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52.認めた想い(マックス《悠花》視点)

お待たせしましたぁああ








 *・*・*(マックス《悠花(ゆうか)》視点)









 場所を、カイルの執務室に移したはいいんだけど。


 またあたしの親父がクソ面倒な状況になってるわ。



「〜〜〜〜〜〜〜〜……あれほど……あれほどとは!」



 親父は現在両手で顔を覆いながらの号泣中。


 しかも、この部屋に入ってからずっとず〜〜っと!


 久しぶりにカイルの親父さんが淹れてくれた美味しい美味しい紅茶がお供にあるのに。


 美味しく飲めない空気満載の自分の親父が面倒でたまらんわ!


 泣く理由は明確にあるけど、予想以上に面倒だわ!



「泣き過ぎだよ、フィセル」


「〜〜〜〜……ですが、ですがデュファン様!」



 せっかくカイルの親父さんが紅茶を差し出してくれても、親父はようやく解放した顔はもう見てらんない状態。


 涙と鼻水だーだー、ゴツい体してんのに威圧を与える表情はどこにもなく。


 レクターとシュラは苦笑い、カイルは若干引き気味。


 あたしは盛大にため息を吐いたわ……。



「拙者も、アクシア様と瓜二つとは伺っておりましたが。あそこまで似ていらっしゃると思うと……それに、誠に生きておいでだったと知れば!」


「うんうん。わかるけど、その状態で僕に近寄るのはやめてくれるかな?」


「! 失礼致しました!」



 けど、主人?に言われてようやくハンカチで拭いてくれたから、少し助かったわ。


 何枚かハンカチが使い物にならないくらいになったけど、泣き続けてる以外は見れるようになったからそこは我慢しておかないと。



「……しかし、本当に義姉上とそっくり過ぎたよ。性格は結構控えめでいるようだが。マックス、彼女は君と同じ転生者でも随分と違うね?」


「俺も、記憶が戻る以前の彼女は知りませんが。真面目で勤勉家な女性なら、に当てはまるのと同じでいいと思いますよ」



 チーちゃんの前世『(あまね) 千里(ちさと)』とそう変わりないとあの子が前に言っていたけれど。


 前世もだが、今世でも随分と控えめな性格なのが同じ。


 調理の技術力は高いが、どこか謙遜しがち。


 恋には下手すれば、あたし以上に臆病。


 日本人の、大人しめの女の子にはありがちな性格パターンではあるけれど。



「ふむ、そうなのか。…………しかし」



 カイルの親父さん……デュファン様がそう言うと、意味深な笑顔でカイルの方に振り返った。



「お前の幼き頃からの『夢』が叶うではないか! 僕も義姉上と約束はしてたが、顔のいい息子で良かったよ!」


「「カイルの夢??」」


「…………」


「俺は知ってるんだぞ!」



 意味がわからない疑問に意識を傾ける前に、回答者が出てきたので聞こうと思ったら。


 そのシュラには、カイルが腹パン食らわせて速攻で気絶させ。


 親父さんの方に詰め寄りながら、めっちゃ眉間のシワを寄せてしまった。



「掘り返さないでください、父上! あれは幼過ぎたからの事で!」


「いいじゃないか。お前は義姉上が大好きだったんだし、その娘である姫も可愛がっていたんだから」


「あ、思い出した」


「マックス!?」



 だって、ほんと今思い出したんだもの。


 あれは、あたしが4歳の時で、カイルが6歳。


 チーちゃんがまだ生まれたばかりの頃だったわね……。



「俺がいんのに、王妃様の前で堂々と『チーちゃんと結婚したい宣言』したんだろ? あん頃はまだ素直だったよなぁ、お前も」


「くっ!」


「あー、僕も思い出した! 王妃様がすっごく嬉しそうな笑顔になった時の」


「レクター!」


「ふふふ。それが二度と叶わないと思ってたのが現実になる時が来たんだ。不本意でも姫の気持ちは知っている状態。なら、その顔を活かして、姫の気持ちにもちゃんと応えてあげなさい!」


「顔は関係ない、……はずです」


「なんで自信なさげなんだよ!?」



 直接的にはあたしも聞いてないけど、あんた10人中10人が頷くくらいの美形男子なんだから自信持ちなさい!


 一発殴っても、本気じゃなかったからか顔を赤くしてる以外の反応が特になかった。



「おや、この僕とエディフィアの血をちょうどよく受け継いだその顔以外で、姫の心を射抜いたのかな?」


「…………その、確証がない……ので」


「マックス、君が親友ならある程度聞いてるんだろう?」


「いや、いっつも自分に自信がない以外は聞いてないですよ」


「おや?」



 そう。


 そう言えば、チーちゃんからは自分との身分差以外についてはほとんど聞いていなかった。


 どこが好き?とか、あそこが素敵!とかについては全然。


 カイルがそんじょそこらの貴族の中でも群を抜いて美形過ぎるのに、あんまりそれについては口にしてないのよね。



「まだ明かしていない身分のせいで、俺とエイマー以上の身分差だと思い込んでいるのと。自分の容姿に何故か自信を持てていないんですよ」


「身分については分からなくもないが、あれだけ義姉上とそっくりなのに……まさか、平凡だと思っていると?」


「! そう、それです!」


「嘘でござろう?」


「…………姫のあれで平凡と言うなら、世の女性の大半が平凡になっちゃうんだけど」



 そうよね。


 そうよね!


