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4-3.過去とこれからの道

今日はもう少し長めですノ


重複している箇所はスルーしてくださって大丈夫ですノ


「私は赤ん坊の頃、ホムラ皇国の……ある孤児院の前に捨てられてたんです」



 この国じゃない、遠い遠い国の一つ。


 マザー達に後から聞かされた話によると、ある雷雨が酷かった明け方、礼拝堂前に籠ごと置いていかれてたようだ。


 手紙もなく、名前の木札があるのみ。あどけない笑顔が印象的だった、ほんの乳飲み子だったとか。


 それくらいの赤ん坊が孤児院に捨てられるのは然程珍しくないので、マザー達は特に気にもせず私を14歳まで育ててくれた。



「そして成人する前には、きちんとひとり立ちしようと思って冒険者資格の試験を受けたんです。カイル様やメイミーさん、レクター先生はご存知でしょうが、適性は『錬金術師』でした。けど、このパンを錬成出来るまでの特性なんてなくて……役立たずな結果で」



 独り立ち出来るように、冒険者資格を得てから最初はソロ……そして、カイルキア様に助けられる直前までは脱退させられたパーティーで、ずっと雑用を。


 パーティーでの出来事はメイミーさんとレクター先生にはお聞かせしたけれど、こんな大勢の前で話すのは初めて。


 何度か深呼吸を挟んだが、途中ロティが抱きついて落ち着かせてくれたのもあり、なんとか脱退のとこまでは話せた。



「抜けさせられた直後の……カイル様に助けていただく前に…………ロティが出てくるきっかけになった『前世の記憶』のほとんどを思い出しました。あとは、カイル様達のご存知の通りです」



幸福の錬金術(ハッピークッキング)』の詳細については、まだチュートリアルを完了したばかりなので、異能(ギフト)以外の事はほとんどわかっていない。


 けど、それ以外についてはほとんど話したと思う。


 ただ、カイルキア様には引かれていると言うより、少し考え込む姿勢になったのが気になっちゃう。


 彼が発言するのを皆さんも待ってるのか、誰も私に話しかけて来なかった。



「……後天性の異能(ギフト)の発動。しかし、異世界からの転生者であれば、わからなくもないな?」


あれ(・・)もそんな感じだったし、納得はいくよね?」



 もっと深刻な話になるかと思いきや、意外にもすんなりと受け入れられてしまった。


 事前にレクター先生がお伝えされたにしても、冷静と言うより、まるで既に知っている感じ。


 レクター先生が続けた言葉にも、その前例があるように思えた。



「あの、レクター先生」


「うん? ああ、僕が言ったのが気になった?」


「はい。どなたか、『転生者』が?」


「そうそう。いるんだよ、一人。僕とカイルの幼馴染みで、元パーティーのメンバー。この間言った、精霊と契約してる奴がそれなんだ」


「……へー」



 漫画や小説のあるあるネタによるけれど、大抵は同じ世界とかだったりもするけれど。


 会えるかな、と聞こうとしたら、カイルキア様がすっごく大きなため息を吐かれた。



「……あれと引き合わせるのは…………いや、巡り合わせとも言うが」


「か、カイル……様?」


「まー、大丈夫だと思うよ。カイル?」


「ええ。マックス殿は個性的過ぎる御人ですが、きっとチャロナくんの良き味方になると思いますよ」


「「あれが、なければですけど……」」



 何やら、その幼馴染みさんは私よりも訳ありみたいです。


 それと男性だと判明したが、気の合う人であれば色々聞いてみたい。パンも是非食べていただきたいし、同じ世界出身なら話題も弾むだろうから。



「……あれは、放っておいても勝手に来るからいいだろう。だが、契約可能な精霊まで出現とは珍しい」


『ロティは〜意識を持った案内役でふ!』


「……お前は、疑似妖精か?」


『しょー思ってくださって大丈夫でふぅ』


「マックスのとは、また別個体と言うわけか。先程の、レベルアップとやらにロティも関係するのか?」


『あい! 学習能力のレベル次第で、どんどん変わってくでふ!』



 ロティも質問された事に、自信を持って返事していく。


 見た目は1歳児でも、さすがはAI精霊。



 しかし、ロティもレベルアップしていくごとに、色々変わるのは前もって聞いてたけど……どんな風に変わるんだろう?


 ひょっとして、最終的には私くらいかもっと大人の姿に? どちらにしても楽しみだけど。



「了解した。ならば、二人は表面上は我が屋敷の調理人として採用。本質的には、レクターの進言通りに……チャロナ達のパンを基軸として、レシピ改善へ動いてもらう。それでいいか?」


「はい!」


『でっふぅ!』



 私達がしっかりと頷くと、カイルキア様も含めて皆さんが拍手をしてくださった。



『ようこそ、ローザリオン公爵家へ』



 拍手だけでなく、改めて歓迎の言葉をかけてもらえたのだ。



(嬉しい……すっごく嬉しいっ!)



