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7-7.会いたかった理由(レクター視点)

今日はここまで








 *・*・*(レクター視点)







 チャロナちゃん達を避難させてからは、それはもう大変だった。


 メイミー姉さんが、ご自慢のメイスを振りかぶってシュライゼン様にぶちのめそうとするんだから。


 僕はもとより、カイルにも手伝ってもらった事でなんとか落ち着いて。今は、もう一度姉さんに淹れてもらったコーヒーで一息つく事に。



「…………しかし、シュライゼン。何故勝手にチャロナ……に会いにいった。お前の性格ならば、待てないのはわかってはいたが」



 カイルが、シュラ様の前で彼女を敬称抜きに呼ぶのは少しためらいが出るのも無理はない。


 結局、チャロナちゃん本人にも伝えずにしてしまったが、このおちゃらけた方は本当は貴族ではないからだ。




「……半分は、君の予想通りだぞ、カイル? 生き別れた妹に会いに行きたいのに、理由はないじゃないか」


「それでも、一応引き取り雇用したのはローザリオン家当主の俺だ。一言くらい言え」


「だってだってぇ! あれだけ探しても見つからなかった妹なんだぞ! 父上よりも先に会いたいじゃないかぁ!」


「「「はぁー……」」」



 相変わらず、自分の欲求に忠実な方だ。


 彼以外、全員ため息を吐いてしまうが、もう二人は出会ってしまったから遅い。



(けれど、不幸中の幸い……と言うか。チャロナちゃんは気づいていない)



 彼女が何故孤児になってしまったのか。


 何故、シュラ様を含める実の家族と引き離されてしまったのか。


 シュラ様がかつての戦争を話題に出しても一向に気づかなかったのは、彼女が育った国が『ホムラ皇国』だからだ。



「孤児院については本気だぞ? あの子達には、是非とも食べてもらいたい」


「それを口実に、チャロナの功績を少しずつ積ませるためか?」


「さっすが、カイル。……我が妹に、いずれ本来の地位を明かしたとしても、ただの王女(・・)だけでは臣下共も納得はしないだろうさ」



 そう、シュライゼン様の本来の地位は、セルディアス王家の第一継承者。


 チャロナちゃん自身は、戦争を機に亡命させられたシュラ様にとってたった一人の妹君。


 僕とカイル……そして他のパーティーメンバーと一緒に冒険者になってたのは、あの子を探し出すためだったのだ。



「……彼女の功績、か。悪くはないが、お前達の母君に瓜二つでは納得されないか?」


「可能と言えば、可能だとも! 俺と同じ『彩緑(クリスタルグリーン)』の髪の所持者だしな!」


「なら、時期を待って公表すれば」


「16年も見つからなかった。そこに、君達へ課した勅命が無意味に終わって、まだ半年。くすぶってた連中どもをあぶり出すのに今は忙しいんだぞ」


「……それが本音か」



 王家の特徴と、亡くなった王妃の生き写し。


 ある意味、これらでも十分だけれど、政務側ではそうも行かないのが現実。


 だが、せめてものわがままで、この方は身分を偽って妹に会いに行かれた。


 本当なら、さっきの冗談は抜きに『お兄ちゃん』と呼んで欲しいのを、耐えたんだ。


 なんだかんだで、ふざけててもこの方は次期国王なんだなと改めて思えた。



「では、シュラ様。私共が、こっそりあの子に行儀作法を仕込むのも?」


「うむ、頼んだぞメイミー! 我が近習の細君ならば信頼はしてるさ!」


「お任せください」



 ここばかりは、姉さんも態度を変えてメイド長らしい対応をする。


 これもまだチャロナちゃんには伝えていないが、姉さんは上位貴族の夫人でもある。理由があって、まだこの屋敷にメイドとしているだけなんだけどね。



「僕も、精一杯サポートさせていただきます」


「うむ、頼んだぞ! 孤児院に行く日時はまた魔法鳥で知らせる。それまでは、普通の調理人としてあの子を支えてやってほしんだぞ」



 そう言って立ち上がるなり、シュラ様はお得意の指鳴らしをしたと同時に、テレポートで姿を消してしまった。


 僕らは、完全に見えなくなってからまた大きくため息を吐いたけど。



「……多分、だけど。陛下の暴走を止める理由もあったんじゃないかな?」


「ないとは、言い切れない。……それと、俺にもう一つ課せられる勅命があるだろう」


「そうですね。チャロナちゃ……いえ、マンシェリー(・・・・・・)姫様との事ですと」



 そう。


 チャロナちゃんの本来の名前は、『マンシェリー=チャロナ=セルディアス』。


 洗礼名と名前が逆。


 その間違いもあって、僕らは冒険者だった時に彼女を見つけられなかったのだ。



「おそらく。シュラと従兄弟である俺であり、今の雇い主なら……庇護出来る存在として、『婚約者』になるだろう」


「カイル、それ義務感だけじゃない……よね?」


「…………正直、まだわからない」



 僕が念のために聞いても、カイルは細く長いため息を吐くだけだった。



(無理も、ないか。使者殿に引き渡すまでの事を思うと)



 赤ん坊だったチャロナちゃんを守っても、目の前で王妃様を失った時の衝撃は。


 同じ場にいなかった僕ですら、トラウマだけで済まなかったからだ。

明日から週末までは仕事なので、一話更新に戻りますん( ´・ω・`)


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