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12-1.自信がない

今日からペポロン(かぼちゃ)パン編







 *・*・*







 翌朝からは、ノルマとなった使用人さん達の朝食とお弁当のパンを作りをメインに。


 時間がある時は、レベル上げも兼ねてのおやつパン作りや借りてる畑の手入れなどなど。


 お昼前には一度落ち着いたので、今はロティと一緒に菜園の端に来ている。


 やる事と言っても、自分のスペースでの水やりくらいだけども。



『お水ぅ〜、お水ぅ〜! シャワわわ〜ぁ!』


「出来るのは、まだだいぶ先だし、昨日から植えたんだよ?」


『気持ちでふぅう!』


「そっか」



 ジャガイモはこの世界でも年中需要がある作物の一つだけど、実るのに時間がかかるのは当たり前。


 ちょっと……ちょっとだけ、時間短縮(クイック)を活用出来ないかなとも思ったが。



「……ねぇ、ロティ」


『うにゅぅ?』


「私の技能(スキル)とかって、他に活用出来たりする?」



 無闇にチート技能(スキル)を人前で使えないし、使えるかもわからない。あと、エピアちゃんやラスティさんの前でチートがバレたら気まずいのもある。


 錬金術の事までは言ってても、私の場合は異能(ギフト)だから。


 だけど、確認は取っておきたかった。



『んぅ〜〜、まだナビのレベルが低いんでぇ〜……ちょーと、むじゅかしいと思いまふ』


「え。じゃあ、上がれば出来ちゃうかも?」


『あい。『幸福の錬金術(ハッピークッキング)』はぁ〜、お料理につにゃがる事ならなんでも出来まふ!』


「えぇー……」



 異能(ギフト)って言うくらいだから、結構なチートとは思ってたけど。


 昨日、悠花(ゆうか)さんと確認した部分だけでも十分と思ってたけども。


 まだまだ、認識が甘かったようだ。



『うにゅ? ご主人様、うれちくないでふ?』


「うーん、嬉しいっちゃ嬉しいけど。なんで私なのかなぁって」



 ジョウロを地面に置いてから、ロティをぎゅっと抱っこしてあげる。



『ご主人様ぁ?』


「あのね、ロティ。私、前世でも大して取り柄のなかった、普通のパン職人だったの」



 思い出せる記憶の断片の中でも。


 これと言って、目立ったモノもなく、パン作りをするだけの繰り返し。


 そりゃ、新商品提案とか、頼られる部分はあっても社会人としてはなんの変わり映えもない生活。


 恋愛方面については、職場じゃ女性ばっかりだったし、生活リズムが普通の会社員とは大違いだから出会いもなく。


 本当に、職種を除けば普通の女でしかなかった。


 それが、異世界転生をしたお陰で、ロティを含めるチート特典がついた訳だけども。



「まだ、記憶が戻って日も浅いしここにも勤めだしたばかりだし。けど、嬉しいよ? もう、あんな中途半端な生活でいるよりは」



 同僚と言える仲間も出来た。


 性別は違うけど、同じ世界出身の友達も出来た。


 何より、パンが苦手だった人を夢中にさせる程の、パンが作れた。


 それを見込んで、その人に雇ってもらえた。



「日本の美味しいパンを、ロティと一緒に作れるんだもん。嬉しくないわけがない。けど、この世界でも平凡以下だった自分が……条件が揃ったからって得た能力についてはまだ自信が少しないの」



 謙遜とか言われるかもしれない。


 だけど、本音は臆病で過信したくないだけだ。


 戦闘向きではなくとも、生活の支えになる食事に重きを置く能力。


 そんな偉大な力を、何故平凡な自分が選ばれたのか、まだ自信が持てないのだ。



『ご主人様だからでふぅううう!』


「ぐぇ!?」



 考えに浸りかけたてたら、ロティが昨日以上に私へのハグを強くした!



