71-1.シナモンロール作り
今日はシナモンロール
*・*・*
孤児院の方も気にはなったけど、私にはやる事がある。
おやつ作りに取り掛からなくっちゃ!
「一昨日、悠花さんがお土産にくれたドライフルーツの中にある、レーズンを使ってシナモンロールを作ります!」
前世、千里が勤めていたパン屋で作ってたのを参考に、少しアレンジしていく予定。
スパイスのシナモンは、この世界にもあるので早速作っていこう。
「チャロナくん、シナモンを菓子のパンに使えるのかい?」
「はい。コーヒーに加えるのよりも香りが強いですが、美味しいですよ?」
「楽しみだ!」
「分担出来るところは手伝うよ」
「ありがとうございます」
『でやんす』
なので、レシピとして取り出せない部分は口頭でお伝えして。
シェトラスさんには、フィリングのアーモンドクリームをお願いして。レイ君にはその補助。
エイマーさんは、私と菓子パン生地の方を。
「ロティの撹拌器で作ってから一次発酵させて。これは、今日は細かく分割しません!」
「違うのかい?」
「はい。ロールケーキのように巻いてから分割させるんです」
「ふむふむ」
手法は様々だけど、私は一般的なシナモンロールの方法でいく。
アレンジは、フィリング作りの方だ。
菓子パン生地は、700gくらいに分割していき、ひとまとめするのだが。
「一度冷やした方が巻きやすいので、少し平らにして長方形にします。それを三つ折りにして少し表面を均して」
天板に乗せて、時間短縮で冷蔵の発酵器で一時間短縮で冷やして。
二回に分けて麺棒でしっかり伸ばしては、冷やして生地を寝かせて。
いい具合にゆるまったら、パイ生地のように麺棒でしっかりと伸ばしていく。
「チャロナちゃん、クリームはこんな感じかな?」
アーモンドクリームが出来たようなので、味見させてもらうと、さすがはシェトラスさんの腕だと納得の味になっていた。
「このクリームを、分割した生地に対して240gずつにボウルに分けて。そこに、細かく刻んだレーズンと粉のシナモンを入れて、木ベラでよく混ぜます」
そして、伸ばした生地に少し余白を残して塗っていき。
巻く時には、少し芯の部分を作ってからくるくる巻いて。
これを、またあとで天板に乗せて発酵させなきゃいけないので。シェトラスさん達に教えながらどんどん巻いていく。
「これは楽しいね! ロールケーキとほとんど同じだ!」
「これをスケッパーで分割していきます」
「え、このまま焼くんじゃないのかい?」
「それもいいんですが、仕上げの関係上今回は切ります。幅をだいたい5cm幅にさせて」
端まで綺麗にカットしたら、今度はシリコンシートを敷いた天板に並べていき。
ラップをして濡れ布巾をかけてから、ロティのオーブンの発酵機能で35度で30分。
ここも、時間がないので時間短縮。
「これをオーブンで焼いている間に、用意するものがあります」
「それが、まだ残してある粉砂糖で?」
「ええ。これでアイシングと言うものを作ります」
「「アイシング??」」
『なんでやんすか?』
「簡単に言うと、砂糖でデコレーションをするんです」
作り方は。
まず、銀製器具からビニール袋を取り出して(何故かあった)。
粉砂糖、レモン汁、水をボウルに入れてよく混ぜて。
いい感じに固くなったら、ビニール袋を三角にハサミで切って、マチのない部分を指で押さえるとあら不思議。
びらびらの部分が、たちまちくっついて袋状になりました。
これは、アイシングペン用の袋なので、好きな大きさに切って指でなぞるとくっつく仕組みらしく。器具のステータス画面にそんな説明があったから出来る神業だけど。
「この袋に、出来たアイシングを入れるとアイシングペンって言うものになります」
「……と言うことは、例えば文字や模様が書けるとか!?」
「はい。クッキーなんかに色々書いたり出来ます。本当は食紅って言う色をつける材料があれば可愛く出来るんですけど」
「うーん。私も聞いた事がないねえ」
「ですよね」
けど、シナモンロールに色付きのをする必要はあんまりないので、通常の白でいく。
結構な量が必要なので、分担してたくさんアイシングペンを作って。
焼き上がって、厨房中にシナモンとアーモンドクリームの焼いた匂いが充満していく中で。
