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70-3.ピタパン実食②(シュライゼン視点)

今日は少し長めですん







 *・*・*(シュライゼン視点)








 今日は。


 今日は、なんだか我が妹がまた美味しいものを作ってる予感がしたんだぞ!


 なので、お昼のご飯を急遽キャンセルして、転移でバビュンとカイルの屋敷まで来てしまったんだぞ!


 転移位置をチャロナ(マンシェリー)のところに固定して。


 そしたら、やっぱり厨房にいたから思わず抱きついちゃったんだぞ!



「チャロナ〜〜!」


「わ、わ、シュライゼン様!?」


「お腹空いたから、俺食べに来たんだぞ!」


「え、なぜ……?」


「……諦めたまえ、チャロナくん。この方は君のパンを食べに来たんだろう」


「さっすが、わかってるじゃないかエイマー」



 執務もそこそこ終わらせてから来たんだから、多分、ギフラも何も言わない……はず。


 それよりも、お腹が空いて空いて仕方なく、我が妹にねだってみると、仕方ないかと用意してくれたのが。



「……袋っぽいパンに野菜と肉?」


「ピタパンと言うんです。屋台にある、削ぎ肉を詰めたりすることが出来るんですが。今回は焼いて味付けしたお肉と、白身魚のフライを」


「ほほぉ、美味しそうなんだぞ!」



 見た目、変わったサンドイッチだけど。斬新な作りで非常に興味深い!


 ただし、中身がこぼれやすいので注意しながら手に持ち。


 勢いよく、かぶりつく!



「ふ、ふま!」



 肉の方は、食べたことのない甘じょっぱい味付け。


 なのに、どこか懐かしく思えて。


 野菜とのバランスもちょうどいいし、シャキシャキ噛む感じがたまらない!


 一個をぺろっと平らげてから、魚だと言う方も手を伸ばしてみる。


 そっちは、マヨネーズっぽい白いなにかがつけてあるが、これはなんだろうか?


 みじん切りした野菜かなにかが混ぜてあるのはわかったけど。



「チャロナ〜、この白いソースは?」


「マヨネーズをベースに作ったタルタルソースと言うのになります。玉ねぎとゆで卵をみじん切りにして入れてあるんです」


「へ〜〜」



 聞いてしまうと、ますます美味しい予感しかない。


 だから、これもパクッとかぶりつき、サクサクした衣とそのソースを楽しんだら。



「ふぉ、美味い!」



 フライは冷めてても、身はふわふわ、周りの衣はサクサクで。


 ソースは酸味が抑えられていて、まろやかな上にご馳走感のある味わい。


 フライとも当然合うけど、何より野菜にも染み渡って旨味を倍増させてるこの感じ。


 肉の方は水気を吸って、しんなりしてたが。


 このソースは違う。


 なんと言うか、俺も好きだが、もっと子供が好きになる味わい。


 酸っぱくもなく、辛くもなく、甘さがあるわけじゃないのに止まらない。


 やめられない!



「このソース美味し過ぎるんだぞ!」


「ふふ。このソースはこの間召し上がっていただいた中濃ソースとは対極的ですが、万能の一つなんです。肉の揚げ物にも合いますし、魚のだいたいにも」


「作り方って難しいのかい?」


「いいえ。私や悠花(ゆうか)さんの前世では各家庭で微妙に作り方が違いますが。みじん切りして塩に少し置いてから絞った玉ねぎに、砂糖やみじん切りしたゆで卵、パセリ、お酢に胡椒を混ぜれば出来ます」


「すっごく簡単なのに、万能……これは、貴族もだが国民達にも好かれるかもしれないんだぞ!」


「え、じゃあ。孤児院で?」


「うむ。マザー・ライアに教えれば、子供達の食卓が少しでも変わると思うんだぞ。是非とも渡してくれないかい?」


「わ、かりました」



 聞くに、フライの方も手頃に手に入るもので十分とマンシェリーは言うから、なら俺が先にマザーのところへと届けに行こう。


 そう提案すると、マンシェリーは手書きではなく、ロティの模写(コピー)で挿し絵付きのレシピを取り出してくれて。


 さっと見た限り、本当に手間もほとんどかからない優れものだった。






『濃厚簡単タルタルソース』


 <材料>

 卵

 玉ねぎ

 お酢

 砂糖

 塩

 胡椒

 マヨネーズ

 パセリ(乾燥)




