35-3.暴力的なPT数値
今日は夕飯の関係で早めに!
*・*・*
(まだ開始30分も経ってないのに、デッドヒートですわぁ……)
と、現実逃避したかった。
「チャロナ、チャロナ! トマト切れたよ、次どうすればいい??」
「えっと……こっちでピザ焼くので、コンロ横のフライヤーでポテト揚げてもらっていいですか?」
「わかった!」
『ご主人様ぁ〜〜、大丈夫でふか〜〜?』
「あ……うん、多分」
けど、実際は居酒屋とかレストランのバイキングメニューってこうなんだー?、と現実逃避したかった。
でも、発案者は私だし、やるっきゃない状態。
急な参戦者でも、フィルドさんがいてくれて非常に助かった。
シェトラスさんもレイ君も、今さっき戻ってきてくださったので配膳の方をお願いしました。
「三枚一気に焼くよ!」
『でっふぅう!』
「チャロナちゃん、旦那様方もいらしたから追加お願い!」
「は〜〜い!」
けど、カイルキア様達もいらしゃったとなれば、俄然やる気がわいてきた!
恋の力はなんの〜とかあったけど、今ならわかる!
好きな人には、美味しい手料理食べてもらいたいもの!
けど、うつつを抜かしている場合じゃないから仕事はきちんとこなしますとも!
「芋揚がったから、出来上がったのもついでに持ってこうか〜?」
「お願いします!」
いいタイミングでこっちも出来上がったので、ピザカッターでささっと切ってからフィルドさんにお願いする。
彼、どこかの食事処で働いてたのかってくらいに、一度に四枚もお皿を持っていけちゃうのだ。
今日だけの戦力でも、使って使ってと言ってくれるなら有り難く使っちゃう!
その後に、私は三人分の特別メニューを作ります。
「ハーフじゃなくて、クオーター!」
一枚を半分ずつ違うのに分けるのじゃなく、四等分。
それでも、ソースがお互いに混じらないように。半分のところで余った生地を棒状にして引っ付ける。
これをするのは、マヨネーズとトマトソースが一緒くたにならないようにするため。
あとは、四種類になるように具材を乗っけて焼くだけ!
「あ〜〜、これこれ。レストランの匂い!」
『でっふぅう!』
前世で専門学校時代の子達とランチに行った時に食べたのを、見よう見まねで家でも作ったものだ。
これを今から好きな人に食べてもらうなんて……死なないか、私?
「あ、そうだ。ロティ」
『にゅ?』
「ピザのPTとかすごいじゃない? あとで、このピザの小さいの作って一緒に食べよ? もうすぐレベル21だし」
『でっふでっふぅ! 食べるでふ!』
またPTの法則が変わっちゃったから、このピザでも油断は禁物です。
パーティーじゃ、まだポテトとサラダしかわざと食べていないけど。こんな四種類いっぺんじゃいくらになるか見当もつかないもの。
それに、製造はいくらでも作ってるから、1ピース食べただけでも色々加算されるだろうし?
とりあえず、挨拶も兼ねてクォーターシリーズのピザが出来たらロティと一緒に持っていく事に。
「旦那様、シュライゼン様。レクター先生、お待たせしました!」
『ピザでふぅうう!』
一応用意したとは言え、先に残ってるのは食べてたようで。
特に、シュライゼン様は口元にお約束でトマトソースつけていました。
「チャロナぁあああ、美味しすぎるんだぞ。美味しすぎるんだぞ! このピザ、次の孤児院行く時にダメかい!?」
「わ、わかりました! それよりも、ピザ落としますから離れてください!」
「おっと、それはいけない!」
「うわー、何なに? 他のと違うねー?」
フライドポテトをパクパク召し上がられてたカイルキア様とレクター先生がいらっしゃるテーブルに置けば。
何故か当然のように、他の皆さんまで集まってきて。
あとで注文されても仕方ないかと思いながら説明することにした。
「これは一人前なので、生地は小さめですが。その分、色んな味を楽しめるように四種類にしてあります」
マルゲリータ。
ミックス。
ツナマヨコーン。
マヨソースは油ものなので気をつければ混ざりにくい。
なので、片面にうまく塗れば大丈夫。
ピザカッターで、それぞれ二枚分の八等分にすれば出来上がり。
「では、どうぞお召し上がりください」
「「「いただきます」」」
それぞれ違う種類を手にして、男の人らしく豪快にひと口!
