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79-2.一部戻った(マックス《悠花》視点)








 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)









 チーちゃんに、転生後、わずかにお城で過ごしてた記憶があった。


 それは、少なからずいいとも悪いとも言い難い。


 だって、今日聞いた時はなかったけれど、カイルと目の前で王妃様(自分の母親)を失ったものがあったとしたら。


 あの子は、絶対ショックを受けるに違いない。


 そして、どんな風に取り乱すのかも。


 だって、育て親に雰囲気が似てた、あのマザーの前であれだけ泣いたんだもん。


 いくら精神年齢があたしと変わらないからって。


 転生者として自覚を持ってから日が浅い子だから。


 きっと……号泣だけで済まないはずよ。


 あの子が好きなカイルも、未だにトラウマで済んでないから。



『報告するでやんすか、マスター?』


「するしかないわよ。あんたはロティちゃんの側にいてあげて」


『うぃっす』



 チーちゃんは裏山なくらいに、エイマーに抱っこされてるけど。それはそれ、これはこれ。


 チーちゃんには今ご飯が必要だし、あたしは元からするつもりでいたカイルに報告しに行ったが。



「姫は起きたのか!」


「っと」


「カイル、慌て過ぎ」



 執務室に入ると同時にカイル自身が詰め寄ってきて。


 顔も焦りがわかりやすいくらい出てたわ。


 レクターも呆れると言うか、結構あたふたしてて。


 あたしもあの子が熟睡しきってた時は驚いたけど、こいつら見てるとあたしの方が拍子抜けしちゃうわ。



「だーいじょぶだって。無理矢理起こしたせいか、割とすぐ起きたぜ?……けど」


「「けど?」」


「あの子が。夢かなんかで、王妃様との記憶を蘇らせた」


「「!」」



 やっぱ、青ざめるわよね。


 カイルの方も、わかりやすいくらいになってるし。



「……歌の記憶、以外にもか?」


「カイル、あんた。あの子が子守唄覚えてるの知ってたのか?」


「俺が熱を出す前の晩に。……一人で歌っているのを聞いた」


「「へー」」



 是非とも追求したいとこだけど、今はそうじゃないからレクターとやめておくことにした。



「で、姫様は王妃様とわかったのかな?」


「聞いた限りじゃ、歌を歌ってるのが自分のお母さんだとわかった程度だ。寝起きだったし、俺もそんな聞いてねー」


「ふむ。ロティちゃんの方は?」


「あれだけ熟睡してたのに、チーちゃん起こしたら一発だったぜ? 何が起きたのかはまだ聞いてねーが」



 ほんと、あれはなんだったのか。


 終始、レイの奴が『ロティー、ロティがあああ!』って騒ぐからうるさいのなんのって。


 レイが先輩精霊として診ても、同じようで違う精霊だからさっぱりで。


 さっき、いきなり抱きつくくらい、ほんとずっと心配してたのよね?


 チーちゃんも、きっかけについてはなーんかはぐらかしてたし?


 あれは、聞き出さないわけにはいかないわよねぇ?



「マックス、なんか怖い顔してるけど……どうしたの?」


「あ、そうか?」


「何か、企んでいるような気がしたが?」


「あとで教えてやっから」



 今は、なんか教えられないわ。


 特に、カイルが取り乱す程だもの。


 この慌てっぷりをチーちゃんにも見せてやりたいけど、今はダメだわね。


 あの子、未だにカイルが自分にぞっこん(死語?)ってのも知らないでいるから。



(さあて、どうしようかしらねぇ?)



 とりあえず、報告も終わったし、一度チーちゃんのとこに戻ろうかしらん?



「とりあえず、姫様の容態については何も問題なさそうってことかな?」


「気になんなら、あとであんたが診てやってくれよ」


「そうだね、そうするよ」


「んじゃ、俺一度戻っから」


「何かあればすぐ報告しろ」


「それだけ心配なら、自分で言いに行けよ?」


「な、な!」



 あー、面白い。


 あー、おかしい。


 こんなわたわたしたカイルの表情だなんて、滅多に見れないわ。


 さすがは、チーちゃんってとこかしら?


 面白くなったので、カイルの首根っこを掴んでみた。



「つーれてこ」


「ほどほどにね、マックスー」


「な、な、な、なんで俺まで!」


「自分で言いに行けよ」


「あ、あとで」


「「先に行け」」



 レクターとハモったとこで、魔法陣のとこにまでずるずると引きずって。


 そっから食堂に行くまでも、抵抗されたので殴ってやろうかしらと思ったが、そのままにして扉を開け放てば。


 もくもくと、ご飯を食べてるチーちゃんとロティちゃんがレイに見守られてたわ。



『はぐ、はぐぅ』


「ロティ、いっぱい食べるね?」


『美味ちーでふぅ』


『いっぱい食べるでやんすー』


「美味しいもんねー?」



 レイは気づいてるだろうけど、あたし達にチーちゃんは気づいていないようね。


 なので、カイルの首根っこをしっかり掴んでから。




 ヒョイ。





「うぉ!?」


「ふぇ!?」


『でふぅ!』


『だ、旦那ぁ!?』



 あたしが投げたカイルが、ちょうどチーちゃんの真横に空いてるスペースに落ちたので、全員の注目を集めたわ。



「…………い、たた」


「大丈夫ですか、カイル様!」


「だ、大丈夫、だ……」



 チーちゃんチーちゃん。


 慌てて駆け寄っても、角度的に見るとそれキスしてるようにも見えるわよ。


 あー、今は見えないけど。カイルの赤面になってるのが想像しやすいわ!



「え、けど。今誰に?」


『マスターでやんすよ』


「ゆ、悠花(ゆうか)さん?」


「あんたを心配してるカイルが面白い事になってっから見せようとねー?」


「は? どうゆう事?」


「けど、慌てっぷりが見たことないでしょう?」


「そ、そうかもしれないけど。いきなり人投げちゃダメだよ!」


「へいへい」



 あーあ。使用人じゃなくて、あんただから心配してるのになーんで気づかないのかしら。この鈍チン同士。


 全く、世話がかかる子達ねーと、内心お姉さんのような気持ちになっちゃうわ。



「お、俺の事より。体に大事はないか?」


「へ? あ、はい。寝てただけなので大丈夫です!」


『でふぅ』



 あーあ。


 見てて絵になるわね〜、構図はイマイチだけど。


 将来くっついたら、結婚式で物凄く絵になるわよ。


 この鈍チン同士さん達は。

明日も頑張ります!

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