 <作り方>

 ①ゆで卵を作る

 →あぶく立つくらい沸いた湯の中に静かに沈める

 →尻の部分にスプーンなどでヒビを入れておくと殻が剥けやすい


 時間は12分→流水で冷やしてから殻を剥く



 ②玉ねぎをみじん切りにして塩を少々ふって置いておき、水気が出たらよく絞る



 ③ゆで卵を白身と黄身に分けて、白身はみじん切り。黄身は軽く潰しておく



 ④マヨネーズ、パセリ、砂糖、②の玉ねぎ、③のゆで卵を混ぜ合わせて、仕上げに胡椒を加える

 →出来上がり







「これは簡単なんだぞ!」


「あとは酢につけたニンニクとか、本当に各家庭で味が違うんです。私のは、店に勤めてた時のレシピですが」


「うんうん。じゃ、今から行ってくるんだぞ!」


「え、お仕事は?」


「だ、大丈夫なんだぞ!」



 多分、大丈夫だから!


 だもんで、これ以上追求されないために転移を展開させて孤児院に移動して。


 マザー・ライアの院長室前に到着してから、ノックをした。



「はい?」


「マザー、俺なんだぞ!」


「まあ、殿下」



 ライアは、少し驚いた後に困った笑顔で出迎えてくれたんだぞ。


 俺は中に入らせてもらうと、右横の壁にある母上の肖像画を少し見てから彼女にレシピを見せた。



「我が妹から、子供達に向けた新しいソースのレシピをもらってきたんだぞ」


「まあ、姫様から? こちら……手書きではありませんわね? ですが、紙ですし」


「そこは少し秘密なんだぞ。けど、このレシピで早速子供達に作ってあげたいものがあるんだ」



 厨房を貸してもらえないか聞いてみると、大丈夫だと言ってくれたので、俺は上着だけを脱いで調理をすることにした。


 ライアも手伝ってくれると言うので、タルタルソースの担当をお願いしたんだぞ。



「フライは……こんな感じかな?」



 妹には劣るが、要点を聞いてきてあるから間違ってはいないと思う。


 孤児院への寄付金で、安価に買える白身魚の切り身をフライにして。


 マザーは、レシピを見ながらもソースを作ってくれて。


 俺のフライが出来上がってから、早速試食してみると。



「うん!」


「まあ。魚の揚げ物ですのに、このソースをかけただけでご馳走感が増します! これは、子供達も好きになる味ですわ!」


「だろう? おやつに少し食べさせてあげたいんだぞ」


「ええ、是非」



 本当はパンと一緒に食べてもらいたいところだが、妹のパンを食べてからはマザー達が手作りするパンを少し残しがちになったと報告で俺は知っている。


 それは当然予測していたことだが、妹のパンの技術の会得は困難を極めるんだ。


 俺も未だに無理だし、あの屋敷で毎日一緒に調理してるシェトラス達でもまだまだ遠く及ばないでいるらしい。


 だから、これは俺からのせめてもの詫びの料理なんだぞ。



「あ、シュラ様ー!」


「シュラ王子様、どうされたんですか?」


「王子様だ!」



 ライアの魔法鳥から連絡がすぐに行き渡り、食堂に子供達も集まってきた。


 俺はそこで、子供達に囲まれてからかわるがわる頭を撫でてあげたんだぞ。



「今日は、今度の食事会の前にお姉ちゃんから教わった料理を作りに来たんだ。おやつに今から出すんで、少し待ってて欲しいんだぞ」


『お姉ちゃんの!?』


『ワァ───ヽ(*゜∀゜*)ノ───イ』



 チャロナの料理の虜になった子供達は、当然はしゃぎだして落ち着かせるのに少し時間がかかったんだぞ。


 そうして、マザーを含める職員達が、紙に包んだ大きめのフライにタルタルソースがかかったものを配り終えてから俺は説明することにした。



「それは、魚をコロッケのように揚げたものなんだ。そこに、お姉ちゃん秘伝のソースがかかってる。きっとびっくりするぞ!」


