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55-1.先生に会いに行きましょう①

お待たせしましたぁああああ






 *・*・*









 いきなりだったから、本当にびっくりした。



「昨日ぶりですわ、チャロナお姉様!」



 ほんとに、昨夜以来の再会ではあるけれど。


 カイルキア様に挨拶されたアイリーン様は、私が視界に入るとタタッと走ってきてそのまま抱きついてきた!


 ふんわりと柑橘系の香水のにおいがして、いい匂いではあるけれど。まさか、抱きつかれるとは思わず。


 しかも、二個差とは言え少し低めのアイリーン様が、そのほっぺが、何故か私のささやかな胸に直撃!


 痛くはなかったけど、胸が……胸が潰れた!


 でも、ちっとも気にされていないアイリーン様はそこで頬ずりしてしまう。



「昨日もですけれど、今日もお加減がよろしかったのですね!」


「は、はい。気分転換も兼ねて少し外に」


「そうですの!……お兄様もご一緒でしたの?」


「……たまたま、だ。いい加減離してやれ」


「嫌ですわ。せっかくのスキンシップの機会ですのに」


「……はあ」



 こっちは色々とあっぷあっぷなのに、このお嬢様は本気で嫌なようでぎゅーぎゅーと胸に顔を埋めて、ご自身の胸を私のお腹辺りに押し付けてきた。


 二個下でも、発育期は順調なようで私よりおっきいのが少し羨ましい!


