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70-2.ピタパン実食①(サイラ視点)

実食編







 *・*・*(サイラ視点)







「今日のはメンチカツサンドじゃないけど、美味しいから食べてね?」


「え、そなの? カツじゃねーのか」


「けど、お肉やフライはあるから」


「お。そっか」



 チャロナ、もとい姫様の作るパンはいつも美味い。


 特に、最近毎日のように食ってたメンチカツサンドは群を抜いてたけど、今日はどうやら違うらしい。



「メンチカツだけじゃ野菜が少ないし、少し野菜が多めなの。けど、きっと気に入ると思うから」


「わかった。楽しみにしとく。あ、そうだ。次の休みにレイリアのとこに行かね?」


「次……っていつ?」


「あー。そうだな、6日後くらい」


「じゃ、大丈夫だと思う。一度、マックスさんにも聞いておくね?」


「俺もエピアに聞いとく」



 という事で、裏口から急いで厩舎に戻っていき。


 パパッと、仕事をして昼飯と思いきやそうもいかなかった。



「よう、野郎ども。こいつを飼育してみたいと思うんだがどうだい?」


「あ、姉御……そ、それって」


「そうさ。クラーケンの子供さね!」



 通常のイカよりも、何倍もでかいイカのモンスターの子供。



(あれ絶対、昨日のカラアゲにハマったから!)



 相変わらず、どういう仕入れルートで手に入れたのかはわかんないけど。食用でなくもない、クラーケンを育てるってマジか。



「……え、エスメラルダさん。それどこに」


「今朝のうちに、専用の飼育スペースは開けておいたからそこで飼育するさ!」


『い、いつのまに!』


「お前らも、美味いカラアゲ食いたいだろ?」


『そ、それは……』



 やっぱそうだったか……。


 昨日も、飲み会で寮母のヌーガスさんと意気投合し過ぎてたし、めちゃくちゃ飲んでたのに堪えてないんだよなぁ。




『なんだい、こいつは。イカの脚だけっていうのに、コリコリしてるし、味も良いときた! 酒と合うねぇ?』


『だろ? あたいが渡してる醤油のお陰さね。あんたのミソってもんは、一体全体どう言う調味料なんだ。あたいは聞いた事がないよ』


『なーに、ウェルデンブルク地方。あとは、ホムラのごく一部に伝わる豆や米を使ったやつさ』


『味は?』


『そうさね。塩っぱ辛いと言うべきか。とにかく、独特の風味さ。あんたが上げてるショーユと原材料は近いはずさ』


『ほー?』



 俺にはてんでわからない話だったけど。


 わかったのは、どちらも姫様に渡した調味料は美味いって事らしい。


 一度、ショーユはエスメラルダさんに見せてもらったけど。メンチカツのソースの材料ってわかりやすいくらい黒かった。


 ちょっと舐めたけど、塩っから過ぎてどうやったらあんな美味いソースになるか、料理人じゃない俺じゃわかんなかったけど。


 とにかく、姫様はすごいと思うしかなかった。



(エピアに言われるまで、全然気づかなかったし。ふつうにいい子だしなあ?)



 それが、行方不明になってたって王女様だなんて思うだろうか?



「ぼさっとしてないで。運び終えてから昼飯だよ!」


『あいあいさー!』


「は、はい!」



 いっけね、柄にもなく考え込んじまってた。


 ひとま、番にさせる二頭のクラーケンを水槽に移して。


 世話は、凶暴さで有名なのでエスメラルダさん以外だと屈強な体格の先輩が担当することになり。


 俺は俺で、担当のコカトリスの卵の第二陣を回収しに行っては磨いたりなどをして。


 昼飯の合図が出ると、全員に弁当箱を配った。



「今日はいつものカツじゃないようです」


「なんだい? あの子の提案でまた変わったのが出るのかい?」


「なんでも、野菜を食べて欲しいって事で。今日は野菜が多いそうっす」


「どれどれ……?」



 弁当箱をそれぞれ開けると。


 これまた、マジで変わったサンドイッチだった。



「袋?状に焼いてある薄いパンの中に具材が?」


「こりゃなんてんだ?」


「サイラ、聞いてきたか?」


「えっと……確か、ぴ、ピタパン?」



 初めて聞く名前だから、少しうろ覚えだったけど、姫様はたしかにそう言ってた。


 半月状に割ったうえに、更に袋を作るように開いて。


 そこに、目に飛び込んできた焼いた肉と野菜以上にキャベツの千切りがぎっしりと詰まってて。


 もう一種類の方は、木の葉状に揚げてある、たしかフライ。


 けど、これ。このまま全部食っていいのか?


