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54-2.わからない技術(シュライゼン視点)

今回、少し短めですん






 *・*・*(シュライゼン視点)







 俺は今猛烈に悩んでいた。



「……難しいんだぞ」



 執務は超頑張って終わらせた。


 そこは全然いい。


 じゃなくて、今目の前にあるモノについてなんだぞ。



「……こう申し上げてはなんですが、遠く及びませんなぁ」


「わかってるんだぞ」



 爺やと何をしてたかと言うと、『パン作り』。


 二人で自分のやるべき仕事を終えて、マンシェリー(チャロナ)に教わったアドバイス通りに、とりあえず挑戦はしてみたものの。


 基本的な白パン作りですら、彼女のパンに遠く及ばない結果に。


 見た目はマシでも、味と食感が今まで俺が口にしてきたのと大差がなかったのだ。



「姫様よりいただいた助言ですが、やはり実際に作られてるところを見ねば、形にならないのでしょうか?」


「普段から作っていないのもある。あれは、異能(ギフト)抜きに、作り慣れていないとダメなようなんだぞ」


「そうですな。そうかもしれませぬ」



 生地に負担を与え過ぎず、かつ丁寧に扱う。


 ただそれだけを注意し過ぎても、出来上がったものがこれだ。


 試しに食べてみても、口の中がパサパサするし甘みが薄い。


 一体何が悪かったのだろうか?


 それはやはり、作り慣れている我が妹の意見を聞くしかない。



「けど、マンシェリーは今風邪だし……」



 まだ昨日の今日でも、昨日は少し体調が良くったって、今日も同じとは限らない。


 帰り際にレクターに聞いたけど、少しずつよくなっているから心配はそこまでしなくていいとも言ってたが。


 療養には、あと数日を要するとも言っていたし、せめて二日後にしか行けない。


 けれど、このまま特訓を重ねても改善点が見つからないんだぞ!



「①材料を力強くこねすぎず


 ②発酵はしっかりと、けれど生地が緩み過ぎない程度に


 ③空気を抜く時は叩きつけ過ぎない


 ④手や生地につける小麦粉は大量につけない



 ……これらを守っても、爺とて同じ結果ですな」



 俺より料理が出来る爺やの方も、似た結果で終わってしまったんだぞ。


 それをあの妹は。


 前世の記憶と経験があるだけで、ほとんどあっさりとこなしてしまってる。


 まったく、世界中から欲しくなる逸材だ。


 下手に国外には出せない。


 今はくすぶってる、敵国になり得る国々にも狙われかねない。


 俺の妹だけ、でも重大な事なのに。


 ますます、誕生日まで慎重に事を運ばなくてはならないんだぞ。



「よし。もう一度作って、それでも同じなら魔法鞄(マジックバック)の中に入れて保管しておこう。マンシェリーに見てもらうんだぞ!」


「爺めも手伝いますぞ!」


「おー!」



 と意気込んで頑張ってはみたものの。


 結果は、前に作ったのと同じパンの味になってしまった。



「うう……全然改善されなかったんだぞ」


「ここまでくると、何が良くて悪いのかも見当がつきませんな……」


「ここにいたのか?」


「陛下」


「父上」



 なにやら、抱えるくらいの包みを持った父上がやってきた。


 どうやら、俺に用があるのかすぐに近づいてきたんだが。


 何故か、いきなり空いてる方の手で俺の腕を掴んできた。



「マンシェリーのところに行かせろ」


「は?」


「陛下! まさか、ご自分でお見舞いの品をお届けに」


「え」


「執務はすべて終わらせた! いいだろ!」


「ですが、素顔のままお会いになられるのは……」


「いいじゃないか! もうシュラの親ともバレてるのなら!」


「駄々っ子かい!?」



 まったく、いつにも増してマンシェリーに会いたい病が酷くなっているんだぞ。


 そりゃ、俺の父親とあの子にバレてるのなら仮面を取った状態でもおかしくはない。


 ないのだが……。



「あの方がご自身のご息女である事など、話されませぬか?」


「ど……力はする」


「自信ないじゃないか!」



 それなら全然意味はないので、俺が持っていた荷物を奪った。


 結構大きい割に軽いってことは……多分叔父上と同じぬいぐるみ辺りか。


 けど、父上のことだから……もしや。



「父上、その目の隈。もしかして、これ一晩(・・)で作った?」


「ぐ」


「……それで執務をこなされたと言うことは……睡眠不足ですぞ」



 父上、料理はあんまりでも裁縫は何故か得意なんだぞ。


 昔、母上が人形が好きで好きで、色々集めているのを知った時から、喜んで欲しくて練習して……がきっかけだったらしい。


 今も腕は衰えず、毎年母上の誕生日には小さなぬいぐるみを墓地に供えるくらいなんだぞ。



「……いいだろ。娘にとって初めての贈り物くらい」


「とは言え、その状態では賛成出来ませぬな。せめて、ごゆっくり眠られてからになさってください」


「何故だ。俺は元気だ!」


「その元気なうちに口が滑ったら、計画がおじゃんになるんだぞ?」


「う……」


「2時間でも良いのです。昼頃になれば、この爺めもとがめはしませぬぞ」


「2時間だな!」



 そう言うと、俺にその頃になったら連れてけ!っと目で言いつけてから俺の厨房から去って行った。



「……あーあ。二日連続で会えるのはいいけど、いいの?」


「あそこまでご立派なモノをお作りになられたのでしたら、仕方がないと言いますか」


「まあ、ね」



 誕生日にいきなり会わせるよりもいいかもしれないが。


 とりあえず、俺も明日の執務の量を減らすべく、時間まで着替えてギフラに書簡がないのか聞きに行った。

明日も頑張ります!

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