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83-4.忘れてた報告(マックス《悠花》視点)








 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)









 ちょーっとばっかし、疲れはしたけど。


 まだまだ動ける余裕はあるわ!


 腹にもまだまだ余裕はあったけど。


 女達の大半が満たされているからだろうと、カイルの提案により二回目は却下されて。


 まあ、明日は善哉食べれるし、いっか、とおかわりのいちご大福を食べながら思い。


 片付けも手伝ってから、やることもなくなってきたし、エイマーと少しゆっくり話そうかと思いはしたけど。



(……なーんか、忘れてる気がするのよね?)



 ここんところ、色々バタバタしてたし。


 いくらあたしでも、焦ったり驚いたりする。


 その拍子で、大事な事を忘れたりもする。


 ユーシェンシー伯爵家嫡男以上に、ランクSS保持者の冒険者だからって。


 転生しても、ただの人間だ。


 一つや二つくらい、忘れたりもするわ。


 けど、なんかチーちゃんについてカイルに報告しなくちゃいけない事があったのよね……。



(思い出せ、思い出せ。えーと、えーと、たしか、チーちゃん達とうちの店でクッキー教室開いた後くらいに)



 ミュファンと、シュィリンから大事な事を聞かされたんだわ。


 そうだわ、思い出してきた!



『オーナー。……シュィリンがですが。姫様が以前所属していたパーティーメンバーを市場で見かけたようです』


『え、マジ?』


『直接、姫を抜けさせたリーダーではなかったのですが。事情はリーダーから聞かされていたとも。が、俺とミュファンは、リーダーに接触した使者であるカイザーク卿とは違うと気づきました』


『と言うと?』


『俺は、形態変化(メタモルフォ)していたカイザーク卿としかお会いしていなかったんですが。感情の起伏は感じられました』


『けど、じー様はちゃんとチーちゃんが所属してたパーティーとも接触したって言ってたわよ?』


『それなんですよ。カイザーク卿……宰相閣下程のお方ならば、正式に引き取るなど方法はあったはずです。なのに、何故強制的に脱退させるなどと』


『……そう言えば、変ね?』



 あたしの方が付き合いもある、あの武闘派飄々じい様が。


 チーちゃんの悲しむ形で、セルディアスに迎えようと言うのもおかしい気がしてきた。


 付き合いのないこいつらが気づくくらいだもの。


 けど、じい様のあの告白の時は、誠心誠意陛下に謝罪してたし。



『わかった。一度この件は預かるわ。じい様はカイルのとこに来る機会が増えるって事になってるから』


『お願いします』



 ……そうそう。そんな内容。



(って、重大事項じゃないのよ!)



 気づいて、慌てていちご大福を詰まらせるとこだったけど。


 なんとかよく噛んでから飲み込んで。


 ひと呼吸置いてから、カイルとレクターを探して見つけては腕を引っ張った。


 仲良くチーちゃんと話してるとこはごめんだけど、緊急事態よ!



「な、なんだ!」


「ど、どうしたの?」


「ちょっと報告することがある!」


「「!」」



 その内容がチーちゃんの事かと察したのか、一度止まって腕を離した後、三人でダッシュしてカイルの執務室に向かう。


 餅つき大会はほぼお開きになってるから、誰も来ないだろう。


 それと、あたし達はフィーやシュラと違って、転移は扱えていない。


 覚えても良かったけど、魔力消費量が結構バカでかい。


 あたしは魔力チートではあるけど、面倒だからと覚えなかった。


 けど、今は覚えた方が楽だと思ったわ。


 この屋敷、小さい方でも無駄にでかいから廊下とかが長い!


 まだかしらと思って、ようやくカイルの執務室に辿り着いた!



「…………で、報告し忘れていた事はなんだ?」



 レクターがアイスティーみたいなのを淹れてくれて、ひと呼吸落ち着いたら。


 カイルからの第一声に、あたしは久々に絨毯の上で土下座したわ!



「すまねえ! ミュファン達が報せてくれた事をうっかり!」


「何?」


「どう言う事?」


「実は……──」



 ついさっき思い出した事を、洗いざらい二人に打ち明けて。


 殴られる覚悟でいたけど、一向に痛みとかもやって来ず。


 顔を上げれば、カイルはソファに座ったまま難しい表情で顎に手を当てていた。



「……あの人が嘘をついているとは思えないが」


「うん。事実をきちんと僕達の前で打ち明けてくれたし、あれで更に隠し事をされてるとは思わないけど」


「…………怒んねーの?」


「何をだ?」


「あの時は、君も王妃様の件で色々頭いっぱいだったでしょ? あれは仕方ないよ」


「ああ」



 本当は言いたい事くらいあるだろうに、微妙に柔らかくなったわね、カイルの雰囲気が。


 さすがは、想い人に関する事となれば、かしら?


 そこに納得すると、あたしは立ち上がってレクターの隣に腰掛けた。



「で? じい様に確認するか?」


「それもだが……そのパーティーのメンバーは、まだリュシアにいると思うか?」


「チーちゃんが抜けて、二ヶ月近く経ってるのに。まだリュシアにいるなら……可能性は高い」


「けど。姫様にとっては、悲しい事だよ? 理由はともかくとして、無能を言い渡されて脱退させられたんだから」


「実際は、家事スキルが高すぎて頼りがちだったらしいが」


「マブダチの俺からしたら、ざまあと言いたいとこだが。ま、抜けて始めてわかったんだから、自分達で努力はしねえとな?」



 でも、チーちゃんを家政婦扱いしてたのなら許さないわよ?



「ひとまず。まだカイザーク卿本人とも言い難いのであれば、魔法鳥で連絡するわけにもいかない。三日後が、シュラとパン作りを習いに来るのだから、その後にしよう」


「うん」


「だな」



 さてさて、あの武闘派飄々じい様はどう答えてくれるのかしら?


 あたしの勘では。


 例の神様とかが関係しててもおかしくないのよね……。

これにて、毎日更新をおやすみします。


次回は月曜日!

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