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36-4.風呂場で打ち合わせ(フィーガス視点)

今日は男風呂








 *・*・*(フィーガス視点)






 結局は、この屋敷に泊まる事になったのはいい。


 まあ、いつものように転移で帰るくらいで良かったんだが。


 カレリアが、出来れば嬢ちゃん(姫様)ともう少し話したい、とねだるのもわかる。


 カレーパンもだが、あれだけ美味いパン料理を馳走になって、デザートまで美味すぎて虜になってしまったから。おまけに料理は破滅的に苦手なのに、教わりたいと言う始末。


 かく言う俺も、仕事はカイルよかだいぶ落ち着いたので、もう少し飲み明かしたい気持ちはあった。


 なのに、だ。



「なんで健全的に全員で風呂入る事になんだよ!?」


「「うるさい」」


「静かにしなさいよ、まったくー」



 カイルの私室で飲み明かすかと思いきや。


 問答無用で、酔いつぶれて寝るかと思ってたマックスに引きずられるようにして連れて来られた大浴場。


 ここはカイル自身の屋敷なので、カイル専用のとこもあるにはあるが大人数には不向きっつーわけで。


 だもんで、屋敷の主と側仕えとほとんど変わりない、乳兄弟込みで。


 なぜか、今風呂に入らされた。



「まだ飲み明かしてーだろ!」


「お前と違って、俺はまだ仕事があるし今日はもう寝かせてもらう。話が出来るとしてもここで我慢しろ」


「なんでだよ!」



 たしかに、俺も全部は終わってねーが今日くらいいいじゃんかよ。



「あたしを理由に飲み明かすとかは、ナシよ〜? 今日は酔い潰される気は無いもの〜」


「ちっ」



 言い訳にしようとした張本人に、口出しされては意味もない。


 仕方なく、雑に体とかを洗ってから湯船に浸かった。


 ちなみに、シュラ様は仕事があるからとっくに転移で帰っちまった。



「てか、ユーカ。結構飲んでたのに平気? 先輩に運ばれてったけど、あれわざと?」


「んふふ〜〜。そうそう、ちょっとイチャイチャしてたわ」


「…………報告はいいが、その口調はやめろ」


「なんでよ?」



 奴ら……マックスは前世女だったから、ほんとに女みてーに丁寧に洗ってくが。ほか二人は俺と同じように適当に洗ってからこっちにやってきた。


 野郎の体見て面白くもねーが、ユーシェンシー伯爵に幼少期から鍛えられまくったマックスはともかく、帰省後も鍛錬を怠らないカイルまで筋肉が結構ついている。


 俺も魔法師メインだったとは言え、そんな幼馴染み達を持ってたからこっちが年上でも自然と鍛錬に付き合わされたんで、ある程度の戦闘力はあっても。二人に比べちゃ非力と変わらない。


 特に、マックスは異名がつくほどの高ランク冒険者だしな?