 じゃなくて、



「きょ、今日は、レクター先生に?」


「ええ。今日こそは!……と思いましたが。お父様に一度カイルお兄様にご挨拶してから伺うようにと言われまして」


「こってりとしぼられたはずなのに、その程度で済んだのか?」


「時間帯を叱られただけですわ。お会いするのには反対されませんでしたもの」


「……そうか。しかし、不完全とは言え、よくあの難しい魔法を覚えたな?」


「愛の力ですわ!」


「…………」


「です、かね」



 カイル様は呆れてるようだけど、実際のところそうかもしれない。


 好きな人のためなら、難しい障害も乗り越えるって日本でも色々あったし。


 その行動力や素直さが、少し羨ましかった。


 私にはない、前に立ち向かう強さ。


 今隣にいるこの人に、想いを素直に伝える強さなんて、自信がなさ過ぎて……とても出来ないから。


 身分差もだけど、釣り合わないんじゃないとか。


 気持ちを伝えたら、迷惑じゃないかとか。


 悠花(ゆうか)さんやエピアちゃん。この間来てたフィルドさんに背中を押してもらえても。少し経ったら、その不安が押し寄せてきて。


 怖くて、堪らない。


 それは、私が必要とされてなかったかもと思いかけてた、あのパーティーへのトラウマがあるから。


 少し乗り越えられても、完全に消し飛んだわけじゃない。



「それと、ユーカお姉様とご一緒に向かう予定でしたの。お姉様はどちらに?」


「あれを、姉のように慕うな」


「何故ですの? 以前が女性でいらっしゃるのなら、お姉様ですわ」


「…………言い切るお前もお前だが。居場所は知らん。が、あてがってる部屋でのんびりしてるんじゃないか? 俺まだ今日は会っていない」


「あ、私もです」


「では、チャロナお姉様。一緒に参りませんか?」


「おい。チャロナはまだ病み上がりだ」


「ですが。少し体を動かされても」


「そのために、俺と話などをしてたんだ」


「まあ、お兄様。愛を語らっていましたの?」


「違う。……殴られたいか」


「お姉様の前でされないはずですもの」



 うん、なんと言うか。


 性格のタイプは違うけど、立派なご兄妹だ。


 私とロティを間には挟んでいるけれど、両者譲らないと言うかなんというか。


 とりあえず、私は離して欲しいです。



『おねーしゃん、先生(てんてー)が大ちゅきなんでふか?』


「! 精霊様も、わかってくださいますの!?」


『ロティでふ』


「では、ロティ様。昨日もお会いしましたが、誠に愛らしいお姿ですわ! せっかくですから、ご一緒しませんか?」


『でふ?』


「ロティもチャロナの契約精霊だから体調が万全じゃない。いい加減、行くなら一人で行け」


「いけずですわ。お兄様」


「無理をさせないためだ。二人はここの戦力だからな」


「お姉様のパン食べたいですわ!」


「話題をあちこちに変えるな!」


「え、えーと、無理のない程度になら動けますし。悠花(ゆうか)さんのところまでなら一緒に行きますよ?」


「チャロナ!」


「まあ、お姉様! 本当ですの?」


『大丈夫でふ?』


「うん」



 部屋にいても、レシピの勉強をするしかやる事がないし、気分が悪くなったら戻ればいい。


 全員にそう説明すると、カイルキア様からは頭をポンッと撫でられた。



「絶対無理をするな。レクターのところまでいくなら一度診てもらえ。それを理由に俺が同行を許可した事も言うんだ」


「は、はい!」


「では行きましょう、お姉様!」


「……お前も自重はしろよ」


「うふ?」



 とにかく、もう少しだけ歩く事は決定となり。


 魔法陣で三階に移動してから、カイルキア様とは別れた。



「…………お姉様。カイルお兄様には相当気に入られていますわよ?」


「え、え?」



 カイルキア様を見送ってから、小声でいきなりとんでもない事をアイリーン様に言われてしまう。



「いくらお姉様が期待の新人であられても。身内以外の女性とはほとんど話されない、あのお兄様があれほどご心配なさっていますもの。結構……いいえ、かなり好かれていらっしゃいますわ」


「そ、そうでしょうか……」



 エイマーさんやメイミーさんとも普通に話してる事は多いと思うけど。それを見透かされたのか、アイリーン様はぐっと拳を握って上下に振り出した。



「絶対。ぜーったい、何かありますわよ! メイミーとエイマーお姉様は昔から仕えているから当然ですが。ひと月程度のお付き合いで、ここまで気にかけられるお兄様なんて見た事がありませんわ!」


『でふ。おにーしゃん、ご主人様の前ではほわほわ優ちーでふ!』


「そうですわ、ロティ様! お兄様のまとう雰囲気が柔らかいのだなんて、滅多にありませんわ!」



 ロティも参戦して、アイリーン様の前まで下りてくると、手を伸ばした彼女の腕にすっぽり収まってぎゅーぎゅーと抱きしめられた。


 その構図は、目の保養になるくらい愛らしい光景だった。


 そして、そんな話をしながら私の部屋を通り過ぎて、悠花さんが借りてる部屋まで着くと。


 アイリーン様は、昨日とは違い、一応ノックされてから声もかけられた。



『どちら様でやんすか?』



 返答があったのは、レイ君。


 悠花さんは寝てるのかな?と思って、私が声をかけるとすぐに扉が開いた。



『チャロナはん。出歩いて……え、リーンはん?』


「お久しぶりですわ、レイ様!」


『うぇ? 昨日来た言うのは聞いてたでやんすけど、なんで今日も?』


「レクターお兄様へのリベンジですわ!」


『はあ? けど、なんでマスターに用が?』


「一緒に行くって昨日言ったからよ。うるさいから、何事って思ったわ」


「お姉様!」


「あ、はは。来ちゃった」



 アイリーン様の声が大きいから、悠花さんもうたた寝してたとこから起きたみたい。


 レイ君の後ろから、ヒョイっと出てきた彼?彼女?は、ラフなシャツとズボン姿だった。


 私の姿が見えると、思いっきりじーっと見てきたけど。



「……顔色も悪くないけど。どう言う経緯で一緒にいるわけ?」


「チャロナお姉様とカイルお兄様が、どうやらお話されてたようですの!」


「……へえ。めちゃくちゃ聞きたいわね、詳しく」


「ぐ、偶然散歩してたら訓練のとこに行き当たって、そのまま話しただけだよ!」


「『「え〜?」』」


「ロティ以外息揃えないでください!」



 私の事はともかく、本題に移る事にして。


 カイルキア様に言われた条件を理由に、レクター先生がいるだろう医務室に行く事になった。


 ロティは、最初だけアイリーン様の腕の中に居たんだけど。途中でレイ君のとこに移動して抱っこしてもらった。



『ろ、ロティ?』


『おにーしゃん、ひえひえにゃので気持ちいーんでふ』


『へ?』


「こいつ、雷と氷の属性だから体温低いのよ」


『……俺っち、氷嚢がわり?』


『でふぅ!』


『ローテーィー!』



 こっちの恋の行方?も見守っててあげたいが。


 ひとまずは、アイリーン様とレクター先生の行く末を見守らなくては。


落選しましたが、毎日更新頑張ります!

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