 あたしはエイマー一筋だけどぉ、この屋敷の使用人達もどれも粒ぞろい!


 カイルは顔で選んだわけじゃないらしけど、男女問わずにフツメンっていないのよね。



「けど、農園のエピアはべた褒めですよ」


「うん。久しぶりに会ったけど、例の事件をきっかけにいい方向に向いたんだね? あれは、たしかにそんじょそこらの令嬢達にも負けないが」


「…………けど、俺も」


「「「「??」」」」



 寝ているシュラ以外全員が注目すると、依然として赤い顔のカイルが口を開き出した。



「…………俺も。はじめこそは気にしていましたが、姫の容姿だけで好意を抱いた訳ではありません。前世の記憶を受け継いでいても、今のチャロナ()だからこそ……」



 言った。


 ついに、言ったわこいつ。


 父親の前だからって言うのもあるだろうけど。


 あたし達の前ですら、明確に口にしてこなかった想いを。


 とうとう、きちんとした形で口にしたわ!



「おっ前」


「だーっはっはー! それならすぐに我が妹の心を射止めてくるんだぞ従兄弟殿!」



 もう一発げんこつをくらわそうとしたら、いつのまにか起きててタイミングを見計らってたシュラに先を越された。


 何気に力のあるシュラのげんこつが頭に響いたのか、カイルは痛そうにしてたけど。



「今すぐには無理だ。まだ本調子でない状態で」


「じゃあ、いつ言うんだい? まさか、あの子の誕生日までとか」


「…………」


「図星かよ!」



 我慢強さは知ってるが、両片想い面倒くさいわ!



「……カイルキア様、それは誠に姫のためでございますかな?」


「親父?」



 ようやっと涙を拭き終えた親父が、珍しくカイルに問いかけていた。



「……想いは、きちんと伝えねば相手にも伝わりませぬぞ。拙者も、妻の心を知るまでは、ずっとそれが正しいと思っておりませんでした。今すぐとは申しませぬが、この国の過去の陛下方のようにならぬよう、道は違えてはなりませぬ!」


「「「「「!」」」」」




 そう言えば、そうだったわ。


 この国の、最近だとシュラとカイルの爺様に当たる先代の陛下のように。


 孤児の身分だった王妃がいた。


 そして、臣下らに認めてもらうために相当苦労してきた事も。


 あの過去と二人は違っても、今の身分差のままなら状況はほぼ同じ。



(親父、やるじゃない)



 婚約の報告がてら、お袋の顔を久しぶりに見に行くのもいいわね。


 今の親父の発言を聞いたら、絶対盛大に惚気られるわあのオカンには。



「…………だが。身分を明かさぬまま告げても」


「それならば、姫が誠に孤児であっても同じ気持ちでしたかな?」


「!」



 珍しく、武道関連以外で親父が押しているわね。



「気持ちが通じているんだったら、早い方がいいと思うんだぞ?」



 今度はシュラも加わり、苦笑いしてた。



「おじい様はおばあ様を本当に本当に愛しているんだぞ。未だに強固派には睨まれてるんだが、俺は羨ましい限りだ。俺にも大切な人が出来たし、次はカイルの番なんだぞ。勅命は果たされたんだ、胸を張ってマンシェリーに想いを告げていいんだ」


「……シュラ」



 こう言うとこが、本当にお兄ちゃんだわね。


 あたしにも姉がいるけど、あの人も嫁ぐ前は義兄さんにそんな胸熱な事を言われたのかしら?



「あ、口挟むけど。姫の風邪治ってからの方がいいぞ。こう言うお約束っつーのが日本にはあって、考え込んで余計に寝込むから」


「……………………そうさせてもらう」



 一応注意だけすれば、もう言う事は決めたらしいようね。


 チーちゃんにまた新たな秘密が出来ちゃったけれど。近いうちに想いが成就されるだけでもよしとしなきゃ。


 と、ここで、デュファン様が手を上げられたわ。



「だったら、先にうちのアイリーンとレクターとの婚約を決めさせるのも」


「お、おおおおお、大旦那様なにを!?」


「うん? 先日手紙を送っても一向に返事がないらしいから、ついでに聞きに来たんだよ?」


「ぼ、ぼぼぼぼ、僕、とアイリーン様、が!」


「身分差どうのこうのの理由は君にもないんだよ、レクター?」



 あーあ、たしかに。


 そっちの方も解決しなくちゃいけないわね。


 でないと、あの子自分で乗り込んできそうだし。


 面白いから、チーちゃんにも教えてあげようかしら?

明日も頑張ります!

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