「出来立てはうまいんだぞ! チーズの伸び具合もだが、生地もモチモチしてて端もカリッとしてて。これは酒が進む!」
「賛同はするが、豪快に飲むな。レクターの介抱は今日ばかりあてにするな」
「あっはは。僕も飲んじゃうしね〜?」
「ぶーぶー、気をつけるんだぞ」
「だが、チャロナ。これは美味い」
「あ、ありがとうございます!」
真顔でも美味しいと言ってくれたから、嬉しい。
嬉し過ぎてにやけてしまわないか心配だったけど。
どうにかバレてないのか、カイルキア様の方も特ににこりともしなかった。
なので、一礼してから今度はロティとの分を作りにいこうとしたら。
「チーちゃん、マジで美味しいわ!」
とここで、悠花さんが私とロティの方にやってきた。
エイマーさんは、なにやらフィーガスさんとカレリアさんとお話し中みたい。
「お話一緒にしなくていいの?」
「カレリアのお願いよん。将来の義妹になる相手だから、改めて挨拶したいんだって」
「なーる?」
『にゅー』
部外者じゃないけど、女性同士のお話中なら離れるのも仕方ないかな?
フィーガスさんがいるのは、どうやら補足説明のためらしい。
「ってか。さっきから見てたけど、あんたほとんど食べてないじゃないの? 作る側だから遠慮してんの?」
「じ、じつは……」
そう言えば、悠花さんにはまだ伝えていなかったので、PTの大幅な変動についてこっそり耳打ちする事に。
「……………………それは、由々しき事態だわね」
おお、いけないと思いつつも、真剣な表情がカッコいいと思ってしまった。
けど、真剣に考えてくれてるので、私も真剣に答えなくちゃ。
「だから、今こっそりロティと自分の分作って食べようと思って」
「けど、かなり作ったでしょ? PT相当くるんじゃなぁい?」
「節目っぽいとこはきたけど……まさか、ね?」
『にゅー、次は30までないと思いまふ』
「「ほっ」」
今のところ、経験値になるPTは万単位になってはいるけど。
レベル20の今から加算されても大丈夫な、はず。
だから、多分大丈夫と思って、悠花さんと別れて厨房に戻り。
シェトラスさんに一言断ってから個室でちっちゃめのクオーターピザを食べたら。
【PTを付与します。
『シンプルなマルゲリータピザ』
『まろやかツナマヨコーンピザ』
『やみつきソーセージとトマトソースのピザ』
『色々クォーターシリーズピザ』
・製造各3枚=各5000PT
→クオーターピザのみ1枚10000PT
・食事『クオーターピザ』1枚=7000PT
レベルUP!
→92000PT獲得により、レベル29に!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと6870PT
】
「あ、危なかったぁ〜〜…………!」
『でっふでっふぅ!』
天の声のアナウンス自体は短くても、レベルアップにかかった時間は少し長く。
あと少しのところで、レベル30になるとこだったけど。今のうちにロティに聞いておこう。
この後食べる、例のタルトタタンできっとレベルアップするだろうから。
「ロティ、次のレベルアップだと何が付いてくるの?」
『うにゅ……わきゃってりゅのは、ロティのナビレベルと選択でふ』
「…………選択??」
『進化レベルの分岐点なんでふ』
それ以上のことは、ロティもレベルアップしてからじゃないとわからないそうだ。
とりあえず、シェトラスさんだけにはもう一度レベルアップの旨を伝えると。
「デザートをお出しした後に、また個室で食べなさい。それだけ大掛かりな事態になれば、知らない人達には不思議がられるで済まないし」
「はい」
『でっふ』
なので、私のお腹がこなれてからデザートのタルトタタンの仕上げに取り掛かったのだ。
では、また明日〜!