58-2.農耕の神『ウルクル』
醤油げっつ
*・*・*
醤油が。
醤油があるですと?
マジですか!
思わず、『ヾ(*ΦωΦ)ノ ヒャッホゥ』とかしたくなったけれど、『本当ですか!?』と声を上げるだけで我慢した。
だからか、私の反応にエスメラルダさんはちょっとだけ目を丸くされて。
「あれは結構塩っからいだろ? メンチカツが合うとはあんまり思えないんだがねぇ?」
「いいえ。エスメラルダさん! 醤油を少量かけるのもいいんですが、さらに凄いソースを作るんです!」
「「んん??」」
そう、私が作りたいと思っているのは!
ソースはソースでもウスターソース!
揚げ物、粉物にはなんでもござれな万能ソース!
「仕込みに時間がかかるんですが、すっごく濃厚で酸味のあるソースの主要材料になるんです!」
「へ〜、面白い」
「けど、ショーユをさらに……か。先輩、その調味料は取り寄せれば、すぐに手に入りますか?」
「ああ。つーか、あたいが、厩舎の調理場で適当にツマミ作る時に使うのでよきゃ、分けてあげるけど」
「ワァ───ヽ(*゜∀゜*)ノ───イ」
「そんな喜ぶことかね? あ、そうそう。分けてやる条件じゃないが、明日からの弁当にちょっと手間を加えてもらえないかい?」
「手間、ですか?」
「何、今日の弁当も最高だったんだが。うちの連中は男がほとんどだろ? あたいもだが、あの大きさでも一個じゃぁ物足りなくてねぇ。少しサイズを小さくしたのでも構いやしないから、一人につき二個くらい頼みたいんだ」
「わかりました」
そんなのほとんど手間でもなんでもないんだけど、よっぽど気に入ってくださったのなら嬉しい。
「先輩のところでそうだとしたら、男手がほとんどの部署はどこも似た感じになりそうだ……」
「そうかもしんないね。とりあえず、すぐに取ってきてあげるよ」
そう言って、ダッシュで厩舎に戻っていかれたエスメラルダさんは、本当にすぐに戻ってこられて。
手にしていたのは、透明のワインボトルのようなのに詰めてある黒い液体。
ちょこっとだけ舐めさせてもらうと、紛れもなく醤油の味だった。
これで色々食べたいものはあるけれど、有効活用したいから今回はウスターソースの仕込みだけに使おう。
「ありがとうございます! 明日のお弁当、楽しみにしてください!」
「おう。待ってるよー」
けれど、すぐに作れないので。
私は寝ているロティを起こしてから、部屋で汚れてもいい服装に着替えて菜園にlet's go!
少し遅くなったけど、来れる時間でいいとも朝には言われたから、転けないようにロティとゆっくり向かう。
菜園の入り口に着くと、作業小屋の方からちょうどエピアちゃんが出てきた。
「お待たせー」
『でっふでふぅ!』
「ううん。全然大丈夫。……機嫌いいけど、何かあったの?」
「あ、わかる?」
別段隠すことでもないし、明日にはエピアちゃんも食べてもらう予定のものだから教えちゃおう。
ラスティさんのところまで行くついでに話すことにした。
ラスティさんは、ちょっとタバコ休憩時間らしい。神様のお婿さんもだけど、喫煙者と言うのはちょっと意外。
一日でそんなに会う回数は多いって程じゃないけど、ますます謎のお兄さん?だった。
「実はね、実はね? さっき、エスメラルダさんにもらった調味料で、さらにメンチカツとかコロッケが美味しくなるソースが出来そうなの!」
『でっふ! ウスターソースでふぅう!』
「(✧д✧) あの揚げ物がさらに美味しくなるの!?」
「うん。明日には出来そうだからお弁当までには出来るよ?」
「(∩´∀`)∩ワーイ」
エピアちゃんも喜んでもらったところで、ラスティさんのとこまでスキップしながら向かうと。
少し斜面のある土手のような場所で、ラスティさんは煙管をふかしていた。
ちょっとエスニック調の煙管だけど、匂いもきつくないし逆にお洒落!
ラスティさんは、私達が目に入ると横に置いてた器の中に、ポンっと吸い殻?を落として片付けを始めた。
「待ってたよ〜。実は、チャロナちゃんにちょっと会って欲しい人?がいるんだ〜」
「私に、ですか?」
「うん。エピアには久しぶりになるかな? いいよ〜?」
「え?」
『でっふうううう!』
私には何が何だかわからずだが、ロティには何かわかったようで。
上、上、と指を指す彼女の指示通りに上を向けば、紫の煙に囲まれた『何か』が降りて来ようとしてた!
『ほう。このような、女童とは。なかなかに愛らしいではないか』
少しずつ少しずつ、煙の中から出てきたのは薄茶の艶髪をしてる女の子の姿をしてた『何か』。
だけど、昨日聞いたのとこの展開を考えれば、思い当たる事はただ一つ。
「か、神様……ですか?」
『応。妾は、そこにおるラスティの対となり、番になる存在。神の名は、ウルクルと言う』
ウルクル様と言う神様は、降りてくると浮いてから自然とラスティさんの懐に入って首に両腕を回された。
それだけで、本当に絵になるくらい神秘的で素敵。
神様だから、やっぱり美形過ぎ!
ちょっと触ってみたい、ぷるっぷるの白過ぎる肌とか。
おっきくて睫毛バサバサの濃いエメラルドグリーンの瞳とか。
見た目少し幼女っぽい雰囲気でも、ちゃんとした大人の色気も醸し出している。
けど、どうしてラスティさんと恋人?になったんだろう?
「久しぶり〜。この子が、例のチャロナちゃんだよ?」
『げに。幼いながらも、愛くるしいのぉ。ん? そこな童は気配だけならばエピアだが、髪を切ったのかえ?』
「は、はい。色々あって、つい先日切りました!」
『そうかえ。ほんに、前以上に愛らしい。話し方も、少しはマシになったか。よいよい』
『でっふぅ? 神しゃま?』
『そうじゃ。主もなかなか面白き存在じゃが、神ではないな?』
セーフ、セーフ!
ロティが普通の契約精霊じゃないと言うのは、ラスティさん達の前だけど言わないでおいてくれたみたい。
よかったよかった、と安心しているとウルクル様はラスティさんから離れて私とロティの前に浮かんできた。
「えっと?」
『ふむふむ。得ておる加護もなかなかに面白い事になっておるな? 妾が手を加える必要はなかろう。して、ラスティ。今日は何用じゃ?』
「この子達が育てた作物が、僕につけた加護以上に早く育っちゃってね。ちょっと見て欲しいんだ」
「え? ラスティさんの……ウルクル様にいただいた加護のせいじゃ?」
「まあ、見てもらえればわかるよ?」
なので、全員で私に貸してもらったスペースに向かっていくと。
「で、でっか! んで、多い!」
『でっふ!』
『ほっほっほ、これはまた珍妙じゃな!』
療養前までは、たしかにふつうのジャガイモ畑だったはずなのに。
目に飛び込んできたのは、一つ一つがサッカーボール並みにでかいジャガイモ畑とのご対面になったのだ。
これは、たしかにウルクル様も笑い出してしまうって。
けど、すぐに作れず申し訳ありません