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魔物使いの少女  作者: つい
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侵略者

 ゲームにログインすると運営からメッセージが二つ届いている。内容はサッカー大会準優勝のアイテムについてだった。


 お金や回復アイテム等、あったら便利な一般アイテムがそれなりの数貰えるみたい。アイテムなんてあんまり使わないから正直いらないけど。


 もう一つのメッセージに目を通すと、それは新ダンジョンの解放を告げるメッセージだった。


 東西南北それぞれに、超高難度ダンジョンが追加されたという。


 東に樹海、西に巨大火山、南に海底神殿、そして北に魔王城。正確な位置情報は書かれていないため、場所の特定にまだ時間がかかるだろう。しかし、ネットの特定班は超優秀だからなぁ。


 魔王城の場所が公になれば強いプレイヤーが魔王城に殺到することになる。私が自由に魔王城内を闊歩できるのもそろそろおわりかな。


 私がそんなことを思いながら少し寂しい気持ちになっていると、魔王様から連絡が入る。


「ハナよ、元気か?」

「まあ、普通かな。何か用?」

「実は少し頼みたいことがあってな……詳しい話はこっちでしたいのだが、来れるか?」


 私が了解と伝えると目の前に某ドアが出現する。


 師匠とネルちゃんを連れていく。


 ゴブリンさんと姫ちゃんは忙しいのでお城で待機、ジオさんは巨人族長に就任した影響で、北城ではなく集落で暮らしている。


 一体何の用だろうか?


 私は少しドキドキしながらドアをくぐった。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けるとそこには魔王様とサシさんと、……門番さんとその弟さん?


「おお、来たなハナよ!」


 相変わらず豪快に笑う魔王様に軽く頭を下げる


「実はな……」

「魔王様、説明は私たちが」


 魔王様が口を開きかけたところで門番さんが慌てて口を開き、咳ばらいを一つしてから話し始める。


「実は……」


 話を要約すると、故郷のリザードマンの住処が得体のしれない連中によって侵略されようとしてるため、防衛に力を貸してほしいということである。


「得体のしれない侵略者って何?」


 私が素朴な疑問をぶつけると今度は弟さんの方が口を開く。


「私たちリザードマンは東の樹海の深くに城を構えています。森の秩序を守っており、森にすむ生物をすべて把握しています。ですがここ最近、見かけない魔物が発見されるようになりまして、つい先日見回りの者が森の中で宣戦布告の手紙を受け取ったのです」


 門番さんが鎧の隙間に手を突っ込んでその手紙を私に渡してくれる。


 恐る恐るその手紙を開いて見ると


 ーーーーーーーーーーーーーー


 ハッジーメマスィッテェ!!!


 ワァタシータチ!アナタチヲタオシマスゥー!


 アシタムーカイマース!


 タノシーミ二ニシルブプレ!!


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 なんだこの変な手紙。すっげー変な手紙。読みにくいな。手紙……タケシさん……裏切者……うっ、頭が……!


「この手紙を受け取ったのは昨日なので、今日こいつらが攻めてくることになっています」


 淡々という弟さん。それ結構ピンチじゃない?


「いいよ! 防衛手伝うよ! 早速行こう、どのドア?」


 今攻められているかもしれないと思うそわそわしてしまい、一刻も早く向かいたい気持ちでいっぱいになる。


「すまんなハナ、実はまだドアが開通してないのだ」


 魔王様が申し訳なさそうに言う。……普通そうだよね。ヤバい私文明の利器に慣れすぎていた。反省します。


 ネルちゃんで直接向かうこととなり、門番さんたちが道案内してくれるという。


「そういえば二人は名前なんて言うの」


 今後も門番さん、門番さんの弟さんというのちょっと長いので名前を尋ねると


「俺はギンだ。ギンと呼んでくれ」

「僕はゲンです。僕も同じくゲンと呼んでください」


 門番さんがギン、で門番さんの弟さんがゲンね。


 早速二人の案内で、ネルちゃんは東を目指す。道中下にたくさんのプレイヤーを見つけた。みんな新ダンジョン探しを頑張っているのだろうか。


 私はぼんやりとプレイヤー集団を眺めながら、ふと気づく。


 東の高難度ダンジョンって樹海だったよね?もしかして私たち今そこ目指してる?


 途端にいやな汗が噴き出してくる。


 え?高難度ってどんくらい?あれ?もしかしてヤバい?


