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58-3.とんでも収穫と、パンの仕込み

神様も〜



『面白い。これはまさに、珍妙であるな。そこな、(わらし)……いや、チャロナであったか? 主には、様々な加護が与えられておるようじゃの?』


「え、えーと……」



幸福の錬金術(ハッピークッキング)』については、まだエピアちゃん達の前で全部は話せていない。


 毎日色んなお野菜や穀物を使わせていただいても、同じ釜の飯?を食べてる仲間ではあっても、使用人全員に教えてはいけない。


 吹聴するのが不安じゃなく、凄い異能(ギフト)だから自慢しまくってしまうんじゃないかと。


 レクター先生やカイルキア様に言われたので、まだまだシェトラスさん達以外には言えてないのだ。


 それと、パンの美味しさについても定期的に出入りする他所からやってくる人にも言わないでもらってる。


 だから、今ウルクル様が目の前にいるの関係なしに、なかなか言えないわけで。



『ふむ。訳ありか?』


「す、すみません……」


『何、妾の目には見えておるが。此奴らには言えぬ事情は個それぞれよ。ラスティが全てを姪であるエピアには伝えておらぬようにの?』


「え?」



 思わずラスティさんに振り返っても、苦笑いしながら頷くのみ。


 エピアちゃんにも振り返ると、小さく頷かれた。



『ならば。主の持つ加護と妾がラスティに与えたのと相まってこのような結果になったのじゃろう。さて、主の持つ力には【枯渇の悪食】で失われた数多の馳走を可能にしていると聞くが』


「え、ラスティさん?」


「いや〜、だってあれだけ美味しいパンだもん〜。それくらい凄いのはわかるよ〜」



 ああ、そこもまだ秘密だったのに。やっぱり、生産側にはバレていたのか。


 エピアちゃんの方を見ると、コクコクと頷かれた。



「……あれだけ、美味しいから。育てることしか出来ない私達でも」


「……隠しててごめんね?」


「いいよ。きっと、旦那様方に言われたんだよね?」


「うん」



 だから、これは内緒。と、全員で約束する事に。



『これらの子らを、どう調理する?』


「子?」


『ああ。妾は農耕……ひいては豊穣の女神なのじゃ。じゃから、実った作物は妾の分身と呼んでもいい。ならば、子と違わんだろう?』


「な、なるほど」



 結構位の高い神様。


 もしくは、頂点に立つかもしれないウルクル様から言うと、この作物は自分の子供達と変わりないのだろう。



「……チャロナちゃん。前に、ロティちゃんが言ってくれたパンにするの?」


「うん。そのつもり」



 ただ、これだけあると消費が追いつかないだろうからポテトサラダを単純にサンドイッチにするのもありだろう。それなら、何日かに分けていけば使い切れるだろう。多分。



『ほう、これをパンにかえ?』


「はい。ジャガイモで作るサラダを生地に包み込んで、わざと切れ目を入れたところにチーズを詰めて焼くんです」


『ほほぅ。面白い、妾も食してみたいの?』


「これからだと、少し時間がかかりますが。いいですか?」


『うむ、構わぬ』



 なので、ちゃっちゃと収穫作業に取り掛かることにした。


 けれど、一個一個がサッカーボールくらいの大きさだし、ジャガイモって根菜?だから、その一個が重くて!


 茎も太いし、蔓の除去だけでも大変。


 すると、見兼ねてたウルクル様が頭上高くに浮かんだ。



「「ウルクル様??」」


『うにゃ?』


「ウル?」


『此度は、妾も口にするものを馳走してもらえるのじゃ。特別に手を貸そう』



 ここからじゃ見えにくいけれど、手に何かを握られてるようだ。


 その手を頭上高く掲げて、ウルクル様本人はニンマリと笑みを浮かべた。



『枯らせ枯らせ、広がる豊穣の源。集え集え、彼の場所に。豊穣の女神、ウルクルが願うぞ』



 次の瞬間、パンっと軽く音が鳴ったと思ったら。


 あれだけ抜くのが困難だった蔓や葉っぱが瞬く間に枯れていき。


 ぽろっとジャガイモから抜けた後、そのジャガイモ達がすぐに地面から浮き上がり!


