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13-3.可愛い子とお風呂

今日はここまで







 *・*・*








 今日も色々お疲れ様で、明日はいよいよお出掛けだ。



「…………仕事も全部終わったし、ご飯の前にお風呂入っちゃおうか?」


『でふぅ』



 とにかく、今日も一日仕事以外色々あり過ぎでした。


 お茶休憩からも、いきなりシュライゼン様が部屋に現れたりして。もちろん、悠花(ゆうか)さんに即殴られたけど。



『はっはっは! 俺も出来る限り協力するぞ? 作ってみたい材料とか必要な道具があれば、遠慮なく言ってほしい』


『あちた、お出かけしゅるでふよ?』


『そーよん。あたしの護衛でリュシアの市場とかにねぇ。この子達をずっと屋敷内に籠らせててもダメでしょ?』


『そうだな。だが、髪色は隠した方がいいんだぞ』



 最後に気になる言葉を言われてしまったが、シュライゼン様からもお出掛けの許可はいただけた。


 なんでも、緑の髪はこの国じゃすっごく珍しくてお貴族様しかいないかもしれないんだって。


 そんなまさか、のことはなくても、勘違いされないようにカツラを被ってくことになりました。



『お〜ふりょ〜お〜ふりょ〜!』



 話し合いの後も、いっぱいいっぱいパンを焼いたので、ロティもさっぱりしたいようだ。


 それは私もなので、少し早歩きで脱衣所に向かえば入っているのはどうやら一人だけみたい。


 棚の籠が、一人分しか使われてなかったので。



「今日は誰がいるんだろう?」



 メイミーさん達以外のメイドさんとは、まだあんまり一緒になった事はない。


 職種の関係上無理ないし、エイマーさんともまだ一緒になった事もない。きっと、エイマーさんは脱いだら凄い人だろうから、入る時緊張してしまうかもしれないが。


 彼女はまだ仕事が残ってるから違うはず。


 なので、ロティと服を脱いでから大浴場の扉を開けた時に、中の人にひと声かけたのだが。



(…………だ、誰だろう)



 向こうが、ちょうど浴槽に浸かったところなので思いっきり目が合ってしまったが。初めて見る女の子だった。


 髪は洗ってタオルでまとめてるが、ちょっと見える後れ毛が紫。


 肌は少し日に焼けてるけど白い方。


 だけど、顔は信じられないくらい深い青の瞳がぱっちりだったり、口がちっちゃかったりと……同じ女でも守ってあげたくなる可愛さ。


 歳は同じくらいに見えるが、メイドさんの見習いさんは見たことがないから新人さんなんだろうか?