 不安に一人慌てる私だったが、今更引き返そうといえる空気ではない。それに赤の他人ならともかく、この二人は十分知り合いといえる。見捨てるのは後味悪すぎる。


 まあネルちゃんもいるし、門番さんやその仲間たちも味方なのだ。何とかなるだろう。


 先のことを心配しても仕方がないので覚悟を決めて、たまに少し揺らいだりして。そんなこんなをしていたらいつの間にか眼下には広大な樹海が広がっていた。


「城には上空から入ることができない。ここらで降りてくれ」


 ギンがそう言うのでネルちゃんに降りてもらって、そこからは徒歩移動となる。


 どこを向いても景色は変わり映えせず、さっきからギン、ゲンの後ろをついて歩いて行っている。話によると巨人族の集落と同様に間違えた道を選ぶと入り口に戻されるらしい。巨人族の集落と違うのはその長さだ。あの霧の道とは比べ物にならないくらい長い。実はループしてるんじゃないかと疑いたくなるような長さだ。


 無心で着いていくこといっぱい分。ついに道が開け始め、目の前に立派なお城が見えた。


 そこはとっても幻想的な場所だった。今までは緑一色で鬱蒼としていたが、ここだけはぽっかりと空間が開いており、桜が生い茂り、透き通った水に橋が架かっている。絵にかいたような美しい日本の風景って感じだ。


 まずはお殿様にご挨拶をということで城内に入り、階段を上っていく。


「何だがハナ嬉しそうだな?」


 師匠がいつもと違う私の様子に気付いてそう言ってくる。


 まあ日本人なので何となくね。


 ネルちゃんも興味津々といった感じであっちこっちを見まわしている。なんか修学旅行思いだすなぁ。……学生時代を思い出したら涙出てきた。


 私が一人で勝手にダメージを受けている間に殿様の間に到着したようだ。ギンが大声で要件を襖の前で叫び、中から返事を待つ。


 しかし返事が返ってこない。三十秒を過ぎたところで流石に不安になり、襖を開けた。すると


「敵襲じゃ!! かかれかかれ!」


 鎧兜を付けたリザードマンが剣を私たちに向け叫んでくる。いやあのちょっと?もしかしてもう手遅れ?それとも私たちが罠にはめられた?


 すかさずギンとゲンが声をそろえて自分たちだと声を上げると、攻撃の手は止まった。


「なんだ、お前たちだったか。てっきり敵の襲撃かと思ったわい」


 そういって刀をしまい、お茶目に笑う完全武装のお殿様。もぉー、笑えないゾ☆


 改めて事情説明。そしてどうもこんにちはとあいさつを済ませる。


「いやーこれは失礼した!まさか……」



 と言った感じで謝罪をしてくれるお殿様。


 謝罪もそこそこにさっそく本題に入るよう、私から話をシフトしていこう思ったその時。


「殿ー! 殿ー!」


 一人(一匹?)のリザードマンが部屋に転がり込んできた。


「何事じゃ!?」

「こ、これを……」


 そう言って手紙を差し出してくる。


 殿様がそれを開いたので、私ものぞき込んでみる。



 ーーーーーーーー


 ミナサンオゲンキデスカ?ワタシタチハゲンキデース!


 トツゼンデスガワタシタチハヘイワシュギナンデース!


 デスノデハナシアイデケッチャクヲツケマツゲ!


 テンプシタチズノバショニキテキテシルブプレ!




 ツイシン


 ワナトカナーンニモナイデース!ヒトリデブキハモタズニシルブプレ!


 ーーーーーーーーー


 お、ちょっとは日本語うまくなってるじゃん。ってそうじゃない。


 流れる沈黙。



「奴らは平和主義なのか! わっはっは! 心配して損したわい! ふむふむ、ここに武器を持たないで一人で行けばいいんじゃな!」





 罠だろ!!!!!





 その場にいた全員の声が重なった。



「わ、罠じゃと? おぬしらには見えんのか、ここにしっかり罠は無いと書いてあるじゃろが!」


 何このお殿様、純粋すぎるでしょ……


「とにかく! 誰が何といおうと儂は一人で行くからな!」


 そういって、さっそく添付されていた地図を片手に部屋を出て行ってしまった。


「殿は無駄に頑固なので……こうなったら尾行しましょう」


 ゲンがそう言う。


 それ賛成。絶対完璧に間違いなく100%確実に罠だからね。



 戦闘は避けられない。でも自然豊かなところだから、ネルちゃんの炎も迂闊に使えない。……ゴブリンさんたちを連れてくるべきだったかな……


 やたら寄り道の多い殿様を尾行しながら、私はそんなことを思った。

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