49-2.お見舞いの品を選ぶ(シュライゼン視点)
今日も短めです!
*・*・*(シュライゼン視点)
俺はとりあえず、叔父上達を連れて私室に招いたんだぞ。
「俺思ったけど。今日はマンシェリーが辛いはずだから、明日にしようかと思うんだぞ」
俺も過去、幾度か夏風邪に苦しんだ経験がある。
あれは引き始めから治りかけまでずっと熱や咳が続く厄介な病気だ。
余程のことがない限り大事にはならないらしいが、出来るだけ刺激は与えたくない。
俺も父上以外かわるがわる見舞いにやってくる者達が、正直言って病気には負担が大きかった。
だから、今日急がない方がいいと思ったのだ。
ましてや、叔父上達も行くことになったのなら。
「それは構わないよ、シュラ。僕達はいわゆる押しかけと変わりないし、本来の目的は謝罪だしね?」
「拙者も同意でござる」
「なら良かった」
叔父上には王位継承権が一応ないため、公式の場だけでは俺の事を『殿下』とか『王太子殿下』とか呼ぶようになっている。
まあ、それは慣習のようなものだから仕方ないが、俺は叔父上が大好きなんだぞ。
父上と一緒に大昔母上を巡って取り合い合戦をしてたらしいが、あの武勇伝はなかなかに面白かったし。
今は、叔父上は叔母上が一番なのを知ってるから安心して聞けるしね?
「けど、それを言うためだけに僕らをここまで招き入れたんじゃないんだろう?」
「うむ。それについてなんだが」
ばっ、と腕を上げたら奥で控えてもらってたギフラが浮遊魔法を使って色々持ってきてくれたんだぞ。
「殿下。調度品ならびに、姫様のお年頃に合わせたドレス一式ご用意致しました」
「ありがとうなんだぞ! ギフラも良かったら一緒にどうだい?」
「え……何故」
「君は、あの計画のせいですぐにマンシェリーには会わせられないけど。お見舞いの品を選ぶだけなら俺はいいと思うんだぞ?」
「そ、そうかもしれないですが」
何をためらっているんだろう?
メイミーの夫なんだから、少しばかりは俺以上の情報が入ってて不思議じゃないのに。
「……僕達の事を気にしてるかもしれないけど、壁だと思っててくれて構わないから」
「そ、そんな! デュファン様!」
「拙者も同じく。妻や娘以外の子らに贈りものをした試しがないので、あまりあてにしないでよい」
「え、え……」
なるほど。
だが、叔父上達がいいって言うんだから無理矢理巻き込むんだぞ!
そしたら、思いの外ギフラも選別に熱が入ってしまった!
「姫様のお目のお色はアクア・クリスタル。ならば、透明感のある装飾品が一番かと!」
「負けないんだぞ、ギフラ! 髪は我が王家の特徴的な色だから、カナリア色のシンプルなドレスを贈りたい! ワンピースタイプの普段着ならきっと着てくれるはずだ!」
「む。ならば、アクセサリーはペンダントもしくはブローチで調整すべきですね!」
「よく言った!」
「……これ僕らいる必要あった?」
「若さ……ですな、デュファン様」
「かなぁ」
あ、盛り上がり過ぎて、叔父上達を置いてけぼりにしてしまったんだぞ……。
「ご、ごめんなんだぞ!」
「も、申し訳ありませぬ。つい熱が入ってしまい……」
「構わないよ。ここで会えたのは君達だけなんだし。僕は、そうだねぇ? 義姉上と瓜二つだと言うのなら」
と言いながら、叔父上は卓の上に広げてたふわもこの人形のうち一つを手に取った。
「成人したてでも、病に伏せってるのならこう言う抱きつきやすい人形もどうだろう? 小さい頃の義姉上はよくそうしてたらしいし」
「初めて知ったんだぞ!」
「まだ陛下とご婚約なさる前のことでございましたからなあ。拙者も何度かお見舞いにご同行させていただきましたが、アクシア様はお休みになられた時によくそのような人形を抱きしめておられましたぞ」
「じょ、女性らしいですね……」
「まだ10歳だったしね? それと姫の側には愛らしい契約精霊がいるようだけど、それは生きてるからずっと抱きしめておかれると大変だろう?」
「「なるほど!」」
女の子なんだから、絶対ぬいぐるみは好きだと思うんだぞ!
それに、いずれはカイルの花嫁になる予定であの部屋にあてがわれているんだから、部屋に小物が増えてもいいはず。
ほんと、助けた時は勢いであてがったんだろうけど。気づいているのかな、カイルは?
「チコリョ、アミュー、ポコモ……。うーん、全部は多いだろうから、一つだけに絞ろうにも難しいね?」
「あ、叔父上! マンシェリーの契約精霊は妖精みたいな見た目をしてるんだ。なら、浮かぶ共通点と丸っこいのでチコリョがいいんじゃ?」
「そうなのかい? なら、僕からはこれにしようか」
きっと、マンシェリーが抱っこしたくなるくらい可愛いんだぞ。
ただ、問題点があるとしたら全部王室用だから高級品なんだけど。
そこは知らせてあげないように、と叔父上にも伝えてから今度はフィセルの番になった。
「むむむ。どのようなものを贈らせていただこうにも……」
本当に、自分の妻やマックスの姉にあたる娘以外に贈り物をしたことがないのか。
候補をいくつか絞っても、叔父上のようにすぐには決まらなかったんだぞ。
「装飾品に小物……拙者が選んでいないものは」
「別に僕達が選んじゃったものでも構わないのに、相変わらず律儀だね?」
「…………ならば。これはいかがでしょう!」
「「おお」」
フィセルが選んだのは、魔石を動力源にしているオルゴール。
まだまだ貴族階層以上しか手に入らない調度品だが、贈り物には最適だ。
ただ、曲は色々あるので全員で選んだんだぞ。
「これで明日は行けるんだぞ! 俺は転移で向かうけど、叔父上達はどうするんだい?」
「そうだね。我が息子を少しばかり驚かせてやりたいから、シュラと一緒がいいかな?」
「拙者も、あれがきちんと姫様の守護を務めているか確認したく」
「じゃ、明日の昼前にここに集合なんだぞ!」
風邪は当然辛いだろうが、マンシェリー。
待っててくれなんだぞ!
明日は……ですw