「こ、こんばんは。はじめまして?」



 ちょっと疑問形になりながら挨拶すると、女の子はぶわっと言う勢いで顔を真っ赤にしてしまった。



「な……なん、で、チャロナ……ちゃんとロティ、ちゃんが」


「そ、その声!」


『でふぅ、野菜のおねーしゃんでふぅ!』



 ロティも言うように、独特の話し方に私達をちゃん付けする呼び方。


 それを同世代で呼べるのは、今のところ一人しかいない。



「いやーん、エピアちゃんの素顔可愛い!」



 出来たばかりの友人と分かれば、私はロティと一緒にざぶんと浴槽に入って彼女に抱きついた。



「う、うぇ?」


「ラスティさんが言ってた通りだよぉ〜! すっごく可愛いよ! 前髪上げててた方がいいよ!」


『でっふでふぅ!』


「ちょ……ま、待って、チャロナ……ちゃん、苦しっ」


「あ、ごめん」



 思わず抱きついてしまったが、窒息させちゃいけないとすぐに離れた。


 けど、前髪を隠さないからマジマジと見つめてしまうが、やっぱり可愛い過ぎる。


 私が悠花さんと同じように男に転生してたら、絶対惚れてたかもしれないくらいに。



「……なんで、顔隠すのか聞いてもいーい?」



 はしゃいでしまったが、冷静に考えれば顔を隠す理由があるだろうとすぐに行き着く。


 私がゆっくり聞くと、エピアちゃんは少しうつむきながら口を開けてくれた。



「…………小さい頃、妬まれてたから」


「……率直に聞くけど、嫌な女の子とかから?」


「そ、そう……あんたがいなければ、とか。村の女の子達に……よくいじめられてたの。だ、だから…………いつもは隠してる」


『ひどいでふ! エピアおねーしゃんが可愛いのは、おねーしゃん悪くないでふ!』



 私が怒る前に、ロティが言いたい事を言ってくれちゃった。


 だから、私も頷けばエピアちゃんは小さく苦笑いしてくれたが。



「…………けど。大きくなるにつれて、友達も居場所も……なくなっちゃったの。だから……こことか他の農園の手伝いに志願して、村からは離れた」


「そうだったんだ……」



 それで、ラスティさん以外の前では極力素顔を見せないようにしてきたんだとか。


 あと、お風呂も出来るだけ一人で入って、他の女子の先輩達に見られたくないのは、村での癖みたい。


 だから今日私が見ちゃったのは、お屋敷に来てからおそらく初なんだって。



「で、でも……少し、嬉しかった。チャロナちゃん達から、可愛いって言ってくれて」


「何度でも言うよ? すっごく可愛いよ!」


『しゅっごく可愛いでふぅ!』


「あ、あり……がと」



 その照れ顔に、また抱きしめたくなるけど我慢。


 それと同時に気づいたんです。エピアちゃんの胸元、実は私以上にふくよか。形も綺麗だし、女でも触りたくなるくらいだがこれも我慢だ!



「ね、いつもこれくらいなら……私達も一緒でいーい?」


「い、いい……の?」


「うん。こう言う時間しかおしゃべり出来ないし、明日出掛けるにしてもほとんど食材の買い出しだもん」


「そ、そう……だね」



 許可をいただけたので、可愛い女の子とのバスタイムゲットだ。


 実にオヤジ臭い発想だろうが、元パーティーメンバーの女の子達とも……実はあんまりいっしょに入らなかった。


 私は雑用をしてたし、彼女達は日々活躍してたから、気が引けてたと言うのもある。それは、エピアちゃんの事情と少し似てるかもしれないが、あれはもう過去だ。


 今を、楽しみたい。



「そ、その……聞きたい、んだけど」



 ちょっと考え事をしてたら、エピアちゃんが声を掛けてくれた。



「…………サイラ君の事、どう思ってる?」


「へ?」


「あ……あれ、違……った」


「どう言う事?」



 これはもしや、まさかまさかの?


 エピアちゃんはしばらくもじもじしてたけど、ゆっくりと口を開けてくれた。



「…………い、今だから、言えるけど…………わ、私……サイラ君のこと……………………好き、なの」


『「わーぉ」』



 まさかのドンピシャ。



「さ、サイラくん……顔隠してても、私が、すっごく恥ずかしがっても……嫌な顔しなかった。村の子達とは、全然違ったの。……あ、あと」


「あと?」


「わ……笑いかけて、くれたし、その……カッコ…………よかった」


「うんうん」



 まさに、恋してる女の子そのものだ。


 サイラ君は、元冒険者だった私の話を聞いても、嫌な顔ひとつせずに仲良くしてくれてる。


 そこは、元パーティーメンバーの男の子達と同じようで違う。明るくて気さくで、エイマーさんの親戚の子供と言われても、今ならすぐに納得出来る。


 あと、日本の高校生くらいの年頃だから、性格がほんとそのままだもんで容姿は忘れがちになってた。


 思い返せば、彼フツメンどころかそこそこ格好いいし。



『おにーしゃん、いい人でふぅ』



 AIな契約精霊のロティも認めるくらいだから、サイラ君はきっと大丈夫。


 私も、今決めた事が一つ出来た!



「ロティ、エピアちゃんの恋を応援するわよ!」


『でっふぅ!』


「え……え? な、なんで……?」


「友達の恋を応援しない訳にいかないよ!」


「と……とも、だち?」


「あれ、違ってた?」



 たしかに同僚にはなったけど、友達はまだ早かっただろうか?


 訂正しようかな、とエピアちゃんの顔を見ようとしたら……何故かのぼせたかのようにお顔真っ赤っか。



「え、エピアちゃん?」


「…………し、い」


「え?」


「…………うれ、しいの。女の子の友達……このお屋敷に来て、いなかった……から」



 そうか。村でのいじめが原因で、特に同性の友達が出来にくかったから。



「うん。友達っ」


「わ、わ!」



 私も元いたパーティーのメンバーを除けば初めてだったので、嬉しくなってきてエピアちゃんに抱きつく。


 そして、ロティとも友達!って事になり、のぼせないうちに体を洗ってから三人で話し込む。


 脱衣所を出た頃には、もう月もだいぶ傾いた時刻になってしまってた。

明日もありますノ

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