 そのまま、作業用の小屋の方にまで飛んで行ってしまった。


 急いで追いかけると、日陰になってるところにどんどんと積み上がって。



『ほっほっほ。これで良いじゃろう? 必要な分も持って行こう、どれくらい必要じゃ?』


「え、えーと……」



 さすがは神様過ぎて、頭がすぐに追いつかず数も正確に計算出来ず。


 あわあわしてると、ウルクル様にぽんぽんと頭を撫でられてしまった。



『よいよい。落ち着け。大きめのが二個あれば事足りるか?』


「え、えっと……お屋敷の皆さんにもなので……五個は使います」


『ふむ。では、行こうぞ。ラスティ達はどうする?』


「うーん。せっかくだし、見てみたいけど。あそこのスペースを均しておかなきゃだし〜。今回はいいよ〜。行っておいで?」


「チャロナちゃん、楽しみにしてるよ!」


「うん。おやつまでには間に合わせるね?」



 と言うわけで、ウルクル様の力でジャガイモを浮かせて……と言う不思議な状態で厨房の裏口まで移動して。


 エイマーさんに、芋の水洗いをお願いしてる間に、急いで着替えて戻ってきて。


 いよいよ、パン作りに移ることに。



「ただ……これどうやって蒸しましょう?」



 大き過ぎて、切って茹でるとポテトサラダにするには水分が多くなっちゃうし、皮ごと茹でるにしても鍋が寸胴鍋しかなく。


 ちょっと困ったな〜と思ってると、つんつんと誰かに肩を突かれた。



「ウルクル様?」


『要は、調理しやすい大きさに一時的に出来ればいいのであろう?』


「え、ええ」


『遠慮はいらん。妾になんでも申せ』


「え?」



 と言うことは、神様と一緒にパン作りをすると言うことなんだろうか?



「いいんですか?」


『妾も馳走になるのじゃ。時間は無限でない。短く済むところがあるのなら、手を貸そう』


「あ、ありがとうございます!」



 けど、小さくしてもらった後に、また元の大きさに質量が戻るのかな?と聞けば、『応』と答えてくださいました。


 なので、まずはジャガイモを通常サイズに小さくしていただき。



「蒸し器で蒸している間に、生地の仕込み!」


『でっふ! 幸福の錬金術(ハッピークッキング)〜〜Ready Go!!』



 菓子生地でない、白パンと同様の生地を仕込み。


 蒸し器にセッティングしておいたタイマーが鳴ったら、竹串で火が通ったか確認して。


 大丈夫だったら、生地を一次発酵させてる間に芋の皮をするりと剥いて、銀製器具(シルバーアイテム)から出した一番大きいボウルに入れて。


 あらかた潰して、作っておいたマヨネーズと塩胡椒で味を整えてから、ウルクル様に元の大きさに戻してもらうとボウルいっぱいに簡単ポテトサラダが!



「ありがとうございます」


『ふむ。これをパンに包むのかえ?』


「はい。次にパン生地を切り分けるんですが」


『妾もやってみたいぞ』


「え、いいんですか?」


『主の料理は実に興味深いのじゃ!』


「は、はい……」



 なので、大量にある生地を、途中からやってきたレイ君も一緒に、ロティ以外の全員で分割していき。


 意外にも、手際がいいウルクル様はなんと丸める成形までお手の物で。


 あっと言う間に終わったけど、次の成形もかな?と思ったら、『次はなんじゃ……』と見た目以上に好奇心旺盛な子供の目をされたので。


 結局は、本番の成形まで手伝って頂くことに。

明日も続きます〜

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