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73-3.小倉あんぱん作り③

あんぱん作りこれまで



「んで、あれを今焼いてるのか?」


「いいえ、フィーガスさん。もう一度膨らませる状態にさせてから、照り付けの卵液を塗って。ケシの実のせます」


「え、まだ手間がいるのか?」


「はい。シュライゼン様達も、今までそうされてましたよね?」


「「う゛」」


「え?」



 どうやら、認識の違いが結構あるみたいだ。


 シュライゼン様の方を向くと、何故かカイザークさんと一緒に顔面蒼白に!



「い、いや〜……形が出来たらすぐに焼いてたんだぞ」


「お恥ずかしながら、私めもです」


「実は、私やエイマーも」


「……ですね」


「ええ゛っ!?」



 それで、見た目は同じって言うのも不思議だけど。


 そりゃ、あんなにもパサパサになりますわ!



「逆に言うと、チャロナちゃんの技術を知るまでは。宮廷でもそうだったんだよ。何故そこまで手間をかけるか最初はわからなかったんだが、あの味と出来栄えを思うと納得したんだ」


「お、お城でも……?」


「俺が知る範囲でもそうなんだぞ!」


「面目無いですなあ」



 つまり。


 他にも問題点は多々あるが、一番の原因は素焼きしたからだと。


 それなら、いくら教えても上達するどころか。


 解決になってはいない。



「二次発酵がいらないパンもなくはないですが、それはほんの一部です。大部分は、成形……形を作ってから膨らませないと、生地の中に含まれてる酵母などの働きがうまくいかずに食感も悪いパンになってしまいますよ?」


「へ〜。パンの工程って、そんな大事な部分があったんだ〜」


「その技術が広まるだけでも、だいぶ改善されっかもしんねーぞ?」


「じゃあ、俺の家で試しにやってみるんだぞ!」


「では、改善のためにもこちらに来てください」



 いい機会だから、二次発酵の見極めを学んでいただこう。


 ロティのオーブンのフタを開けると、発酵途中のあんぱん達が鉄板の上に乗っていた。



「これくらいなのかい?」


「いいえ、シュライゼン様。あと二倍以上は膨らませるのに待ちます。室温でも出来なくはないですが、この中に手を入れてみてください」


「ん?」



 シュライゼン様、あとカイザークさんにも手を入れてもらうと目を丸くされた。



「蒸し暑いのですね?」


「温度管理をさせて、室温と湿度……湿っぽい状態にさせるんです。この技術があると、一定の状態で膨らむのでかなり楽ではありますが。皆さんの場合ですと、濡れ布巾をかぶせて膨らませるだけでも違います」



 そして、膨らみの状態を見てもらうのに、ここで時間短縮(クイック)を使用する事にした。


 もう一度フタを開ければ、希望通りのあんぱんの膨らみに。



「このくらいが、焼くにはちょうどいい膨らみなんです」


「こ、これ。ほとんど焼く手前じゃないか!」


「含まれてる空気の関係上、柔らかさや味にも関係してきます」


「なるほど。でなければ、チャロナ嬢のお作りになられるパンの味にならないと言うことなのですね?」


「う、ううーん。わかんない〜」


「とりあえず、焼く前にも膨らませるのが必要とだけ覚えろ」


「うーん」



 さて、焼く手前になったので。エイマーさんにドリュールを用意してもらい、シェトラスさんにはケシの実の準備を。



「照り付けの溶き卵に水を加えて混ぜたドリュールと言うものを刷毛で塗りつけ、麺棒の面にケシの実のボウルに押し付けると張り付くのでその部分をパンに乗せれば」



 自然と剥がれていき、ワンポイントになってしまう。


 これも量があるので、全員で手分けしてとり行う。


 カレリアさんは、ここでパンを台無しにしちゃいけないからとドリュールのボウルを持つだけに。



「全部出来ましたら、ロティ?」


変換(チェンジ)、オーブン!』



 見た目は変わりないけど、機能が変わったオーブンに全部鉄板を入れて。



「温度も大事です。強火で焼き過ぎてもいけませんから、魔石の火でも中火か中弱火くらいで。だいたい12〜13分焼きます。取り出した時の焼き目も見て、追加で焼いていきます」