 日本で生きてきた時はともかく、現世で初めて留まって良いと許可をいただけた場所。


 本当は……自分から働きたいと申し出るつもりではいたんだけど、まさか迎えられる側になるなんて思わなかったから。



『でっふでふ〜っ!』



 やったーとか声を上げようとしたら、抱っこしてたロティが、何故かきゃっきゃと声を上げて宙に浮かんだ。



『良かったでふ、良かったでふぅ! ご主人様の居場所……決まっちぇ』



 あ、この後の展開が、付き合いが短くても予想しやすい。


 エイマーさんやシェトラスさんも予想出来たのか、少しおろおろし出したから。


 なので、私はロティに手を伸ばしたけど、もう遅かった。



『ふ……ふぇ、ふぇええええええええんんん! よ、よがっだでふぅうううう!』



 案の定、ロティは号泣してしまい、屋敷中に響くんじゃないかってくらいの大声を放った。


 さすがのカイルキア様も思わず両手で耳を塞いでいたけれど、ロティの大声はモンスターの咆哮並みに酷かったと後日教えてくれた。


 そのロティはあまりの嬉しさだったのか私がすぐに抱っこしても泣き止まず、しばらく耳も塞げずにいい子いい子するしかありませんでした。








 *・*・*









 部屋については万が一の事があってはいけないからと使用人の大部屋ではなく、お借りしてる三階の客室の一つを借りる事になった。


 それと、あの後少し食休みを取ってから、何故かカイルキア様の前でもう一度パン作りを披露する事に。


 一度、『幸福の錬金術(ハッピークッキング)』のひと通りの手順を見ておきたいと言われたので、また同じ工程だったがバターロールを生産した。


 ただ一点違うのは、ロティにお願いして出来立てのレシピ集からレシピを紙に起こしてもらい、それを見ながらの見学だった。



(ほんと、コピー機から出すってくらいすんなり出てくるし……)



 字は当然、この世界の共通言語だったが『カラーコピー』までやらかすとは思わなかった。


 当然、カイルキア様もだけど一緒だったレクター先生達にも問い詰められ、コピーや印刷の大まかな流れを前世の聞きかじり程度の知識でなんとか説明した。


 それ以降は、出来上がるまで静かに見学してくださいました、が。



『……やはり、製造技術はこの世界以上に突飛し過ぎて、すぐには世に広められない。まずは、この屋敷を中心に少しずつ浸透させていけるように対策をしよう』



 あと、例の幼馴染みさん以外にも、一人だけ食べさせたいお貴族様がいらっしゃるので近々呼ぶとも決定。


 それまでは、毎日屋敷の使用人さん達をメインにパンを作って欲しいと頼まれました。雇用だから、お給金もちゃんといただけるんだって!



「髪、もうちょっときちんと乾かそうか?」


『あ〜い』



 今は夕飯も終えて、お風呂も入って来てからロティとまたこの部屋へ戻って来てる。


 今日まではとりあえず客人扱いにしておくことになったので、自分の作ったパン以外はシェトラスさん達の豪勢な夕食をロティとこの部屋でいただいた。


 パンの御礼に是非振舞わせてくれと、メイミーさんからシェトラスさん達の言伝を伺ったので、味わってゆっくり食べました。


 手作りワインを贅沢に使ったビーフストロガノフは、本当に絶品だった!



「えーと……生活魔法久々に使うから……たしか、『乾燥(ドライ)』っ」


『ふわっ』



 詠唱を唱えると、まだ少し濡れていたロティの髪がふんわりと風に煽られ、くるくると髪を巻き込むように回っていくと数秒で風は消えた。


 完全に髪が落ち着いてから触ってみると、しっかり乾いててふんわふわのさらっさらに。


 魔法もだけど、貴族御用達並みの泡あわシャンプーのお陰だ。あとリンスも。私も自分の髪に同じ魔法を施せば、同じとはいかないがそれなりにさらっさら。


 錬金術師だったからじゃなく、微量でも魔力があれば庶民でも扱える簡単な魔法。


 今までは大したことないって思ってたけど、異世界ならではの常識が特典の一つと思えば、パンにもっと使えるかも。



「ロティ、明日からのためにチュートリアルの残りやっとこ?」


『あいでふぅ!』



 夕飯用に作ったバターロールやほかの付け合わせなどの製造で経験値のPTもいっぱい稼げて、レベルアップもそこそこ出来た。


 時間短縮(クイック)にはまだ届かなかったが、他にも機能はレシピ集以外手に入った。


 明日からの仕事に役立てるよう、今のうちに整理と予習はしなくっちゃ!



