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40-2.マナーレッスンと思いきや

今日は短め






 *・*・*







 もうすぐで部屋に着くところで、悠花(ゆうか)さんがポンっと手を叩いた。



「あたしも参加するって決めたんだし、形態変化(メタモルフォ)しちゃうわ」


『合点承知!』



 そうと決まれば、と言わんばかりに。


 レイ君は人型を光のビー玉くらいの球体に変化させて、悠花さんの中へひゅんっと入っていく。


 そして、廊下全体ってくらいに光がほとばしって行き……消えた頃には、服もサマードレスに変わってて、外見も女性バージョンの悠花さんに変身!



『でっふぅ、でっふぅ! おねーしゃんでふぅう!』



 私も驚いたけど、ロティもよっぽど驚いたのかきゃっきゃしながら悠花さんの周りを飛んでいた。


 そして、満足すると私の前にやって来て。



『ロティのレベルが5になれば出来るでふぅ!』


「へ? いやいや、前みたいに男にはならないよ?」


「あら、面白いわよ? チーちゃんの男姿もだけど……年齢操作も10歳前後までいじれるから」


「ね、年齢操作?」



 10歳前後って事は……上は26まで?



(今の悠花さんよりも年上……うーん、実感わかない)



 ロティのレベルは私のよりも上がりにくいから当分先だし、お楽しみにでもとっておこう。


 それよりも、メイミーさんを待たせちゃいけないから急いだ。



「失礼します。メイミーさん、おまたせしました」


「はーい。どうぞ」



 そうして部屋の中に入ってみれば。


 これ、礼儀作法?って思わなくらい。ドレスや小物とかの山が部屋いっぱいに広がっていた。


「え……え?」



 私がびっくりしてても、メイミーさんはにっこりと笑うだけ。



「行儀作法についてはその格好でもいいけれど。明日は王城からの使者様がいらっしゃるのよ? 格好も決めておかなくちゃって。急いで用意したの」


「何かしらバタバタしてたから、今日でよかったんじゃなぁい?」


「そうですわよね? マックス様も今はそのお姿ですし、お手伝い願えます?」


「いいけど、作法は口実?」


「どっちもですわ!」



 なんて事だ。


 礼儀作法ももちろんだけど、着せ替えごっこが目的だったなんて。


 絶対似合わないと逃げようにも、悠花さんに首根っこ掴まれたので逃げられませんでした。









 *・*・*(レクター視点)








 今頃、チャロナちゃん(姫様)は大丈夫だろうかと少し心配になった。



「ねえ、姫様大丈夫だと思う?」



 カイルが稽古から戻ってきて、その足で厨房からもらってきたらしいウィンナーロールっておやつのパンに舌鼓を打ちながら声をかけたが。



「…………いずれ、姫に戻るのであれば致し方なかろう」



 そう言うだけで、ほっぺにマヨネーズつけながらウィンナーロールにかぶりつくばかり。


 真剣に答えていないわけじゃないだろうけど、おやつに夢中になり過ぎだ。



「だって、実質着せ替えごっこだよ? カイルも姫様の着飾った姿とか見たくないの?」


「俺が?」


「曲がりなりにも、婚約者。しかも、気にかけてる相手なら、どうなの?」


「…………どう、と言われても」



 やっと自覚しだしたのか、口元の汚れを適当に拭ってから顔を赤らめた。


 まったく、好きな相手が綺麗な恰好をしたらときめかないわけがないだろうに。


 微妙に鈍いんだよね、この朴念仁は。



「完全な正装じゃないにしても、可愛く着飾ったら舞踏会で踊りたくもならない?」


「なる……か?」


「じゃあ、姫様がほかの男と踊ってもいいの?」


「! それは……」



 煽ってやっと自覚する辺り、この青年は自分の気持ちにも鈍過ぎる。


 義務感から、ずっと探し続けてた期間が長かったせいもあるが。いい加減、自分の幸せを考えてもいいだろうに?



「もう、逃げない相手なんだから。素直になりなよ?」


「…………そう言うお前は、いいのか?」


「僕? 僕は……今いないしなぁ」



 他人事じゃなしに、本当に。


 カイルと同じくらい社交界に出ないからってのもあるけど、本当にいないんだよね。



「…………アイリーンは、いいのか?」


「! 気づいて」



 奥底に眠らせてたのを、まさか朴念仁だと思ってた相手に気づかれてるなんて。



「構われるのに、いやと思っていない相手なら。そう言う事だろう?」


「…………まったく。僕も他人事じゃないよね」



 けど、冒険者として訓練を積んでいた期間も合わせて8年間。


 ほとんど構ってやれなかった、あのご令嬢に。


 僕は、何をしてやればいいのか正直わからない。


 身分差がそうあるわけじゃないけれど。ユーカ達よりはだいぶマシな方だ。



「…………俺よりは、近しい相手だろう? あと、俺伝にこれが来た」



 カイルは、懐から女性が使う魔法鳥用のピンクの便箋を取り出し、僕に押し付けるようにして渡した。


 仕方なく受け取って、開けば。





『カイルお兄様へ



 レクターお兄様に会わせてくださいまし!



 わたくし、もう限界ですわ!




 アイリーン』





 たった数行の、短い想い。


 彼女らしいな、と僕は思わず目頭が熱くなってきた。




「時期も悪くない。お前を無理にでも俺の近侍にすれば、身分差も釣り合う。子爵の位も継ぐ覚悟があれば、迎えに行け」


「…………先に、君の方じゃないの?」


「アイリーンがこれだけ駄々をこねたら、抑えられるのはお前だけだろう?」


「…………そうだ、ね」



 あのお転婆お嬢様が、言うことを聞くかどうかもあやしいけれど。


 カイルの発言も無視出来ないから、もういい加減素直になるしかないかも。



「なんなら、マックスとフィーガスの祝いも兼ねて茶会を開けばいい。そこでなら、遠慮はしなくてもいいだろう?」


「君の口からそう出るとは」


「俺のは……明日にならねばどうともいかんからな」


「うん」



 これだけすらすらと提案出来るくらいにまで、自分の気持ちには気づけたんだろうけど。


 明日来られる国王陛下(姫様の父親)がどう対処するかまでは、気持ちも何もかも打ち明けられない。


 だから、自分の事よりまず周囲から。


 全く、食えない主人だ。


また明日!

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