐそこにもう市場が!


 ロティを抱っこしておこうとしたら、ロティはふるふると首を振って私の影に入ってしまった。



『ご主人様を護りゅためでふ!』



 多分、ロティなりに警戒するためだろう。


 私の顔なんて、ジョシュアさんのはお世辞だろうけど……何かあってからじゃ遅いもんね。


 もう冒険者じゃなくて、ローザリオン公爵家の調理人だから。


 悠花さんもそれを見てたのか、一つ頷くと私の横に立った。



「さ、見るもの全部がはしゃいじゃうのは無理ないけど。あたしからは離れないでね?」


「子供じゃないんだけど……」


「そうは言っても、珍しい食材もあるから目移りしまくるはずよ?」



 そして、その言葉は本当になり。


 はぐれはしなかったが、エイマーさんについて行く場所すべてが珍しくて仕方なかった!



(白トリュフが山!? 夏真っ盛りのこの時期にシャケでもトキシラズがいる! なんでなんで!)



 行く先々で、商人さん達と挨拶をしてから思わず食材をガン見。


 次へ行こうとしようにも、悠花さんが引きずらないと動かないくらいに。


 なので、迷子にはならなかったけど、別の意味で面倒な事をさせてしまった。



「……ごめんなさい」



 ようやく興奮も冷めてきた頃には、エイマーさん行きつけの店に着いてて、そこで皆さんに謝りました。



「何、珍しいのも無理はないさ。この街は特に交易の中心地とも言われてるから、同盟国からの輸入品も多いんだ」


「だーから、言ったでしょ〜? 目移りしまくるって」


「…………う、動かなかった……し、ね」



 結局迷惑かけてしまったのに変わらないので、大反省。


 例の子爵様とやらにも遭遇せず、無事にランチ出来そうだから良かったけど。


 ロティもだが、レイ君も結局影から出て来ずで少しさみしい。特にロティは、はじめての外出なのに。



【……ロティ、ご飯の時だけ出てこない?】



 試しにテレパシーを試してみると、頭にロティの声が届いて来た。



《変にゃヒトの気配がすりゅでふ、ご飯我慢すりゅでふぅ》


【変な?】



 まさか、と思って悠花さんを見ると。


 いつのまにか、どこからか取り出した雷光のデザインがかっこいいバトルアックスを手に、立ち上がってた。



「エイマー、二人をあたしより前に出さないで!」


「了解した!」



 何が起こるかよくわからなかったが。


 悠花さんの大声の後に、いきなり入り口辺りが騒がしくなってきた。



「我が麗しのレディはここにいると知ってるんですよ〜?」



 そして、近づいてきた声は。


 姿が見えなくても変態丸出しの色がまとわりついていた。

では、また明日!


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