「メモメモメモ!」



 これには、シュライゼン様もだけどカイザークさんやシェトラスさん達までメモを取り出した。


 パンの技術を知る側からだと、『そこまで?』と思うけれど。無知よりは知っておくのが大事だから私は何も言いません。



「そして、焼きあがったら。ミトンで鉄板の縁を掴んで取り出して」



 焼き立てもいいけど、食感を重視すると粗熱を取った方がいい。


 なので、冷却(コールド)をゆるくかけてから食べる事にしました。



「ほーぅ? 嬢ちゃん、生活魔法の方が調整うまいな?」



 見ただけですぐにわかったのか、フィーガスさんが横にやってきた。



「わかるんですか?」


「ああ。つか、たしか前いたパーティーじゃ雑事やってたんだろ? その経験があるせいか、微調整がきちんと出来ているぜ」


「……役に立ててたかはわかんないですけど」



 記憶が戻る前の、あのぎこちない雰囲気はまだ忘れられない。


 もう二ヶ月めになるけど、皆、元気にしてるのだろうか?



「ま。こんだけ一級品の腕を持ってる嬢ちゃんを手放しちゃ、今頃苦戦してると思うぜ?」


「へ?」


「うんうん。私達はユーカ姐さんのお陰で料理大丈夫だったけど、その人達も絶対大変なはずだよ。だって、自分達が担ってなかったとこを全部やらなきゃだもん」


「そ、そうですね……」



 たしかに、無神経ではないと思うけど。


 マシュラン、そこをきちんと考えた上で私を脱退させたんだろうか?


 少なくとも、女子メンバーが料理をしてるとこなんて、在籍してた期間一度も見たことがなかったけども。



「ま、過ぎた事は過ぎた事だ。それに、嬢ちゃんの技術は異能(ギフト)を開花させてからのもんだろ? 悪く言うが、そのパーティーで燻らせちゃもったいねえ」


「特殊揃いですしね……」


「それもあるが、野営じゃ限界がある。ここくらいの規模がねーと、お前さんの技術もあんま活かせねえな」


「はい」



 材料と調理器具などなど。


 コンロの数や、調理台の広さもないと大変だ。


 たしかに、あのパーティーにいた時にもし記憶が戻って、ロティと『幸福の錬金術(ハッピークッキング)』を開花させてもあまり意味がなかったかもしれない。


 やりようはあるかもだけど、成功確率を思えば、だ。



「さて、しけた話はこんくらいにして。食わせてもらおうぜ?」


「わーい!」


「チャロナくん、これにはお茶かコーヒーだとどちらがいいかな?」


「そうですね。カフェオレがいいかもしれません」


『カフェオレ?』


「あ、ミルクを多目に入れたコーヒーのことです」



 ついつい、前世気分でいると基準がズレてしまう。


 淹れ方を教えながら、人数分作り、さあ食べようと席に着く。



「うむ、いい香りなんだぞ」


「夏なので、アイスカフェオレにしてみました」



 グラスを全員に行き渡らせて、いただきますをした。



「綴じ目が下にあるから、このままだと何のパンかわからないんだぞ」



 シュライゼン様があんぱんを手にして、勢いよくかぶりつく。



「ん、んん! 焼き目がついてる部分が香ばしくて、中はしっとりしてるのにふわふわ。アンコの甘さが強いけど、パンとよく合ってる! 美味しい!」


「ありがとうございます」



 シュライゼン様に追いかけるように、皆さんも食べてくださった。



「あっま、けど……パンが美味え」


「おいひい。パンと甘いのがこんなにも合うんだ〜」


「以前の白あんぱんもだが、こちらも風味がいいね」


「これは、好みが分かれますな」


『『美味ひい〜〜』』


「じゃあ私も…………うんうん、良い出来!」



 懐かしのあんぱんは、期待通りの出来栄えとなった。







【PTを付与します。



『ベーシックな小倉あんぱん』



 ・製造200個=4500PT

 ・食事1個=250PT




 →合計4750PT獲得!




 レシピ集にデータ化されました!



 次のレベルUPまであと4232100PT


 】






「お、そうだ。シュラ様もいるし、嬢ちゃんの次の魔法訓練。転移にしようかと思って来たんだが、どうだ?」


「お、いいんだぞ!」


「て、転移をですか?」



 なんだか、とんでもない訓練になりそうだった。

明日も頑張ります!

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