『ご主人様は謙遜(けぇんしょん)し過ぎでふ! まっくしゅしゃんのよーにとは言いましぇんが、ロティをロティにしてくださった力は、ご主人様だけしか出来ましぇん!』


「わかっ……た、わか、たから……はな、してくるしい!」


『あにゃ!』



 自分の力の加減が、どうもまだ難しいのは仕方ないにしても。


 主人を窒息死させようとしてはいけない。即座に、落ち着かせるよう言葉を絞り出した。


 そのお陰か、すぐに力は抜いてくれました。



「……ロティ。力任せにハグはやめよう。私の身がもたないから」


『あーい!』



 なんだかんだで、まだまだ赤ちゃんなんだなと認識しておくしかないか。


 けど、成長に関しては私も一緒。



「……………………あ、あ、あの」


『「あ」』



 タイミングを見計らってたか、エピアちゃんが作物の間から少し顔をのぞかせてきた。



「ご……ごめ、なさ。真剣なお話、してたけど……聞こえては、なかったから」


「そ、そうなんだ? あ、水やりは終わったよ?」


『でふぅ!』



 嘘か本当かはわからないけど、いい子だ。


 極度の恥ずかしがり屋さんなのは仕方なくても、エピアちゃんはいい子。


 作物への愛情が深いのと一緒で、コミュ障でも関係ない。


 それに、私と少しでも話がしたいのか、ちょっとずつでも近づいてきてくれるから。



「……あ、あの、チャロナ……ちゃん」


「なーに?」


「えと…………お芋、出来たら。何……作るの…………?」



 コーンパンの時もだが、よっぽど私達の作ったパンが好きになったみたい。


 たしかに、庶民もだが貴族階層のであの出来栄えだったから、ふわふわで少し甘みのあるパンは格別。


 私もだけど、悠花さんが涙が出ちゃうくらいに美味しいパンだ。まあ、前世が本職なので妥協はしない。


 それを補佐してくれる、ロティの活躍あってこそだが。


 とは言え、ジャガイモは単に育てやすいかもとエピアちゃんのおススメで選んだだけ。



「そうだね……昨日のマヨネーズ使うのとかで色々種類あるけど。あと、胡椒とベーコン使ったりとか」


「…………知らないのが、多い。チャロナちゃん、物知りだね?」


「ま、まあ端くれでも冒険者やってたから」



 出会ったばかり抜きに、まだ前世の記憶持ちどころか異世界人と言うのは言えない。


 悠花さんも、このお屋敷じゃごく一部にしか言ってないらしく、なら私もと。


 それ以外の人達には、しばらく言うつもりじゃないので、彼女にも言えないのだ。


 嘘をつくのが、大変心苦しくても!



「……けど。チャロナちゃんのパン、なんでも美味しい。……ありがとう、あんなにも美味しいパン、作ってくれて」


「え?」


「お礼……。ほ、ほんとは……昨日、言いたかった。……本当に、美味しかったから。あなたの作った、パン」


「……喜んでもらえて、嬉しいよ」



 わざわざサイラ君伝に、紹介された理由の一つかもしれない。


 すっごくすっごく恥ずかしがり屋さんでも、自分でお礼は言いたかったみたい。


 これには素直に嬉しく感じ、私は笑顔で返事をした。



『……ご主人様ぁ』


「ん?」


『ジャガイモ出来ちゃら、このおねーしゃんの好きなパンを作っちゃらどーでふか?』


「「え?」」



 ずっと黙ってたロティが、実に素敵な提案をしてくれた。



「そうだわ! ラスティさんはラスティさんであるけど、ジャガイモの提案はエピアちゃんだから賛成!」


「え……え?」


『おいちーパン作りゅでふぅ! ロティのおしゅしゅめはぁ〜、ポテトサラジャのチーズパンでふぅ!』


「チーズ!」



 ロティが試しに提案してくれたパンの内容に、エピアちゃんが作物の影から出て来て、そのまま私達の前までやって来た!



「え、エピアちゃん?」


『でふ?』


「チーズのパンって、美味しいの?」



 興奮してるのか、間を空けた言葉遣いじゃない。


 そして、ジリジリとこちらに詰め寄ってくる気迫が、前髪で顔がほとんど見えてなくても少し怖い!



「お、美味しい……けど」


「焼くの? 中に入れるのどっち?」


『ろ……ロティが言っちゃのは、上にのしぇて焼くのでふ』


「焼く……少し焦げる、カリカリ……それがいい!」


『「うひゃー!」』



 あと一歩で、おでこ当たっちゃう!


 結局、ロティが提案したポテトサラダを中身にして、外側をチーズで覆うパンに決定。


 すぐ試せなくもないけど、エピアちゃん曰く、私のジャガイモが出来てからでいいって。


 ひとまずは、お手入れが終わってから私とロティはペポロンのパンを作りに厨房へ戻った。


夕方以降、もう一回更新出来るよう頑張ります!

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