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40-3.最敬礼の苦難

お待たせしましたぁああああ






 *・*・*







 そこから着せ替えごっこに発展してしまった騒ぎについては、当事者である私はどうしようもなかった。



「髪が緑だからって、緑系にこだわりたいのもあるけどん」


「あ、あの」


「瞳が青水晶(アクア・クリスタル)ですから、薄藍や薄青も捨てがたいですわね……」


「いや、だから……」


『でっふぅ! 全部(ぜんびゅ)はダメでふ?』


「ロティ!?」


「それよん!」


「小物と合わせたら、きっと!」



 などと、ロティも加わったら私の口を挟むのは結局意味がなかったって訳で。


 悠花(ゆうか)さんは今の性別が男でも、元は女性だし今も変身で女性になってるから着替えに抵抗感を持つこともなく。


 あれよあれよと、若草のようなライトグリーンのドレスに着せ替えられてからはきちんとマナーレッスンに入る事になった。



「ふふ。実は、チャロナちゃんが気にするのはお辞儀の作法くらいしかないの。市民じゃあんまり使わないし、そこだけは仕方がないからね。他については大丈夫。旦那様やシュラ様にもあれだけきちんと説明出来てるもの」


「は、はぁ……?」


「お辞儀は、普段とは全然違うわ。貴族令嬢方はその格好で最敬礼を難なくこなすの。脚の力を意外にも使うのよ」


「そーそー。あたしもそれだけはしんどかったわ〜」


「そんなに?」


「日本人の最敬礼以上よ。顔を足のギリギリにまで落とすから」



 試しに見本ね、と悠花さんは、また適当に変身したドレス姿で実演してくれた。


 なんだけど、本当にそれ必要!?ってくらいにしんどそうな姿勢を目にすると、頭がくらっとしかけた。



「本当にそれ絶対なんですか!?」


「まあ。この屋敷で式をする分だからいいっちゃいいだろうけど、出来ないよりはいいわね?」


「付け焼き刃でも、やるしかないわ。ファイトよ、チャロナちゃん!」


『でっふぅ!』


「うぇええん」



 そこからは、地獄の始まりだった。


 本当に異常に脚の筋肉を使う、お貴族令嬢の最敬礼とやらには苦戦しまくりで。


 何回か、お屋敷では定番になった冷たいハーブアイスティーを飲みながら特訓を繰り返して。


 とりあえず、形になったところでやっとこさ休憩になった。



「ふぅ。これくらいなら、明日の授賞式の前に仕上げれば大丈夫だわ」


「ふにゃぁ〜うぅ……」


「お疲れ、チーちゃん」


『ご主人様ぁ〜大丈夫でふぅ?』


「にゃ、にゃんとか……」



 これ絶対明日筋肉痛になるの確定だろうに、明日が本番って言うのが信じられない。


 椅子に座った今でも足首がガクガクしてるのに、あとでお風呂ねと言われるだけだった。



「明日は式があるから、仕事はお休みだけど、休みの日じゃないから。終わったら、多分質問責めに合うのは覚悟しておいた方がいいわよ?」


「へ?」


「そうね〜。チーちゃんは全然覚えていないけど、あの糞子爵がほんとに糞野郎だったから。…………どうやって止めたか使者の奴には聞かれまくると思うわ」


「けど、本当に覚えていないし……」


「まあ。あたしがフォロー入れるとこは入るから」


「うん……」



 シュライゼン様の提案だからとは言え。


 本当に、あの時何をしちゃったんだろうか?


 捕まえたのはシュライゼン様だと言うのに、なんで?








 *・*・*(シュライゼン視点)







 終わっ……た。


 終わった。終わったんだぞ!



「やっと終わったんだぞ!」


「お疲れ様ですね」


「ちょっと父上のとこに行ってくるんだぞ!」


「はい」



 近侍のギフラにそう伝えてから、転移でぱぱっと父上の執務室に着くと。


 こちらも既に終わったのか、書簡等はきちんと片付いていた。


 肝心の本人は?と見渡すと、俺の前に出てきたのは爺やだった。



「陛下は、先程お風呂に入られてから仮眠を取るのにお部屋へ」


「なーんだ。先を越されたのか」


「ほっほ。ほんの少し前ですよ。殿下もお疲れ様でした」


「まあね。明日もだけど、明後日も休みに出来るくらいはしてきたし」



 もうこれ以上山を片付けるのは勘弁だが、明日だけは仕方がない。


 公式で、やっと父上は娘に会える日なんだから。ただし、打ち明けはしないだろうけど。



「爺も楽しみですぞ。アクシア様に生き写しであらせられる姫様がどれほど美しくご成長なさったのか」


「……とりあえず、泣かないで欲しいんだぞ」


「善処します」



 爺やは大丈夫かもしれないが、父上は本当に心配だ。


 愛した人との間に生まれた、愛した幼い娘が。


 その愛した人と同じような姿でいるとわかってても、気持ちが耐えきれるかどうか。


 一応は、国王であり、明日は使者であるから大丈夫だとは思っているけれど。


 建前があっても、人は人だからどうとも言えない。


 ちなみに、俺はなんとか我慢した方なんだぞ。



「んじゃ、俺も仮眠してくるんだぞ」


「よくおやすみなさってください」


「爺やもねー」


「ええ」



 なので、一度転移で執務室に戻ってからギフラに伝えても『二時間だけなら』と条件をつけられ、自室で目を閉じることにした。



(チャロナ(マンシェリー)、明日は家族の対面なんだぞ)



 そう口にしたいのを我慢して、俺は寝巻きに着替えてから目を閉じた。








 *・*・*(カイザーク視点)








 殿下が転移で戻られてから、私は大きく息を吐いた。



「明日、いよいよ姫様と……」



 自分で提案したとは言え、本当に実現する日が来るとは。


 幼い頃を除き、本当に相見えていない姫様。



(部下らに頼んでたとは言え、直接見るのは……いつぶりか)



 陛下も殿下もご存知はないが。


 姫様を逃亡させた以降については、実は私が密かに動いていた。


 マザー・リリアンとは旧い仲だったからこそ、彼女のいるホムラ皇国まで赴き。


 姫様が冒険者になった以降、折を見て使者となり、この国に入ってからパーティーのリーダーに再度忠告した。



(パーティーと別れた後にお迎えに上がる予定が……あんな事になると思わず)



 しかし、運が良かった。


 異能(ギフト)については私も全く知らなかったが、かつての婚約者候補であらせられた王弟のご子息が見つけられるとは。


 王命により、姫様を捜索されてた期間があったからこそ、私は助けずに彼に預けた。


 ひと月近く経つ今も、部下に時々報告は聞くが、彼女はパーティーにいた頃よりもいい笑顔でいらっしゃるらしい。


 私は爺として、あの時ホムラにお連れした使者としてこの上ない喜びに満たされた。



「明日……姫様以外の皆様にお伝えしましょうか」



 隠すのも、もう終わりにせねばならないだろうから。



明日、なんとか更新出来るように今から書き溜めしますん

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