9-1.コーンパン作り①
次で今日は終わりますノ
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エピアちゃんがスペースを決めて、植える食材も決まったら種を分けてくれたので早速土の中へ。
肥料、水やりについては、気づいたらお互いがするようになったから、ケースバイケースで育てることにもなった。
「……だけど、説明の時だけしっかり話すのはびっくりしたなぁ」
『でふー、あのおねーしゃん別人でちた』
ロティも驚くぐらい、説明してくれた時のエピアちゃんはまるっきりの別人。
『ここはこう。土はあまり強く押さないで? 水もかけ過ぎない……この作物には少なめがいい』
恥ずかしがり屋さんはどこへ行ったのか、物陰から出て来てテキパキしてたし、口も饒舌になって、少しかっこよかった。
終わったら、力が抜けたように元に戻っちゃったけど、『いつでも来て』とは言ってくれたし、少しずつ仲良くなれそう。
ちなみに、植えさせてもらった作物はじゃがいもです。
「あいつ、作物の事になると自分以上に熱心になっからさ? だから、性格だけが問題だけど他は俺抜かれそう」
「うん、まさに『仕事の出来る人』だったしね」
「俺が出来ねーってこと⁉︎」
「そうは言ってないよー?」
チャロナの実年齢差は一個違いでも、千里の記憶も戻ったせいか同じ年頃の子と接しても、逆に少し年下に思えちゃう。
千里の記憶が20代半ばだったから足すと……考えたくないから、止そう。
年増な思考回路になるのは早過ぎるくらい、まだピッチピチ?だもの!
「んで、モロコシのパンってどー作るんだ? 混ぜるって言ってたけど、べちゃべちゃになんね?」
「ふっふっふ、コツがあるんだよ。おやつ、楽しみにしてて」
「うっし! じゃ、俺んとこの上司にも声かけていーか?」
「いいよー」
『でっふぅ!』
ちらっと挨拶はしたけど、豪快な性格でもいい人だったのは覚えてる。
それなら、甘いものもいいけれど塩っぱいものもいいかも。
ならば、時間短縮のレベル上げに必要なコロン稼ぎもすべく、思いつく限り作ろう!
着替えて厨房に行ってから、早速シェトラスさんに聞いてみた。
「ほぅ、トウモロコシを混ぜ込んだりするパンなんだね?」
「あと、マヨネーズも使って少し塩っぱいパンも作ろうかと」
「うんうん。今の時期トウモロコシは冷製のポタージュ以外サラダくらいだから、消費が多い事は大いに結構。私も手伝うよ」
「ありがとうございます!」
まずは材料集めと、シェトラスさんにマヨネーズの在庫を確認してもらった。
エイマーさんは少し別のお仕事があるみたいだから、今回はシェトラスさんメイン。
マヨネーズは少ししかなかったので、シェトラスさんに作ってもらってる間に生地作り。
「先に、冷めても美味しいのがいいからコーンマヨパンだね!」
『でっふぅ。変換、撹拌!』
まずは、強力粉、砂糖にドライイーストを入れてざっくり混ぜる。
そこに、牛乳を少しずつ入れて馴染ませます。
「塩分は後から……室温に戻したバターと塩少しも投入して」
あとは滑らかになるまでミキシング。
出来上がったら、発酵器で倍の大きさに膨らむまで発酵。
「ここで……時間短縮、発動!」
詠唱?を唱えると、ロティの発酵器の上にタイマーと似た赤いバナーが表示される。
この中に、▶︎▶︎▶︎と言うマークが浮かび上がったら軽く押すだけ。
この速度は、レベル1だと倍速しか使えない。
倍速でも、10分を速く進めさせると言う優れものなので、今回は一時間なのを30分だけで発酵出来るのだ。
だから、必要な回数押せばあとはタイマーと同じ仕組み。
この間に、サイラ君と運んだトウモロコシをさっと茹でてシェトラスさんと専用の道具で粒をもいでく。
「混ぜる用にもたっぷり使いましょう!」
「混ぜる方はどうするのかな?」
「今回は、白パンに混ぜ込むだけの簡単なのにしようかと。先に混ぜるんじゃなくて、一度発酵させた状態で混ぜると生地に負担がかからないし、ベタつかないんです」
「なるほど」
ロティの方ではまだ時間がかかるので、こちらはシェトラスさん達に教えるのも兼ねて、手ごねでいきます!
「粉類と牛乳をボウルに入れて、手でよく混ぜます」
「バターはあとなのかな?」
「はい。今回はバターを後から入れるので」
だいたい混ざったら、少しずつ柔らかくさせたバターを入れて、またこねこね。
これは、まとまったらボウルにガーゼ布をかけて一次発酵。こっちには時間短縮はかけません。
「これが二倍に膨らんだら、分割させて少しベンチタイムを置いたら成形出来ます」
「おや、そこで混ぜるんじゃないんだね?」
「作り方は多種多様ですが、出来るだけ生地に負担が無いように仕込むと、ふっわふわもちもちになりまっすよー」
「うん、勉強になるね」
それが終われば、洗い物をしながら他に夕方のメニューに必要な下ごしらえもしてると、時間短縮の効果でもうロティの発酵が終わった。
「ガス抜き、分割……30個くらいかな?」
「今日も是非旦那様に召し上がっていただこう。けど、サイラ達を呼ぶのなら私が持っていくね」
「お願いします」
カイルキア様の食べた後の反応が見れないのが少し残念だけど、きっと気に入ってくださるはず。
そこのところは、シェトラスさんがしっかり見てくると言ってくださったので作業に戻ります。
「これは混ぜ込むのではなく、トウモロコシとマヨネーズを混ぜたのを乗せて焼くタイプにします」
『マヨコーン〜マヨコーン〜♪』
「マヨはわかるけれど……コーン?」
「呼び名が違うだけで、トウモロコシの事です。甘いからスイートコーンとか」
「可愛いね、しかも甘いとなれば旦那様がお喜びになられるよ」
「頑張ります!」
甘いものは正義!って、前世で聞いた覚えはあるが、甘くて美味しいものは気分を良くしてくれるもの。
「今回の成形はそこまで難しくありません。軽く丸めて、麺棒で少し厚めに丸く伸ばします」
イメージは小さめのピザ。
ピザで思い出したけど、パン屋でのピザなら作ってたから今度はピザパーティー感覚で野菜をふんだんに使おうと思いつく。
それは置いといて、成形の続き。
普通ならここで使わない、コカトリスの卵液がたっぷり入ったボウルを用意。
「焼く前に塗るんじゃなくて、今回はここに生地をくぐらせてからマヨコーンをのせます」
出来た生地からくぐらせて、レベルアップ後に確認した新しいアイテム『ミスリル粉付着のシリコンシート』に乗せる。
見た目、本当に製菓や製パンに使う白いシリコンシートそっくりだけど、ロティが言うには劣化しない特別製らしい。
焼いても焼いても、さっと洗えばすぐ乾いて繰り返し使える優れもの。一枚につき、5個くらい乗せたら天板に乗せてロティが変身したオーブンに。
実は、オーブンもまたレベルアップしたんです。
「いくら入れても、奥の空間が広がっているとは便利だね?」
「レベルアップさせたおかげですね」
昨日獲得したコロンは、実はこっちに使った。
見た目はそんなに変わらないけど、何度も焼く手間を省かせるのに大容量化がオプションについたため、そちらにコロンを使用。
今朝試運転させた時、付属の天板の枚数が増えたのと一度で50個ものバターロールが焼けたくらい進化した。