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99-4.カラメルタブレット

お待たせ致しましたー






 *・*・*








「ん〜〜、美味しい!」


「相変わらず美味いな、このプリンっつーのは」


「ありがとうございます」



 錬金術の講座もひととおり終わりとなったので、手土産のプリンアラモードを収納棚から取り出して、フィーガスさんの執務室でお茶会となったのだった。



「果物もたくさんだし、クリームも美味しいし。この冷たいアイスクリームも美味しい〜!」


「いいわよね〜〜。プリンもある上に、冷たいアイスがあるって言うのが!」


「これ、作るのが難しいのか?」


「そうですね、アイスクリームは少し時間がかかりますが。プリンは茶色い部分のカラメルが少し難しいんです」



 砂糖を溶かして、焦がす工程と熱湯を注ぐタイミング。


 これがうまくいかないと、さらさらになってただのカラメルのソースだけになってしまう。


 それを話すと、フィーガスさんはカレリアさんのおでこをつんと突いた。



「こりゃ難関だぜ? お前さんがいくら好きでも、錬金術並みに訓練しねーとな?」


「う、はーい」


「あ、でもカラメルタブレットというものが作れれば、簡単ですよ?」


「「タブレット?」」


「チーちゃん、カラメルを錠剤のようにするの?」


「うん。これが出来れば、毎回カラメルを作らなくてもプリンが出来るの」


「チャロナちゃん、教えて!」


「わかりました」



 と言うことで、厨房に移動してコックさん達に場所をお借りしてタブレット作りに取り掛かることになった。



「砂糖は真っ白い砂糖でも、上白糖はベタつきやすいので。粒の大きいグラニュー糖を使ってください」



 上白糖で出来なくもないけど、グラニュー糖の方がうまくいくので今回はそれで行く。


 まずは、水大さじ2とグラニュー糖を入れた鍋を強めの中火にかけて。



「泡立って透明になってきたら、冷やす用の大きなボウルに水を張っておきますね」



 色付く前に手早く済ませて、色づいてきたら差しお湯じゃなく、差し水用の水を大さじ1用意しておく。



「色づいたら、すぐに変わりやすいので目を離さずに」


「うっわ、すぐ変わるな?」


「泡が少なくなってきたら水を入れます!」



 混ぜて、いい色になったら火を止めて。はねるけれど、気をつければ大丈夫。


 用意しておいた水を貼ったボウルに鍋底をつけて、少し温度が下がればおk。


 火を止めてからも色は付くので、それを防止するための作業だ。



「これを、クッキングシート……蝋で加工した紙の上に、スプーン一杯ずつ垂らして」



 けど、どんどんカラメルが冷めてしまうのが難点なので、そこは少しだけ火にかければ大丈夫。ただし、元の温度にしたら焦げるので注意だ。



「これで完成です」



 見た目は少し大きな錠剤に見えなくもないけど、味はプリンに使うカラメルと同じだ。


 試食は甘い飴のようなものだからできないけど、せっかくなのでプリン作りもすることにした。


 ただし、器はココットで。


 私のプリン型はそうそう渡せないから。



「うえーん。難しいよぉ……」


「またプリンが食えるんだから文句言うなよ?」


「そうだね……」


「ちなみにタブレットの方はくっつきの防止のために、グラニュー糖を少しまとわせて瓶などに保管してください」


「うん、わかったよ〜」


「これでいつでもプリンが作れるな?」


「ね。ポーション作りでの魔力を注ぎ込む工程と少し似てたし?」


「似てたかしら?」


「あーでこーするのがね〜?」


「わっかんないわ!」



 たしかに、カレリアさんの教え方は少し独特だったけど。


 でも、錬金術までも出来ちゃうだなんて、私はいったい何を目指せばいいのやら。


 転生の特典とは言え、悠花(ゆうか)さんの言う通り、生産に関してはチート過ぎる能力を持ってしまった。


 記憶が戻る前は、あんなにもなにも出来ないでいたのに、ロティが出てくるまでそれは一生付き纏うものだと思っていたが。


 今ロティは逆隣で、カレリアさんお手製のプリンをレイ君と美味しそうに食べていた。


 そう言えば、レイ君……あれだけ私に真剣に話してくれてもロティに直接アピールする機会がない。


 なにか訳でもあるのだろうか?



『……どうしたでやんすか?』


「あ、ううん。また今度話すね?」


『へー』



 けど、今もロティの側で美味しそうにプリンを食べれるだけでも幸せかもしれない。


 恋愛に焦りは禁物だし、私も……とは思いたいけど。


 あの衝突キスがあってから、表面上取り繕わないとカイルキア様の顔を見れなくなってしまった。



(だってだって、あんな形でとは言えファーストキスだったんだもの!)



 今思い出しても、悶えてしまう心情を止められない。


 嫌がられていないとは思うけど……私が先に事故だからって言ったので気まずくはなったけども。


 その後は、オムライスを催促されただけだし……実質的にいつもどおりだけど話せていない!



「チーちゃん、赤くなったり青くなったりどうしたのよ?」


「どうかしたのー?」


「疲れたのか?」


「あ、ち、違います」



 まさか、カイルキア様との……を伝えるわけにいかないし。悠花さんは知ってても今は忘れているのか突っ込んで来ない……と思ってたら、思いっきりにま〜っと笑い出した。



「一個だけあったわね? チーちゃんのドジっ子のせいでカイルとキスしたのよ!」


「ゆ、悠花さああん!」


「マジで?」


「大進歩だよー!」


「けど、ぶつかった勢いだからちゃんとしたのじゃないらしいのよね〜?」


「「もったいない!」」


「ううううう……」


『純情でやんすね〜』


『でっふ!』



 そして、散々からかわれてからしばらく経って。


 帰る直前に、カレリアさんが私に耳打ちをしてきたのだが。



「自信を持って、チャロナちゃん。カイルさん嫌がってなかったら、少なくともあなたを好いているかもしれないわー」


「え」



 とんでもない爆弾を落とされたので、帰りの馬車の中ではボーッとしてしまったが。


 悠花さんにも聞いてみると、当然だと言われた。



「雇った使用人とは言え、あいつが興味もない女の子と散歩以前に会話しない奴よ?」


「そ、そうなの?」


「あいつの二つ名にある『氷の守護者』みたく、うざい女にはとことん冷たいわよ?」


「……ちょっと信じられない」


「調理人以前に大事にされてんだから、もっと自信持った方がいいわよ?」


「自信?」


「あいつがなんとも思ってない女の子に、頭撫でたりしないわよ。むしろ触れることすらなかったわ」


「……じゃあ」



 ちょっとは、期待してもいいのかな?


 カイルキア様も、もしかしたら……って思ってもいいのかな?


 少しだけ、不安が消えて胸がぽかぽかしてきたので。


 私は少し明るい気分になれて、お屋敷に帰れそうだったが、途中で疲れてロティと眠りについてしまった。


次回は火曜日〜

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