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46-3.束の間の幸せを噛みしめるも(レイバルス視点)

お待たせしましたぁあああああ






 *・*・*(レイバルス視点)







 チャロナはんのお願いとは言え。


 こんな短期間でロティ(想い人)公認(??)デートが出来るとは思わんでっしゃろ!


 たとえ、見た目が兄貴と妹にしか見えんくても、俺はロティが好きでやんす!



『にゃっふふ〜たきゃ〜〜い』


『そんなにも面白いでやんすか、ロティ?』


『でっふぅううう!』



 肩車してるから、余計に兄妹のように見られても構わんでやんす。


 まずは、俺っちを知ってもらうために。


 俺っちのいいとこやカッコいいとこを見せるために。


 ロティのお願いは出来る範囲から叶えているでやんす!


 ……なんでか、その流れで肩車でやんすけど。


 屋敷内じゃまだ仕事をしている人間が多いので庭を歩きながらやっている。


 月夜が綺麗な今晩。


 ただ夜風に吹かれるだけでも、こんなにも楽しい気分になれるとは思わなかった。


 ロティはチャロナはんとは違う背丈の高い人型の上に乗ってるから楽しいだけでも。


 俺っちとしては、想う相手と一緒。


 フィルド様に言われたように、少しずつアピールを重ねるための絶好のチャンスだ!


 厨房だと、一緒にはいれてもほとんどシェトラスはんらの手伝いばっかだし。スキンシップゼロだし。



(だから……だから、嬉しいでやんす!)



 けど、二時間もずっとこのままじゃさすがに疲れるので、ベンチが見えてきたら座って休憩。


 しかもなんと。


 隣に座るかと思ってたロティが、俺っちの膝上に乗ってくれたでやんす!



『ろ、ロティ? 人型でも俺っちの膝は固いでやんすよ? 座り心地良くないと思うでやんすよ?』


『にゅ、ダメでふ?』


『全然!』



 ものっそ、ウェルカムでやんす!


 ほんわかあったかい体温が少し冷えた空気には心地よくて。


 精霊同士でも、無体温ではないからヒトと同じような身体の仕組みにはドキドキしてしまう。


 ロティのふんわりした脚とか腕とか手とか!


 ヒトと似たような服装とは違い、フェアリーに近い格好でいる彼女は素足とかが晒されたままだからだ。


 赤児に近い姿な分、柔らかさが半端ない!



『スープのお陰でぽっかぽかでふぅう! おにーしゃんもぽっかぽか?』


『そ、そうでやんすね。ちょっと寒かったからぽかぽかするでやんす』



 実際は、ロティとスキンシップ出来てる今の状態で緊張が高まり、体温が上がってるような気がしてるだけだが。


 くるりん、と音が聞こえるように首を上げたロティの笑顔が眩しすぎて、目が潰れるかと思った。



『パンにょお粥も美味ちーんでふよ?』


『パン粥?』



 俺っちも食べた事は当然あるが、今日のような蕩けるような舌触りとかじゃなかった。


 せいぜい、そのまま食べるよりはマシな味だったくらい。


 マスターは、料理は貴族としちゃ人並み以上には出来たが、チャロナはんのように作る域には全然到達していない。


 けど、ここに来て、彼女達の生み出す美味なるパンを口に出来て色々味の楽しさがわかってきた。


 ロティはかなり特殊だが、普通の精霊には魔素以外でヒトのような食事をする必要はないからだ。


 だから、食事を必要とする上に、普通の精霊とは違う構成で出来てるロティの話は興味深い。



『シチューに、ご主人様のパンを入れて煮込むだけでも美味ちーんでふ』


『へー、シチュー?』


『とろとろでふぅ』


『寒い時には重宝されるでやんすねー』


『にゅ。ちょっぴち寒いでふ』


『え』



 と言いながら、俺っちの腹に背中を預けて、羽根と同時に背中の重みが直に当たってくる。


 頭も胸の近くまで寄せられたから、髪からはパン特有のいい匂いが。



(た、耐えられるか俺っち!?)



 いきなり、大胆過ぎるスキンシップでやんすけど!


 俺っちの気持ちを知らないロティでやんすから、ただ優しい精霊の先輩としか思われてるだけでも!


 緊張感が半端ない!



『おにーしゃん、あっちゃかいでふぅ』



 あのー、ロティ?


 そんな頭をぐりぐりせんでくだせぇ。


 いい匂いがさらに強くなって、気持ちにどんどん余裕がなくなっていく。


 これは……これは、本当に寒いかもしれないが。


 俺っちは自分の高くなってく体温で平気でも。


 逆にロティを抱きかかえるチャンスでは?