 パンに見せかけた袋じゃないよな?


 って思うくらい、パンの部分が薄過ぎるし!



「へー。普通のサンドイッチと随分と違うが……」



 まず、エスメラルダさんが肉の方にかぶりつく。


 袋の部分もちゃんと食べれるようで、噛み跡が残った部分がそうだと言うのを教えてくれた。



「美味い! 肉の部分は甘じょっぱくて、ニンニクとかがよく効いてる。内側の野菜も塩で味付けしてんのか肉との相性もいい。それに、この薄いパン……食べやすさを意識しているよ!」


「「「「俺達も!」」」」


「い、いただきます!」



 そんなにも美味そうに食っているのを見ると、興味が俄然とわいてくる。


 勢いよく、肉の方にかぶりつくと、まず口に広がったのはエスメラルダさんも言ってたように甘じょっぱい肉の味付け。


 濃いけど、袋状の薄いパンと塩で軽く味付けした野菜とよく合う!


 シャキシャキ言うのが口の中で止まらず、肉を勢いで食べないように野菜と食べると、それだけで口の中で噛むのをやめられない。


 止まらない!



「こっちのフライも美味ー。マヨネーズみたいだけど、この白いのただのマヨネーズじゃないぞ!」



 一個を全部食べてから、フライの方に移る。


 フライは、大きめに揚げて半分に切ったらしい木の葉型の魚のフライ。


 色味から白身魚ってのはわかったけど、先輩の言ってたようにマヨネーズみたいだけど、少し違うソースがたっぷりと盛られていた。



(ちょっとソースだけ……)



 指に乗せてぺろっとなめてみると。



「あんま酸っぱくない?」



 マヨネーズ独特の酸味が和らいでいて。


 角ばった、玉ねぎはわかるけど。少し柔らかい食感が何かわかんなかったけど。


 それがマヨネーズっぽいのをまろやかにしてくれてて。


 フライと試しに一緒に食ったら、それはもうやめられないのの、始まりだった!



「う、美味い! 野菜と食うとドレッシングみたいになって!」



 肉の方も良かったけど、野菜と魚の組み合わせでここまで美味いと感じたのは初めてだった!



「こりゃ。白身の魚とこう言う調味料で酒の肴にするのも悪くないねぇ?」


『姉御、じゃあ……』


「今夜も飲むかい!?」


「え。エスメラルダさん、今日は旦那さんが来るんじゃ……」


「おっと。そうだったねぇ?」



 ダメでしょ、自分の旦那さんの事忘れてちゃ。


 俺も、いずれエピアと……とか、ちょっとは最近考えるようになっちまってるけど。最低ここで先輩達の位置に着くまではお預けだ。



(あー、そうだ。あとでエピアにも言いにいかねぇと)



 レイリアに会いに行く相談。


 今のうちに言いに行くべきか?


 なので、急いで食べてからエスメラルダさんに少し菜園に行くと告げてから、俺は走った。


 菜園に行くと、今日も可愛い()のエピアが元気に収穫をしてるとこだった。



「おーい、エピア」


「あ、サイラ君」



 俺が声をかけてやると、あいつは嬉しそうに笑ってくれた。


 その笑顔が可愛すぎだもんで、抱きしめてやりたくなるがエピアの叔父さんであるラスティさんもいるから、そこは我慢。


 せめてもってことで、髪だけは撫でてやった。



「あのさ。6日後って、休み取れそう?」


「? うん、多分大丈夫だけど」


「そん時さ。パーティーの時に言った、マックスさんの店に行かね? 姫様とレイリア会わせんのに」


「ん、わかった」



 どことなく、残念がってたのは。


 多分、俺がデートに誘うのではと思ったかもしれない。


 が、すまん。


 レイリアに相談されて、こっちを優先させたんだ。


 次回は、絶対デートにすっから!



(あいつ。全然料理上達しないって嘆いていたからなぁ?)



 そこは、姐さんと慕ってるらしい、姫様じゃないとわからねーらしいけど。


 俺も料理人じゃねーから、そこは分かんねーし。



「じゃ、俺行くから」


「うん。またね?」



 今ここで、キスしてーって思うくらい可愛い顔だったけど、ラスティさんに見られるかもだから我慢した!


 俺とエピアの初キスが、俺がパーティーでベロンベロンに酔っ払った時の勢いで、っつーから覚えてないのが悔しい。


 絶対、いつか挽回する。


 そう決意してから、俺は菜園を後にした。

明日も頑張ります!

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