『ステータス〜〜オープン!』



 ロティがぱぱんと手を叩けば、今日見て来た中で一番大きなステータス画面が部屋の真ん中に出て来た。


 多分、高校の黒板サイズくらいあるんじゃないかってくらい。


 それでもこの部屋はまだまだスペース的に余裕があるから、私とロティはベッドから降りてそちらの前に立つ事にした。






 ◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯





幸福の錬金術(ハッピークッキング)




《所有者》チャロナ=マンシェリー(16)



《レベル》3(次までは、残り500PT)



《ナビレベル》2(次までは、残り30000PT》

[スタミナ]ただ今満タン(200/200)



技能(スキル)

・無限∞収納棚


・ナビ変換(チェンジ)(レベル3)

 →ホイッパー三種追加[NEW]

 →オーブンに発酵機能追加[NEW]



 ・タイマーセット同時機能[NEW]



技能(スキル)UP各種の レベルアップPT(コロン)は、現在3000コロン所持




《特典》

・レシピ集データノート

〈バターロール〉〈コカトリスの卵サラダ〉〈いちごジャム〉〈カッテージチーズ〉





 ◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯◉◯






「…………本当に、ゲーム画面みたい……」



 多分だけど、この世界にも鑑定士って職業(ジョブ)があるから、彼らが見ようと思えば見れるかもしれない。


 そう思ってロティに聞くと、首を大きく横に振られてしまった。



『ご主人様だけの異能(ギフト)でふ! しょー簡単には見られまちぇん!』


異能(ギフト)だから?」


『しょの中でも、たった一人しか持てないんでふ! レベル、ランクかんけーなく、個人情報はロティが管理してまふのであんちんしてくだしゃい!』


「んーと、つまりプライバシー侵害されないように……鑑定遮断とかをロティが頑張ってくれてる?」


『しょのとーりでふ!』



 それはすっごくありがたい。


 生産職でも、ランクがSSとかって神級じゃないにしたって、こんな異常な異能(ギフト)の情報が見放題になったら大変じゃ済まなくなるから。


 そこは一旦置いといて、新しく追加された機能が気になった。



「普通のPTと別なのが、ある……?」



 コロンって可愛い単位だけど、多いのか少ないのか3000コロン。


 一定のレベルまでは私やロティのレベルに合わせて引き上げるようだが、そこを超えると自分で調整が出来るらしい。


 すごい、便利過ぎる!



「このコロンってPT……って、今の機能を試運転させてからでも使って大丈夫?」


『大丈夫でふ!』


「じゃぁ……」



 そこからは、ぽんぽんぽんっとロティに変換(チェンジ)や機能の使い方をナビしてもらい、ひと通り実験。


 試した後はロティと話し合い、1時間後くらいにはコロンの使い道を決めた。



「タイマーに1000使って、ナビ変換(チェンジ)には2000っと!」



 このPTの振り分け方は、スマホの操作みたくステータス画面の文字をタップして、機能の名前をクリックすると数字のスロットが薄っすら出てくるのでそこをいじって決定するだけ。



【コロン振り分け完了。



 タイマーセット同時機能(レベル3までUP)



 ナビ変換(チェンジ)(レベル5までUP)




 ナビ変換(チェンジ)の一定レベル到達特典により、変換(チェンジ)とは別に銀製器具(シルバーアイテム)を付与します


 ナビが変換(チェンジ)しても使用出来ますのでご安心を】




 決定すると、当然のように天の声が響いてきた。



 そして、私の少し上の方からぽんって音が聞こえたんで顔を上げると、薄緑のシャボン玉に包まれた革製の工具箱みたいなのが浮かんでた。



『あれが、銀製器具(シルバーアイテム)でふぅ』



 それをロティがちょいちょい、って指を動かせばゆっくりと降りてきた。


 結構大きかったんで、床に降ろしてもらってから留め具を外して中身を確認してみたら!



「なにこれなにこれ! 日本のパンに必要な道具ばっかりだよぉ〜〜!」



 嬉し過ぎて、思わず大声を出しちゃったけど無理もなかったもの。


 全部確認しても、使いやすそうでお高い純銀製の道具ばっかり。


 これが私専用って思えないくらいだ。



「ロティ、早く寝て明日は早く起きよっ! パンの仕込みは早朝が相場だもの!」


『でふぅ!』



 道具をロティじゃなく、技能(スキル)の無限∞収納棚に仕舞い込んでステータスは消してもらってから、魔灯(あかり)を消してベッドに彼女と潜った。


 シェトラスさんからの許可はもらってるので、明け方前に仕込むのは大丈夫。



「おやすみ、ロティ」


『おやしゅみなさいでふ、ご主人様ぁ』



 今日はお互いにいっぱい働いたから、目を閉じると揃ってすぐに夢に旅立ってしまった。


では、また明日


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