「では。殿下やお姉さんに感謝していただきましょう?」


『はーい』



 神への祈りを済ませてから、全員でいただきますを言って、子供達は包み紙を手にした。



「ふぁ、魚ってこんなに美味しいの?」


「ソース? マヨネーズに見えるけど、酸っぱくない、美味しい!」


『美味しい!』


「なにこれ、揚げ物と合うソースなんて初めて!」


「「「うっまい!」」」



 どうやら、子供達には満足してもらえたらしい。


 あと数日で、またここにマンシェリーの美味しいパンを用意してくるから。


 もう少し、待ってて欲しいんだぞ。


 皆が満足した笑顔を見てから、俺は子供達から感謝の言葉をもらい、少しだけ雑談をしてから城へと戻った。


 そして、執務室に到着した途端、部屋に(オーガ)がいるかと思ったんだぞ!



「ぎ、ギフラ……?」


「殿下。どこに行かれてたのですか!」



 凄まじい形相で近侍のギフラが出迎えてくれたのだった。



「ちょ、ちょっとだけマンシェリーのとこに行ってから孤児院に」


「行き過ぎですよ! お昼のキャンセルをされて姫様のところに行かれたのはわかりましたが。今の刻限は何時ですか! 八つ時も過ぎているんですよ!」


「あ、あはは……」



 流石に、孤児院で料理してきたのはまずかったかもしれない。


 執務はそこそこ溜まってはいるが、まだ許容範囲。


 これは、単純に心配させてしまったからだろう。



「まあ、ギフラ殿。大きな声が扉の外にまで響いてましてよ?」


「!? シャルロッテ、様!」


「シャル、来てたのかい?」



 扉向こうから聞こえてきたのは、俺の婚約者シャルロッテの声。


 慌てて開けに行けば、いつも通りのにこにこふんわりの笑みを携えていた。



「ええ。少し殿下にお伺いしたいことがありまして」


「なんだい?」



 廊下じゃなんだから、と中に入れれば、ギフラはギフラでもう紅茶の準備をしに行ってた。



「先日、アイリーン様からご婚約成立のパーティーを内うちで開かれたそうですが」


「うん」


「そこで、貴方様の……行方不明になられていた妹君がお料理を振舞われたと言うことは誠ですの?」


「リーン!?」



 口止めはしてあるはずなのに、シャルの前だからうっかり滑らせてしまったのか!



「アイリーン様は悪うございませんわ。その後慌てられていましたが、わたくしも口外はしておりません。それで、妹君……王女殿下がやっと見つかりましたの?」


「……まだ公表出来ないんだ。しばらく胸に留めておいてほしい」


「まあ、そうでしたの。ですが、誠にようございました」



 シャルはほっと息を吐いてから、俺の手に自分の手を重ねた。



「16年のご苦労が報われたのですね」


「うん。けど、見つけたのはカイルなんだ」


「お聞きしましたわ。そして、今は仮の婚約者になられていると」


「それも秘密なんだぞ? あの子はまだ何も知らないんだ」


「ええ」



 この女性の口が固いのは十分過ぎるほど知っている。


 けれど、俺がずっと妹の事を気にかけてた事を知ってるから、こうやって会いに来てくれたのだろう。



「近いうちに、俺の婚約者ってことだけしか伝えられないが、カイルの屋敷に行かないかい?」


「お久しぶりですわね、カイル様のお屋敷は」


「あの子にもいつか君と会わせるって言ってあるから、パンも是非食べて欲しい」


「アイリーン様からもお聞きしましたわ。素晴らしく美味であると」



 そう言いながら、シャルはさらにふんわりと優しく笑ってくれたのだった。

明日も頑張ります!

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