「直したと思っていたが、何故また戻す」


「あれは、今のとこエイマー限定よん。あんたらには今まで通りにするわ。中身は、結局あたし(・・・ )だもの。否定しないでくれる?」


「……………………はぁ」


「カイル、ユーカもこれには寒気するって言ってたもんね?」


「俺りゃ、どっちでもいーぞ」



 別に公私混同し過ぎてる訳でもねーし、口調を変えたとこでも同じ中身(野郎)に変わりはない。


 まあ、それすら受け入れたエイマー(義妹(になる予定))にゃ、ちぃっとばっかし感心はするがな。


 こいつが経営してる店の連中もだが、世間的に言う女男よりも男らしい見た目をしてるのに。


 中身を知った上で想いを寄せられるなんて、稀有で済まないだろう。


 それを、あいつは自然と受け入れてた。



「それこそ、口調以上に見た目が似合わない連中とか。あたしの店にごまんといるでしょ? 慣れるために久々に行く?」


「行かん」


「即答かよ。ま、俺もやだな」



 ミュファンとかはまだいいが、結局は全員男。


 打ち合わせっつー理由がない限り、行きたいとも思わない。



「あ、そ。……そうだった。あたしのことよりも、チーちゃん。姫様の事だけど、シュィリンからの報告ってシュラから聞いた?」


「……いや?」


「なんのこと?」


「シュィリンっつーと、お前んとこの店の?」


「そうそう、ミュファンの次に人気ある……なんで? この間先に帰った時に、てっきりカイルには最低伝えたと思ってたのに」


「……詳しく話せ」



 これには、口調についてどうのこうの言うカイルはいなかった。


 マックスも、気持ちを切り替えたのか男口調になって話し始めた。



「シュィリンが、実は姫様と孤児院時代だけだが幼馴染みだったんだ。期間は一年だが」


「「「一年??」」」


「ある依頼で、リュシアからホムラに交換留学っつー形で行かされたらしい。そこで当然のように仲良くなって、彼女の方もだがずっと覚えてたそうだ」


「それを……今まで俺達に黙ってたと?」


「姫様が会って思い出さなきゃ、この間の孤児院来訪の時に誰も知る事はなかったぜ」


「……おい。誰の差し金で口止めされたんだ?」



 それなら、リュシアの先代院長や今の院長も。


 知ってておかしくはないのに、何故捜索名義で動いてた俺達に、一切の情報が回って来なかったのか。


 聞くに、シュィリンが共にいた時期は捜索が始まる数年前。


 それを知ってたら、戦争が鎮圧した直後、すぐにあの親バカ陛下が使者を送ったはずなのに。



「俺もわかんねーが、形態変化(メタモルフォ)を得意とするセルディアスの使者と名乗ってる野郎らしい。他の詳細はまだ不明点が多いが、姫様の敵ではねーようだ」


「証拠は?」


「明確なもんはねーが、王妃様の言伝を預かってた事は確かだ」


「「言伝??」」


「姫様の名前。訳あって逆に名乗らせてる理由は、守護に繋がるからだと」


「……………………俺もだが、シュラもおそらく聞いたことすら無いぞ?」



 戦争が始まる前、王家によくしてもらってた俺も知らねぇ。


 洗礼名が、守護に繋がる?


 王家とその近親者にしか与えられない名前だが。


 それすらも、何か意味があったのか?



「そこまではシュィリンも知らねーらしい。向こうのマザーが引き取る時に使者の口から伝え聞いたそうだ。彼女は置き去りどころか、逃がされた時に同行してた使者のお陰でホムラに行ったが。あの孤児院を選んだ理由も、セルディアス出身のマザーがいると知ってだろうな」


「…………シュラがこちらに告げなかった理由はおいおいでいいが。リュシアにも一度赴く必要があるな。今の院長のところへ」


「俺も行くぞ」


「僕も」


「メンバー全員でなら、カレリアも連れてこい」


「わーった」



 内容が内容だから、帰ってからのほうがいいだろう。


 それにしても、シュラ様は何故俺よりもカイルにそのことを告げなかったのか?


 ひょうきんでいても、王太子は王太子だから公私混同してないはず。


 もしくは、混乱を避けるためにわざと告げなかったか。


 が、マックスも知ってたからもう遅いが。


 詰めが甘くみせているのも、ひょっとしたらわざとかもしれない。



「んじゃ、難しい話はここまでにして」



 軽く両手を合わせると、マックスはいきなりカイルに詰め寄っていく。



「曖昧に自覚したあんたは、いつチーちゃんに言うんだよ?」


「う」


「は? 義務抜きに姫さんを?」



 なんだその面白い話!



「あ、フィーはまだ知らなかったっけ?」


「ああ。なんだよなんだよ。まだ再会してひと月も経ってねーだろ? あれか? 王妃様と瓜二つだからか?」


「それだけじゃないらしいけどね? 君から見ても、彼女いい子でしょ?」


「ああ。仕事も出来るし、パンも美味い……ああ、胃袋がっつり掴まれたのもあんのか?」


「…………」



 無言は肯定とも言うが、こいつの場合堅物なとこもあるからそうとも限らない。


 俺も迷うことなく奴に近づき、口角が緩みすぎるくらいニヤついてしまった。



「前世の記憶が蘇っても、マックスとは違う気立てのいい女に惚れたのか?」


「あんた、わかってはいたけど失礼ね」


「今はいいだろ? で、どーなんだ?」


「…………まだ、わからん」


「「はぁ??」」


「まだはっきり自覚したわけじゃないらしいから、その辺にしてあげてよ」


「つまんな〜〜い。あたし達の次はあんたの番だと思ってたのに」


「そこのレクターは?」


「それこそ、お見合いさせない限りカイルから離れないわよ?」


「……ユーカ、言い方」



 たしかに、面白くないが俺にも心当たりがあるので下手に強くは言えない。


 俺とカレリア。


 貴族と商家の娘との幼馴染みの関係は、結ばれるまでそれはもう苦労したからだ。



「……ま、あれだ。お前が欲しいと思った時が、言う狙い目だぜ?」


「……欲しい、だと?」


「誰にも渡したくねぇ……もあるが、腕に抱きしめてぇって欲求とかだな」


「…………」



 それを言ってからカイルは少し考え込んだが。


 湯の温度とは違う意味で、頬と耳が赤くなったのを俺は見逃さなかった。



「そう思うんなら、姫様の気持ちもたしかめてから動けよ?」


「……それは」


「あー、フィーガス? チーちゃんもそいつにぞっこんよ。もう両想い」


「…………なら、早く言え!」



 これには我慢出来ずに、思いっきり頭を殴った。

明日は少し番外編です

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