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65-2.王はごねる(アインズバック視点)

久しぶりに王様回







 *・*・*(アインズバック視点)








 あれは、本当に俺の子供達だったのだろうか。


 バカ息子の転移で帰ることはなく、祝賀会が終わったら夜半故に甥のカイルキアの屋敷に今日だけ泊まっているのだが。


 俺は、なかなか寝付けなくて借りてる部屋の中を行ったりきたりしている。



「本当に……あれは、シュラとマンシェリーだったのか……?」



 姪のアイリーンが提案したきっかけで、シュラも乗じて踊ることになったマンシェリー。


 授賞式と同じようで似ているドレスをシュラに着せ替えられて、そのまま少しの間、マンシェリーを踊らせるために、シュラがリード役を買って出たのだが。


 周りの者も驚いたように、俺も心底驚いた。


 あれは、まさに、かつての俺とアクシアだったと。


 全然違うのは、頭ではわかってはいたのに、涙を隠せないでいた。


 その後、シュラがひと通りマンシェリーを躍らせてからカイルキアと踊らせてしまったが。


 あれはあれで、また絵になるのだから解せない!



「……マンシェリーの誕生日に、全てを告げたとして」



 本当に、俺の元に戻ってきてはくれないのだろうか?


 まだあまり、今のあの子と接していないせいもあるが、仕事熱心だと言うのだけはわかってはいる。


 わかってはいるからこそ、親子としての時間も少しは欲しいんだ!


 俺は、お前の父親なんだと、豪語したい!



「けど、使命感が強いのは、この前も今日の祝賀会でもよくわかった。だからこそ、ここにいるんだと」



 わかった上でも、俺は少しばかりワガママを通したかった!



「あ〜……言いたい。けど言えない。はーがーゆーいー!」



 床の絨毯に転がりながらジタバタするも、バカ息子もカイザーも自分にあてがわれた部屋で休んでいる。


 今は一人だから、誰も返答はしてくれない。



「マンシェリーも、朝早いと言ってたからもう寝てるだろうし」



 会いに行きたくとも、シュラの父親としか告げていない身分で会いには行きにくい。


 どうもまだ、貴族の人間と偽っているだけの俺でも、あの子には変に緊張感を持たせてしまうようだから。



「仕方ない、寝る……か?」



 俺も朝早い事に変わりはない、と寝ようとしたら。


 少女の声らしき、歌が耳に届いてきた。




「大地に、広がる緑の四季

 芳しい、花の香り


 さらさ、さらさ、手を取りましょう


 その目に浮かぶ、愛し子のために


 手を繋げば、届くところに


 すべての愛しさ、見えてくる」



 こ の 歌 は!?



「マンシェリー……なのか!?」



 歌ってる位置は、俺の部屋にある大窓の下辺りか?


 慌てて窓に近寄って、そっとカーテンを引けば。


 裏庭の方にぼうっと白い影が見えて。


 おそらくだが、あれがマンシェリーなのだろう。


 3階だから、よく見えん!


 歌はもう止んでしまったが、あの子の側に、誰かやってきたようだ。


 微かだが、カイルと聞こえた気がした。



「…………絶妙過ぎだろう」



 想い合う男女二人が、こんな時間に云々。


 俺も、アクシアを想うばかりにわざわざ彼女の屋敷に出向いたりはしたのだが。


 まさか、子を持つ世代になってきて、その光景を見てしまうとは。



(…………思うところは色々あるだろうが。カイルキアになら、任せられる)



 それだけ、想いが強いのは、マンシェリーが戻ってきてからもよくわかっている。


 けれど、そのマンシェリーは、自分が王族と知らないから、ためらいが強いと知っているのだ。


 が、一つだけ確証となるものが出来た。



「あの歌をあそこまで歌えるのだ。披露すれば、馬鹿な臣下どもにはいい気付け薬になるだろう」



 なにせ、あの歌は王家もしくは嫁いだ者にしか伝えられていない、証の歌だからだ。


 しばらく、二人を見ながら生誕祭に向けてのプランを考えていると。


 カイルの方が、なにかをマンシェリーにはおらせてから屋敷内に戻るよう促したようだ。


 マンシェリーは、すぐに戻ってしまったようだが。


 その直後、カイルの方が何故かふらついていた。


 何かあったのか?と、無愛想な甥でも多少は心配になってきたが。


 すぐに、もたれかかってた木から離れて、奴も室内に戻ってしまった。



「…………あの歌を聴いて、アクシアを思い出したのか」



 いくら、普段は気丈に振る舞っていたとしても。


 責任感の強いあいつでも、まだ成人して6年程度のガキだ。


 16年前、目の前で失った敬愛する伯母の生き写しを段々と見慣れてはきても。


 同じ姿、似た声を聴いていて、正常でいられるとは思えない。


 ましてや、惹かれてる相手ならば。



「…………少し悔しいが、あれに預けて正解だったな」



 俺は、報告を受けた直後、無理にでも引き取るとごねたりはしたが。


 今は、違う。


 あいつ、カイルキアの手元に置かせて良かったな、と思えるようにはなってきた。



「…………あとは、うまく結びつけばいいんだが」



 どうやら、カイルキアが告げる時期も、マンシェリーの誕生日あたりだとシュラから聞いた。


 マンシェリー自身が、身分差に深くこだわっていて、きっとカイルキアが告げても納得しようとしないからだと。



「…………父上は、どんな思いで母上に告げたのだろうか」



 久しぶりに、離宮に出向いて聞いてみるのもいいかもしれない。


 明日なら多少時間が取れるはず。


 マンシェリーの報告がてら、出向いてもいいかもしれない。

さあ、どうなるかはまだわからないですん

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