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魔物使いの少女  作者: つい
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人間宣言

 

 ダンさんと探索を始めてから約十分。


 い、言えねぇ……


 すでに何度も口を開いているのだが、お口金魚になるだけで全く言葉が紡げない。


 どうしよう。このままだと探索時間が終わってしまう………………なぁんてね!



 直前になって言えなくなるなんて、そんなの想定済み!しっかりとこうなった時の対処法を用意してある。うんうんわたしはやっぱ天才だな!


 その秘策とはズバリ、みんな大好き『5秒ルール』だ!


 その名の通り心の中で5秒数える。数え終わったらそのまま即実行するというものだ。


 私が言葉に詰まってしまうのは色々と考えてしまうからだ。第一声はどうしようとか、どんな反応をされるだろうとか。


 その点この『5秒ルール』はそんな色々を考える前に行動することになる。つまりこの状況を打開できるということだ!


 最初は私も半信半疑だったけど、既に現実世界で試してみて効果があるのは確認済み!コンビニ店員さんにしっかりと「ビニール袋要りません」といえたのだ!


 つまり、今回は残念ながら言えませんでした……なんてオチはない!やったね大勝利!


 というわけでレッツトライ!!



 5、4、3、2、1、……


「あの……」



 刹那、凄まじい轟音。丁度窓の外に見えたビルが崩れていく。


「……気を付けて進むとしよう。床が抜けるかもしれん」


 あーこれ完全に私の声かき消されてるねこん畜生。


 しまった。声の大きさは考えてなかった。……いやビルの崩壊よりも大声出すってそれ普通のニンゲンでも無理でしょ。



 完全に出鼻をくじかれた。……でも今回の私は覚悟が違う。この程度のことではめげない!しょげない!泣いちゃダメ!よーし私頑張る!


 5、4、3、2、1……


『全員無事か!?』


 まさに私が声を出そうとしたその瞬間、タケシさんから連絡が入る。さっきのビルの崩壊の音を聞いて全員の安否確認をしている。さすがリーダー。


 ……またタイミング逃した。




 それからも私は何度か挑戦した。しかしそのたびに失敗する。なんで?この短時間に色々起こりすぎじゃない?


 これはもはや私の人間宣言を許さないという何か絶対的な力が働いている気がする。



 ……良いだろう。そっちがその気なら私だって全力で挑んでやる。



 それからさらに数回。素晴らしいタイミングで邪魔が入ったり、ダンさんに聞こえていなかったりということが続く。それでも私は諦めなかった。


 そしてついに



 5、4、3、2、1……



「あの……」



 邪魔……ナシ。


 環境音……ナシ。


 声の大きさ……ヨシ。


 うん?これダンさんに届いたんジャマイカ!?


 何か周囲をきょろきょろと見まわしている。そしてついに。



 ダンさんと目が合う。




 はいこれきました勝ちました。ありがとうございます。



「今の声……ハナ……か?」


 ハッキリと頷く。ええ、そうです。私です。



「人間の言葉……喋れるのか」



 やっぱりバカにしてるよね?アルク曰く本人たちはマジのガチの本気で信じてるみたいだから悪気はないんだろうけど……なんだかなぁ。



「喋れる」



 さて困った。私は当たり前だが、人間の言葉をしゃべることができる。そしてこれも当たり前だが会話はできない。



 今回の目標は私が人間であることをみんなに知ってもらうことだ。そのためにはここで気の利いた一言でも言って笑いを取り、今後適当な世間話をしながら探索していくのが望ましい。


 しかしどうだろう。


 何も、何も言葉が出てこないのである。



 そしてダンさんは『ハナ=魔物』とかいうあり得ない冗談を真面目に信じる人だ。短い単語だけを喋って黙りこくっていると……


「アルクに教えてもらったのか?」



 いやそうはならんやろ……なってんだよなぁ。



 こういう解釈になってしまうことは一応想定済み。そしてこの話を聞いたらアルクにすっごい笑われることも容易に想像できる。それは何とかして避けたい。



 だがしかし、何度も言うが言葉が出ないのである。



 私が悩みに悩み、もうどうにでもなーれって感じで適当な言葉を発しようとしたその時。


『敵発見』


 アルクから連絡が入った。



「行くぞ」



 ダンさんはそう言って廊下を進みはじめた。



 ……これは目標達成ってことでいいんだろうか?今ジェスチャーなかったし。



 まあ、いいか。



 敵発見といってもアルクは目がいいからまだ距離はあるはずだ。


 達成といっていいのかわからないが一応私の目標は終わった!ここからは気持ちを切り替えて勝利に貢献しよう!






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― 新着の感想 ―
[良い点] しゃべったあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
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