『……ロティ。ぎゅってしてあげよーか?』


『あい。ぎゅー』


『ふぉ!?』



 質問したら、速攻で腹に手を回されて抱きつかれた!


 無防備言うか、他人を疑わないと言うか。


 少なくとも、出会って間もなくとも信頼されてる証やと、少しずつ嬉しくなってきて。


 でも、思いっきり抱きしめたら驚かれるかもしれないからと、ゆっくり身体に腕を回して。



『ふにゃ〜。ぎゅーであっちゃかいでふ』


『そ、そうでやんすね?』



 俺っちも気持ちまでぽっかぽかになりそう!


 こんな至福の時を過ごしてもええの!?


 ただ、ロティなんか少し熱い気もするが?



『ふにゃふにゃ〜』



 あと、ふにゃ〜って言ってる時とか、ちょっと力が緩み過ぎ。


 まるで、ヒトのように体調を崩してしまってる時のような感じがした。



『……ロティ。ちょぉ、すまんな』



 確か、こう言う時はおでことクビの付け根に手を当てれば……とマスター達に教わった事はある。


 あのマスターは、幼少期以外風邪知らずで育ってきたが症状はこの目で見てきた。


 まさか、と思ってロティのそこに手を当てたら。


 ただあったかい以上に熱く感じた。



『ろ、ロティ! 具合悪いんか!?』


『うにゅ? おにーしゃんのお手手冷ちゃいでふ。気持ちー』


『ダメでやんすか! 思いっきり風邪でやんすよ!』



 咳も他に辛そうに見えんでも、体調が悪くては大変だ。


 が、精霊は本来魔素不足以外で体調を崩す事がほぼないとされてるし、俺っちも今までなかった。


 だもんで、この場合どう対処すればいいのかわからずで……。



『うにゅ? おにーしゃんが二人(ふちゃり)見えるでふ〜』



 ダメだ。


 これは本格的に風邪になっている。


 けど、頼れる精霊も神も……神はいても応えてくださるかはわからない。


 が、一人だけ思いついた人間がいた。



『ロティ。じっとしててくだせぇ。移動するでやんす!』


『うにゅ〜?』



 ロティを抱えたまま人型で壁をすり抜けて移動して。


 気配を探りながら到着した場所には、探してた相手がいたにはいたんだが。



「あら、レイ。どうしたのよ、ここまで来て」



 なんでか、チャロナはんの部屋で話し合いをしてたはずのマスターがいて。


 肝心のチャロナはんも、ロティのように熱を出したのか赤い顔で診察台の上で寝ていた。


 目的のレクターはんは、俺っちが抱えてるロティを見てこっちに来てくれた。



「まさか。姫様の契約精霊だから、ロティちゃんにも熱が?」


『……この様子だと、そうかもしれないでやんすが』



 けど、俺っちも契約精霊。


 感覚はマスターと共有出来るところはあっても、体調まで左右されることはまずない。


 それは、怪我をしても同じ事だ。



「ロティちゃんは、チーちゃん以上に特殊だもの。あんたとはまた違うかもしれないわ。たしか、覚醒するまではチーちゃんの中で眠ってたって言うから感覚以上に共有出来る部分は多いはずよ」



 マスターの言う事が本当なら。


 ロティは、おそらく、『ヒトの中』から生まれ出た精霊の一種?


 ただ、ゴーレムのような要素もあるとは聞いたが。



「……うん。とりあえず、こっちは熱が出てるだけだね。念のため姫様の横に寝かせて冷やすものでも乗せよう」


『……わかったでやんす』



 短過ぎる逢瀬ではあったが、ロティの身体の方が優先だ。


 ヒトともまた違う我ら精霊の身体を構成する仕組みは、まだ謎が多い。


 フィルド様に教えを請いたかったが、魔力溜まりに潜ってルートを辿ってもすぐに戻って来れるかわからない。


 なら、ここは普通に看病するしかない。


 俺っちはレクターはんを手伝いながら、ロティをチャロナはんの横に寝かせてやった。



「けど。いい機会だから二人を休ませてあげようか? なんだかんだで、療養以来ちゃんとした休みって取ってないらしいから」


「妥当ね。1日か2日チーちゃんのパンが食べられなくても、理由がわかれば皆納得すると思うわ」


『! マスター、たしか風邪の時はあったかい粥がいいんでやんしたよね?』


「そうだけど。それが何よ?」


『ロティに、ちょっとだけ教わったでやんす。美味いパンの粥について』


「「へー」」



 なら、明日。挑戦してみようと思う。


 詳しい作り方は聞いていないが、今日のスープを参考にしてみよう。


 俺っち、頑張るでやんす!


明日も頑張ります(`・ω・´)ふんすっ!

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