99-1.錬金術を学ぶ①
お待たせ致しましたー
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翌日。
本日は、カレリアさんに錬金術を習いに行くことになってるから、手土産のプリンを作ってから収納棚に入れ。
悠花さんとレイ君も一緒に馬車に乗ってから、アルフガーノ伯爵邸に向かうことになりました。
「奴の家も久々ね〜」
『マスターは、こっち以上に入り浸ってたでやんすからねー』
「昔は?」
「そっ。パーティーになる前からつるんでた仲だし、まあフィーの親父さんにも気に入られてたわ」
「へー?」
『でっふ!』
途中途中、貴族様御用達、移動用の転移魔法陣を使っての移動とは言え。
貴族様のお屋敷の多い王都に向かうので、ずっと座りっぱなしではあるけれど。
次回は私の転移でお屋敷にいけられるように、今回は我慢だ。
直接フィーガスさんのいる場所をイメージしていくのも提案にはあったが、初回なので礼儀に従うことになったわけで。
「けど、カレリアさんは商人の家の人だったんだよね? 接点って親御さんのお仕事について行ったら……とか?」
「そんなとこね。実質はお互いの一目惚れからだったらしいけど。フィーの親父さんとかお袋さんからは認められても」
「親戚さんとかが、強固派だったっけ?」
「そうそう。ま、フィーはああ言う奴だから無視してるけど」
「そっか」
いくら身分差がゆるい国とは言え、反対派が全くいないわけでもない。
その集団が強固派とは言え、私もある意味無関係ではないのだ。
いろんな人に応援はされてても、孤児が雇い主である御曹司様に恋心を抱いているのだから。
いつか、振られるかもしれないけれど、カイルキア様に想いを抱いてる私も……結ばれる可能性が低いから、避けてしまってはいるが。
昨日は、何故気絶してしまったかはわからないが、カイルキア様の腕の中はあったかかった。
風邪で意識が混濁してた以来だけど、もうあんなことにはならないはず。
だから、フィーガスさんやカレリアさんを少し羨ましく思っても、自分はないなと考えるしか出来なかった。
それだけ……私は臆病だから。
「とりあえず、あんたもあんたで自分の事も優先しなさいよ?」
「へ?」
「あの二人はある意味ゴールインしてんだから、次はチーちゃん。あんたの番なんだから」
「わ、わわわ、私じゃ振られるよ!」
「んもぉおお! このネガティヴ思考!」
「だってー!」
『自信持つ方がいいでやんすよー』
『でっふ! ご主人様頑張るでふ!』
「なんでぇえええ!」
なんで周囲は諦めてくれないのだろうか!
まさか、と思っても、それがリアルで起きるわけがないとすぐに思い込むだけの私だから。
それには全力で拒否させていただきます!
そう言うと、三人とも納得のいかない顔でふてくされてしまったが。
「マックス様〜、着きましたよ」
「あら、ご苦労さん」
そして、会話が少しの間沈黙状態になってから。
御者のジョージさんがこちらに声をかけてから馬車は止まり。
準備が出来てから、降りるととても大きな門が目の前にあった。
「これでも、貴族連中の屋敷の中じゃ小さいのよね〜?」
「うっそぉ」
「カイルのとこも、本邸じゃないからあれでも結構ちんまいのよ」
「えぇ……」
これだけ立派な門があるのに、これでも小さい?
けど、忘れてた。マックスさんはこの世界では伯爵家嫡男。
今はこんな気兼ねなく話せてても、それは転生者と言う共通認識と悠花さんからのお願いがあったから。
タメ語で話していい許可をもらえなかったら、こんな風にはなれなかったけど。そこはいいよねと思うしかない。
「よー、来たじゃねえか?」
「いらっしゃ〜い」
玄関まで行くと、少し久しぶりに会うフィーガスさんとカレリアさんが出迎えてくれました。
「お久しぶりです」
「少し振りだがな。訓練の方はどうだ?」
「だいぶ、体に馴染んできたとは思います」
『でっふ!』
「そーか。ま、今日は俺んじゃなくてカーミィの方だがよ?」
「よろしくね〜!」
「ひゃ!」
『わひゃ〜!』
フィーガスさんが指をさしてから、カレリアさんが私とロティを一緒にぎゅーっと抱きついてきて、私の顔にはマシュマロばりのふくよかなお胸を当ててきました。
自分にはないが、おっぱいすごい!
「今日はお姉ちゃん頑張っちゃうぞ〜!」
「おーい。じゃれてるのはいいが。時間も限られてっし、中入れよ」
「はーい」
とりあえず、玄関から中に入らせていただき、場所をカレリアさんがポーションの調合などに使ってる作業場に移動しました。
「すっごい! 錬金術の道具がいっぱい!」
『でっふ、でっふぅう!』
「ほとんど師匠からのお下がりだけどね〜? で、今日はなにを教えればいいのー?」
「え……えっと、出来れば初級のポーションとか、を」
「わかった、いいよ〜」
「いいんですか」
見た目はほんわか、可愛いお姉さんではあるけれど。
悠花さんやカイルキア様から聞いた話によると、王宮の宮廷錬金術師さんが唯一認めたお弟子さんなんだって。
だから、ポーション作りとかがすごく上手で。
悠花さん達と旅に出てた時も回復要員としてレクター先生と活躍してたらしい。
だからこそ、私も元の職業を使えるのか試したくてお伺いしたのだ。
「いいよ〜。この前のプリンのお礼もしたいし。私で教えれることなら」
「あ、今日もプリン作ってきました」
「ほんと? じゃあ、終わったらお茶にしようね〜」
「例の収納棚ってのに入れてんのか?」
「はい。たくさん作ってきました」
そして、ポーションの作り方なんだけど。
材料になる薬草を刻んで、鍋に水や薬品を入れて煮立たせて。
あとは、仕上げに魔力を込める……までは以前、訓練所の時に教わったが。
今回も基本的には同じ。
ただ、
「え、そんな適当でいいんですか?」
「ん〜? 混ざれば同じだもの。師匠もこんな感じだったよ〜?」
「え〜……」
いいのか、それで。
まあ、あの破滅的に酷いと言われてた料理の腕前もあるから、そこも適当になってしまうのか。
とりあえず、言われた通りに鍋に材料を入れて、生活魔法の要領で魔力を送り込んでみた。
「あ」
「お」
「え」
一瞬光ったが、材料がきれいに液体に溶け込んで、青色の液体になった。
「なった……出来た。出来た! 生まれて初めてポーションが出来た!」
『でっふ、でっふ、でっふうううううう!』
これが喜ばずにいられない。
訓練所以降は、いくら材料と魔力があっても消失するって結果だけだったのに。
ちゃんと出来たんだから、嬉しくないわけがない!
「う〜ん。全然問題ないんだけど、なにが悪かったのかなあ?」
「あたしはジャンル違いだからさっぱりよ」
「あ〜〜、可能性としちゃ」
『ロティでやんすね?』
「え」
『ロティでふか?』
たしかに、契約精霊の有る無しはあったけれど、なにがあるのだろうか?
次回は日曜日〜