87-1.ちゃんちゃん焼き①
誕生日企画二日目
途中、休憩を挟んだ後に。
シュライゼン様から直々に魔法の訓練を見てくださる事になり。
転移を中心に、攻撃や防御を見てもらったが、その教え方はやっぱり先生が同じだからかよく似てて。
フィーガスさん、少しの間来られてはいないがお仕事がお忙しいかもしれない。
そう言えば、今はカイルキア様のようにお家の爵位を継がれている方だから、お仕事がたくさんあるだろう。
悠花さんやカイルキア様からの提案だったとは言え、今更少し申し訳なく思ってしまうが。
今度いらっしゃる時か、カレリアさんに錬金術を習いに行く時にカレーパンとかプリンでも差し入れようかな?
とりあえず、いい汗をかいてから、冷たいハーブティーで小休止となりました。
「わざわざありがとうございます」
「なんの! お兄ちゃんは役に立てて嬉しいんだぞ!」
あれだけ動いたのに、シュライゼン様は元気いっぱいだ。
パン作りもあったのに、やっぱり普段から鍛えて?いらっしゃるからかもしれない。
「ほっほ。シュライゼン様はフィーガスの直弟子ですからな。剣技と同様に魔法は鍛えていらっしゃるからでしょう」
「そうなんですか?」
「ええ。孫のあれは、宮廷魔法師を唸らせる出来でしたもので」
そのお孫さんから教えていただける機会を作ってくださった、カイルキア様も凄い。
「あいつ、冒険者時代は俺以上に派手に討伐対象のモンスターらに魔法ぶっ放してたぜ?」
「……すっごく、想像しやすい」
「俺が雷撃、カイルが氷、んでフィーが炎って感じだな」
「カイル様は氷属性なの?」
「そーいや言ってなかったな? あいつの二つ名『氷の守護者』だぜ?」
「んー……聞いたようなそうで無いような?」
私の冒険者時代、悠花さんの二つ名はマシュランから幾度か聞いたけれど。
それ以外は、メンバーと込み入った話はそんなにしてなかったから聞いていなかったかも。
とりあえず、懐かしい話はここまでにして。
ざっとひと風呂浴びてから、普通の夕飯の準備に加えてちゃんちゃん焼きの準備に取り掛かることになった。
シュライゼン様達はせっかくなので、作り方も見たいと下ごしらえを手伝っていただくことに。
「にんじん、玉ねぎ。ウルクル様の加護がたっぷりのジャガイモ。キャベツも使いましょう」
定番だと、シメジなどのキノコ類も入れたりするが。食べるメンバーに悠花さんとエイマーさんがいるから、今回は省きます。
美味しいけど、苦手なものをわざわざ入れるのはよそうと思ったので。
「これに、私とエイマーが切り身にしたシャケを?」
「はい。たっぷり使いましょう!」
けど、先に野菜の下ごしらえをしなくちゃだから。
全員で皮むき、カットとやっていきます。
ジャガイモは私の前世、実家にいた時のオリジナルなんだけど。これがすっごく美味しいのだ。
(焦げ目がついたところに、味噌バターの甘じょっぱい味。ホクホクの食感!)
悠花さんは知らなかったらしいけど、是非とも沼に引きずり込もう。
絶対美味しいから!
その悠花さんは、今カイルキア様の執務室に行ってます。
「チャロナ〜、皮むき終わったんだぞ!」
「では、玉ねぎは少し厚めのスライス。キャベツはざく切り。にんじんは輪切りの薄切りに。ジャガイモは少し厚めに切ったのを軽く湯がいて、一度焼きます」
「焼く?」
「あんまり湯がくとぼろぼろになっちゃうので、一度焼くと煮崩れもしにくいんです」
「へー」
この作業は、シェトラスさんとエイマーさんにお願いして。
私はその間に、銀製器具からあるものがないか探してみる。
「……うーん。鉄板はあるけど、ホットプレートはないね?」
『にゅ。ナビ変換のレベル……じゃないでふね。たびゅん、ご主人様のレベルアップだと思うでふ』
「どれくらいかわかる?」
『にゅ〜〜……ダメでふ、わかんにゃいでふ』
「そっか〜」
となると、無難にフライパンで作って一人前ずつにするか。
と思ってたら、意外なアイテムを見つけてしまった!
「前はなかったのに、カセットコンロみたいなのがある!」
『でふ、伸縮可能にゃのでふ!』
「え、って事は……こっちのテフロン加工の鉄板のサイズに合わせれば」
『コテもありゅので、ご主人様のちゃんちゃん焼き作れるでふぅう!』
「よし、やろう!」
そうして、まず使用人の皆さんの夕飯を提供。
皆さんには、シャケのチーズはさみのロール揚げを作りました。
サイラ君達にも好評で、翌日のお弁当のおかずにもとリピートをもらった。
で、少し遅くなってから、いよいよ私達の夕飯であるちゃんちゃん焼きのお披露目となりました!
「……なんだ? その魔導具のようなものは?」
「それも、例のアイテム?」
カイルキア様と、お城から戻ってきてたレクター先生が、卓上に乗せたカセットコンロと鉄板の組み合わせを見て少し不思議そうにされました。
「お? ロティちゃんの変身にゃなかったのに、カセットコンロあったのか?」
「「カセットコンロ??」」
「簡単に言や、薪がなくても使えるコンロだ。俺やチーちゃんのいた世界じゃ、ガスっつー燃料が必要だけど。こいつはどう使うんだ?」
「ガスの代わりに、魔石が入ってたの」
「へー」
フタを開ければ、ガスボンベのように細長い火の魔石がセットされていた。
魔石もこの世界だと燃料の代わりだから使い捨てに近いが、器具の説明欄には使用者の魔力を送れば使い回しが出来るそうだ。
つまりは、ボンベの後処理をする必要がないわけで。
それを皆さんに説明すると、やっぱり画期的なものだから驚かしてしまった。
「じゃ、じゃあ。作りますね?」
ロティには、今炊飯器になってもらってるから自分でやるしかない。
まずは、熱した鉄板に油を適量なじませて、大きなシャケの切り身を皮から焼くことにした。
では、また明日ノ