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6-3.サンドイッチ弁当(サイラ視点)

本日三話目









 *・*・*(サイラ視点)







 昨日からだけど、俺には新しい楽しみが出来た。



「うぃーっす! 弁当取りに来ました!」


「あ、サイラ君」


『おにーしゃんでふぅ!』


「よ、ロティ」



 厨房に入らせてもらうと、新しく増えた、新人のチャロナとその契約精霊のロティが、弁当箱に布を被せていた


 新人だけど、俺の親戚の姉さん──エイマー叔母さん(これ言ったら殺される)の部下だから、先輩後輩と言うよりは同僚。


 チャロナとも一個違うだけだから、ほとんど変わんない。綺麗な緑色の髪に青くて透明な瞳だけど、顔もなかなかに可愛い。


 それと、胸はやっぱりない。昨日のエイ姉のお下がりん時も、ブカブカダボダボだったけど、今のスッキリした新しい服着ててもぺったんこ。


 顔は可愛いのにもったいないが、またエイ姉に殴られたくないから言わないでおく。


 それよりも、俺は自分の仕事を早く切り上げるくらい頑張ったご褒美があるんだ!



「サンドイッチ出来たよー? あと、おかずにお肉の揚げ物とピクルス」


「お、サンキュー!」



 今朝も最高に美味かった、この女の子の作るパン。


 俺は少し仲良くなったんで知れたが、どうも職業(ジョブ)が関係してるらしい。


 一応、元冒険者で錬金術師だと。怪我がきっかけで旦那様に連れられてきたが、そのまま試験を受けて採用されたっぽい。


 けど、新人なのに、腕前は既にプロ級。パンだけしか食ってないが料理長のシェトラスさん以上に凄い。


 ここに来る前の、エイ姉と住んでた家のパンだって美味しく感じなかったが、チャロナのは違う。


 俺達使用人なんかが食っていいのかってくらい、上質で病みつきで。今日も先輩達と朝も争奪戦になり、一個死守出来たくらいだ。



「んじゃ、魔法鞄(マジックバック)に全部入れてくから」



 俺は冒険者じゃねーけど、技能(スキル)付きの魔法鞄(マジックバック)はこの屋敷じゃ普通に使われている。


 持ち運びに便利だし、旦那様のカイル様は少し前まで冒険者をやってたから、帰られる前からも俺達使用人に配布してくれたんだ。


 と言っても、俺が使うのはこう言う弁当配達以外だと限られてる。


 上司が、力仕事で体力と腕力鍛えるのに、出来るだけ使うなと言ってるからだ。



「味の感想は、また教えてね? 明日も同じでいいかシェトラスさん達と決めるから」


「ん、わーった。じゃ、配達してくる!」


『いっちぇらっしゃーいでふぅ!』


「ロティもまたな?」



 室内業務をしてる先輩達以外に順に配達していけば、皆ことごとく似た反応をしながら受け取ってくれた。



「朝の食パンで、サンドイッチ……」


「あのもちふわが、再び!」


「今食べたい……これ全員一緒?」


「うっす。あと揚げ物にピクルスって言ってました」


「「「神よ……っ」」」



 神への供物のように、崇めるなんて大袈裟だと思うのも無理はない。


 きっと、世界中のどこに行っても【枯渇の悪食】のせいで不味くなってしまったパンや米が、ここだけ美味くなってしまったんだ。


 俺も虜になった一人だけど、作り手と少し仲良くなったせいか、昨日ほどはしゃがないだけ。


 とりあえず、全員に配ってから自分の持ち場に戻って上司達にも渡す事にしたんだが。



「夢のようなサンドイッチ……っ」


「今朝のトーストもサクフワで美味かったのにっ」


「シェトラス料理長直伝のたまごサラダも加われば」


「「「最高に美味い!」」」



 結局、厩舎(きゅうしゃ)でも同じ事になってしまった。


 一人、責任者の女性──エスメラルダさんだけは、騒がずに卵のサンドイッチを軽く握っていた。



「このしっとりしながらもふわふわな手触り……エイでも可能に出来なかったのにねぇ?」



 隻眼の瞳は、いつものように鋭さがない。


 なんとなく彼女が食べてから食おうと待っていると、エスメラルダさんは女性にしては豪快にかぶりついた。


 いつものことだから気にしないが、真剣な表情がだんだんとほころんでいく。



「美味い! 前は卵だけを楽しんでたが、このパンが加わるとより一層美味く感じる。柔らかくて噛むのも楽しい。こいつぁ、シェトラス料理長に悪いが病みつきになるよ」


「お、俺も!」



 持ってたツナとマヨネーズを合わせたのにかぶりつくと、口の中がなんとも言えない幸せに包まれた。



(すんごく、うっまい!)



 生の玉ねぎを使ってるはずなのに、シャキシャキした歯応えと程よい辛味がツナとマヨネーズに絡みあってて。


 レタスとパン。その組み合わせも一緒になれば、いつまでも食べていたい食感と味が口いっぱいに広がっていく。


 ツナってパサパサしてて苦手だったのに、マヨネーズに玉ねぎって斬新。


 パンもエスメラルダさんの言う通り、ふわふわしっとりで病みつきになりそう。しかも、他の卵やハムとチーズも美味すぎ!



「うっめ! この肉の揚げ物ってなんだろう? 塩と胡椒だけなのに、柔らかくて」



 先輩の一人が急に声を上げたおかげで、おかずを忘れてたのに気づく。


 弁当箱の端に二個だけある肉の塊らしきもの。


 楊枝にさしてすぐに食べやすくしてあったが、手に持ってるハムチーズのサンドイッチを一旦置いて、肉を食べる事にした。



「……あれ、普通の肉じゃねー?」



 色は似てるが、なんか少し白っぽいような小麦色のような。


 匂いを嗅ぐと、ニワトリの肉の匂いと油。あと胡椒。


 先輩があれだけ喜んでいたとなると、これもチャロナの手がけたもののはず。物は試しに、と半分くらい口に入れた、ら。



「っかー! こいつも美味い! エールとのつまみに、あの嬢ちゃんに頼もうかねぇ!」


「「「姉貴、それ賛成!」」」


「…………う、美味い」



 コカトリスの肉もあっただろうに、ニワトリの肉ってこんなにも美味かったのか?


 丁寧に筋取りがされ、臭みもない。


 肉はモモ肉を使ったから柔らかいのは当然でも、下味と臭み消しが合わさって、少し歯でかじるだけで千切れて旨味が広がってく。


 弁当だから、サンドイッチがあるからたった二個しかないのが悔やまれるくらい、美味すぎる『メイン』。


 皆が言うように、これスッゲーつまみになるよ!



「お、俺! 仕事落ち着いたら、チャロナに言ってくるっす!」


「「「よし、任せた!」」」


「んじゃ、美味いつまみのためじゃないが……午後も張り切るよ!」


「「「「あいあいさ!」」」」



 パンだけじゃなく、飯まで美味いって。


 エイ姉を既に追い抜いてるよ、チャロナ。


 俺、あいつのファンになりそう!



(あ……そう言えば、菜園のあいつもちゃんと挨拶したいって)



 チャロナに聞きにいく時に、一応言っておくかと片隅に置いておく。

また更新出来そうならしますねノ

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