今作ったペンで仕上げをしなくてはいけない。
「ビニールの先端をハサミで軽く切って、ゆっくり絞りながら描いていきます。波模様でちょうどいいと思います」
最初に見本を見せてからやっても、予想通りに全員苦戦。
けれど、10個目くらいで感覚がわかってきたのか、少しずつ描けるようになってきて。
最後になる頃には、皆さんスムーズに出来るようになっていた。
「お疲れ様でした。このお菓子にはコーヒーが合いますので、コーヒー淹れてきますね?」
お屋敷の皆さんに出すためにも、まずは味見しなくちゃいけない。
アイシングペンの方は、使い切ったのは念じて消去させて、残りは収納棚に仕舞い。
疲れ切った皆さんも、手分けしてお片づけをしている間に、コーヒーを落としていく。
コーヒーの淹れ方は、この世界だとペーパーフィルターじゃなく、フレンチプレスってタイプ。
粉を専用のガラスポットに入れて、熱湯のお湯を、粉が少し蒸れる程度に注ぎ。
待つ事20秒。
今度は大胆にお湯を注いでから、プレス器をセッティングしてまた待つ事4分。
マグカップに温め用に入れてたお湯を捨てて、それからプレス器の蓋を押さえて上からつまみを中に押し込む。
一番下にまで下ろせば、粉と黒い湯が分かれたのでこれで出来上がりだ。
隙間から溢れないようにゆっくりと注ぎ口からコーヒーをマグカップに均一になるよう注ぐ。
『ご主人様〜、はにゃく食べたいでふ〜〜』
「うん。今出来たから、一緒にコーヒー運ぼ?」
『でっふぅ』
出来上がったコーヒーのマグカップを、ロティが魔法で、私はトレーでそれぞれ運んで。
食堂に向かうと、一人一個お皿に乗せた状態でセッティングがされていた。
「お待たせしました」
「さあ、食べようじゃないか!」
『でやんす!』
「ふふ。実に楽しみだよ」
全員にコーヒーを行き渡らせてからいただきますをしました。
「本当に香りがすごいね? 私とレイ殿が担当したアーモンドのクリームも香ばしくて」
そうして、ちぎった部分から乾いたアイシングがポロポロ落ちちゃうのにあわあわされちゃったけど。
そう言うものだと私が説明して、全員でパクっと食べれば。
【PTを付与します。
『香ばしさ満点のシナモンロール』
・製造200個=3000PT
・食事1個=300PT
→合計3300PT獲得!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4242700PT
】
「甘いのに、シナモンの香りが口いっぱいに広がって美味しい!」
「『美味しい!』」
『でっふぅ、でっふぅ!』
「ロティ、口の端にアイシングついてる」
『でっふ』
ゴシゴシ擦ってる様子も可愛いけど、うまく出来て良かった。
パンの生地は申し分ないくらい香ばしく出来ていて。
焼いたことで、少しパサつくがレーズンと合わさったことで甘味が増したアーモンドクリームもパンに合い。
仕上げに乗せたアイシングは、少ししゃりしゃりするけど甘酸っぱさがこれまたパンとよく合って。
一個じゃ物足りないくらい、コーヒーともよく合う。
シナモンの香りも上品で素敵!
「また取り合いにならなきゃいいんですが」
「ふふ。それはどうだろうね?」
「特に、旦那様はきっと気に入られると思うよ? 夕飯の仕込みはまだいいから、行っておいで?」
「は、はい!」
きっと、レクター先生もいらっしゃるだろうから、一緒に持っていこうと思ったら。
食堂をノックする声が聞こえたので、私が対応すると。
「ゼーレンさん!」
「どうも、チャロナちゃん。あなたにお客様がいらっしゃいましたので、お連れしたんです」
「お客様……?」
「俺だよ! チャロナ!」
「あ」
『でふ!』
ゼーレンさんの後ろから出てきた、金髪の長い髪の男の人。
本当に、少し前にやってきたフィルドさん本人だった。
「どうされたんですか?」
「ふふ。今日は、奥さんがお礼を言いたいってことで一緒に来たんだ。ほら、ユリア」
「…………はじめ、まして」
フィルドさんの後ろに隠れていたくらい、小柄な女性は。
まだ幼さを少し感じるはずなのに。
綺麗な白金ブロンドと漆黒の瞳が美しい、可憐な美少女さんでした。
うちの店とは少し違います。