99-5.レイバルスの恋(マックス《悠花》視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(マックス《悠花》視点)
なんとか、カレリアに錬金術を習うのはうまくいった。
と言うか、うまく行きすぎよ!
転生者特典にしたって、チーちゃんに色々つけ過ぎじゃないの? あの最高神……。
今日のとは違う、チーちゃんだけが使える料理の錬金術もだし、魔法もだし、普通の錬金術もだし。
あたしは魔力関連しかないとは言え、同じ転生者なのになんでこんなにも差が激しいわけ?
いや別にあたしは全然いいんだけども。
(王女の真実を知らない子に、神は何をしたいのかしら?)
ちょっと疲れたのか、ロティちゃんを抱えたまま向いの席で眠ってるチーちゃんは、亡き王妃様の美貌をそのままに受け継いでいるから、とっても綺麗で可愛い。
カイルが見たら、何かしら反応するわね絶対。
それはさて置き、あたしの隣でロティちゃんの寝顔をデレデレしながら眺めてるレイにゲンコツをくらわせた!
『……いっ、たいでやんす!』
「大声出さないの、この変態」
『へ、変態って……』
「時と場合によっちゃ、想ってる相手を見てても変態は変態よ」
『マスターだって、姐さんとしょっちゅう触れ合っているじゃないでやんすか〜』
「あたしとエイマーは結ばれてるんだからいーの!」
『くー……俺っちもロティと』
「と言うか、いつから惚れてたのよ?」
『!…………最初からでやんす』
「最初って」
あたしがあんたを影から出させて紹介した時?
あの頃のロティちゃんは、まだ初期レベルだからもっと赤ちゃんだったけど、その時から?
ロティちゃんの外見年齢はともかく、中身がレイと同じかどうかはわからないけれど。
その時から惚れてたって、こいつ……ロリコンだったのかしら?
『はじめは、外見だけが可愛らしい精霊みたいだなと思ってただけでやんす。けど、ちょっとでも触れ合って俺っちの背中で寝るとか。その顔が可愛らしいとか、そう言うのが続いていたら……いつのまにか惚れてたでやんす』
「ふーん。その惚れ方は人間と同じね?」
『へー。最初は気のせいだと思ってたでやんすが、ちょこっとでもロティと一緒にいるだけで……こう』
「惚れた気持ちが自覚したってわけね? わかるわ〜」
『へー。で、王女様には許可をいただいて、今は手伝っているんでやんすが』
「……あんまりアピール出来てないってわけね?」
『そうでやんすよぉおお!』
「声大きい!」
寝てるんだから静かにしなさいとまたゲンコツをお見舞いしたら、強かったせいか奴は悶え出した。
『い゛……痛いでやんす』
「今疲れてる二人を起こしちゃいけないでしょーが!」
『そうでやんすけどぉ……』
「ま。あんたがそんなけ本気なのはわかったけど……」
先は長いわね、と言うのを口にするのをやめた。
ロティちゃんは普通の契約精霊じゃないし、似せてるAI精霊だもの。
このままの姿でいるわけでもないし、むしろ成長し過ぎてレイ以上の美貌を持つ精霊の姿になるかもしれない。
レイの姿も、成長出来なくはないらしいけど……似合いの二人になるのかしら? とは思うけど。
精霊同士の婚姻云々には疎いから、幸せになれるのかどうかわかんないのよね〜……。
まあ、レイがその常識とやらを打ち破るかもしんないけど。
『俺っちは本気でやんすよ! ロティがどんなロティでも愛せる覚悟は出来てるでやんす!』
「ならいいけど。この子結構泣き虫なんだから、泣かせ過ぎちゃダメよ?」
『でやんす!』
「……なんの話ぃ?」
とここで、チーちゃんが起きて目を擦っていたが、ロティちゃんはまだ夢の中だった。
「おはよー。こいつがどれだけロティちゃんのこと好きなのか確認してたのよん」
「レイ君の?」
『へー』
「どうやら、結構初期段階から惚れ込んでたみたいよ〜?」
「そうなんだー」
チーちゃんは、特に反対はしてないのよね。
と言うか、自分の事じゃなきゃ結構協力的になるのよね〜。
前世か、今かはわかんないけど、自分の恋については人一倍臆病だし……。って、あたしもついこの前まではそうだったけど。
ほんと、幸せになってほしいわ。
カイルもチーちゃんも。
『……あのー。ロティ抱っこしてもいいでやんすか?』
「ちょっと」
「起こさないようにねー」
「……チーちゃん」
本当に協力的なのね、この子。
自分の精霊をレイにそっと預けて、レイが受け取ると気持ち悪いくらい蕩けた笑顔になったのだった。
『はぁ〜〜ロティ』
『にゃむにゃむ』
「他人事だけど、こいつに預けていーの?」
「ちゃんと誠意見せてもらったから安心出来るんだよ」
「誠意?」
「土下座して、結婚の申し込みするみたいに言ってきてくれたから」
「ほー?」
そこまでとは、ねえ?
精霊同士の恋愛って、本当に知らないんだけど。『雷公』と謳われるこいつが誠心誠意を込めて、相手方の主人に申し込みをするってことは。
よっぽどなのねぇ、と思うしかなかった。
実際はメロメロし過ぎて気持ち悪いくらいだけども。
「ロティはわかんないけど、気に入ってはいるし。いつかは……くらいにしか私は思ってないけど」
「チーちゃんはそれくらいでいいわよ。精霊同士の恋の関係は、あたし達人間とは違うもの。同じと思ってても仕方ないわ」
「そういうもの?」
「憶測でしかないけどね……あんな締まりのない表情見てると、そう思うのもバカバカしくなるけど」
ロティちゃんの髪を撫でながらデレデレしてるのは、本当にあたしの相棒なのか否定したくなるが。
まあそこは、うだうだ言ってたらレイのためにもならない。今は見守りましょうかとチーちゃんにも言った。
「誰かを好きにか……私も、大丈夫かなあ」
ああ、最大の関門がここにもあったことを忘れてたわ。
あたしや他の連中が言っても、チーちゃんの心の壁は分厚いままだけど。
どうにかならないかしら……と相談に乗ろうとしたら、チーちゃんはまた眠ってしまい。
屋敷に着いた時に下ろしてあげると、馬車から出たらすぐにカイルの奴が出迎えにきていた。
「……疲れて寝てるだけだ」
「……わかった」
とりあえずバトンタッチしてから、あたしはレイとロティちゃんの方は置いてきてカイルの横で歩くことにした。
「どーゆー風の吹き回しだ?」
「…………レクターに押されてな」
「で?」
「定例会の翌日に、遠乗りに行けとも」
「ほー?」
痺れを切らした、あの真っ黒魔人がとうとう言ったわけね?
尾行しに行きたいけど、こういうのは二人っきりがいいから我慢するしかないか。
「……起きてから、きちんと告げる」
「絶対言え」
起きないチーちゃんが部屋で寝かされても起きないので、仕方なく言うのはカイルに任せたけど。
明日はリュシアに行くんだし、いつ言うのかしら?
前日は無しよ! と思いたいわ。
次回は金曜日〜