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魔物使いの少女  作者: つい
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私の戦闘力低すぎ!?

「ん、ここは...?」

「あ、師匠起きた」

「ああ、私はさっき……申し訳ない」

「ん? 別にいいよ」

「師匠さんごめんなさい。私もハナさんを乗せて飛べることに、少々舞い上がってしまいまして……」

「ああ、分かっている」


 ネルちゃんの中で私はどんな存在なんだろうか? まあいいか。


「さて、師匠も起きたことだし! 予定通りレベ上げ始めよう!」

「うむ、任せろ!」

「はい!」


 まあ、特に意気込む私と師匠は完全にお荷物なんだけどね。気にしたら負け負け。


「うーん、ここでもネルちゃんは強すぎるみたいだね?」

「そうですね……」


 周りの草原に、魔物は一切居ない。みんな恐れをなして逃げてしまった。


「やっぱり私は……お邪魔ですね」

「いやいや! そんなことないからね? むしろ私と師匠だけだとイモムシくらいしか倒せないからね!」

「主人よ、自慢げに言うことではないぞ……」

「でもこのままじゃ戦闘が出来ませんね……」

「うーん……あ、そうだ!」





「師匠、右前方にいるあのシカ狩るよ」

「了解だ」


『ネルちゃんやばくなったらフォローよろしく! あ、でも自分の戦闘優先してね? できる時でいいから』

『はい、お任せください!』


 ネルちゃんは今、はるか上空から魔物を見つけて狩っている。


 ネルちゃん曰く、本気で飛べば逃げられても余裕で追いつけるらしい。なのでネルちゃんは空で自由に敵を見つけてレベル上げ。私たちは下で獲物を見つけて狩る。やばくなったらネルちゃんが暇な時に限り、空から火炎が降り注ぐ。


「名付けて『晴れときどき火炎作戦』!」

「……異常気象が過ぎるな」


 ちなみにネルちゃんは結構高度をとっており、私たちからも少しだけ離れている。なので威圧がこっちに影響することはない。


「行くよ、師匠!」


 私と師匠は同時に駆け出す。私も走ることくらいはできるようになった。もう踊ることはないだろう。


 あるれぇー? シカさんでっっっか! 角まで入れると三メートルくらいはある。単純な高さだけなら、ネルちゃんに匹敵するぞ? たくましい筋肉がビキビキなってるし。


 私たちに気づいたシカさんが頭を下げて、ツノを突き出す迎撃態勢をとる。


 私は完全にお飾りになっていた両手斧を振りかぶり、力一杯振り下ろす。斧と角は激しくぶつかり合い、斧が弾かれて空を舞う。っすよねー。


 師匠は角(笑)を突き出し突撃するも、相手にもされていない。うん、ネルちゃんいない私たちは弱すぎるな。


 しかし、流石にシカの角も無傷とはいかなかったようで、一部折れていた。


 やった! ちょっとは攻撃できた!


 おそらく、全プレイヤー探してもシカの角を少し折ってここまで喜べるのは私だけだろう。でも、それくらい私には嬉しいことだった。


「貴様……よくも自慢の角を……」


 ガチギレだよ。どーしよ?


 ネルちゃんにヘルプを求める? いやいや、頼ってばっかりは絶対に良くない。師匠……は無理だ。さっきからシカさんのたくましい脚に張り付いて頭突きしてるけど、ガン無視されてる。頑張って師匠。


 私も武器飛ばされちゃったし……あ、でも。


 私は、丁度近くに落ちてきたシカさんの角を拾う。ナニコレめちゃくちゃ硬くて重い。


 長さ三十センチくらいでこれって……シカさん頭重くないのかな?


「汚らしい手で触れるな!!」


 よっぽど頭にきたのか一直線に突っ込んでくる。しかし、残念ながら私に反応して避けるステータスはないので私が出来た行動は一つ。


 角をしっかり持って前に突き出す。


 一瞬の激痛の後、私は吹き飛ばされる。しかし、死んではいなかった。


 シカは真正面から突っ込んできた。シカの角はそれぞれ外側にうねるように伸びているので、私は丁度ツノとツノの間の、何も無い空間にいた。そして私の突き出した角はそのままシカの頭を突いたようだ。凄いミラクル。シカはフラフラして倒れた。こちらも死んではいない。


「主人!」

「大丈夫、それよりもシカにトドメ、さして……!」


 全然、大丈夫じゃない。泣きそうなくらい痛い。というかちょっと涙出てきた。このゲームは恐ろしく感覚がリアルだ。良く生きてるなぁ私。


 うっわ。師匠、シカさんをめちゃくちゃグロい殺し方してる。木の棒やら小石で目玉を集中攻撃している。まあ師匠の力じゃ、目玉くらいしかダメージ与えられないしね。いや、シカさんあれでも死んでないよ。……あっちも良く生きてるな。


「大丈夫ですか!?」


 ここで救世主、ネルちゃん登場。ほぼ泣いてる私と酷い有様のシカを見て大体察したらしい。


「……!」


 うわ、こっちもなぜかキレてる!?


 ネルちゃんの口から火炎がとめどなく溢れ、シカさんは跡形もなく焼けてしまった。ナムナム。


「すいません……やっぱり私も付いているべきでした。」

「別に、ダイジョウブ、だから」


 痛いのと涙でまともに喋れない。ちょっと恥ずかしいけどそんなこと言ってられないくらい痛い。え、ゲームだよねこれ? リアルに影響出てないよね? こっちで死んだらリアルに死ぬとか、普通に嫌だよ? って、だとしたら私はもう死んでるか。既に狼に殺されてたわ。


「本当に申し訳ない、私は完全に無力だった。無抵抗のシカ一匹さえ殺せない有様で……」

「そんなこと、ないから、ありがとう」


 一応ステータス画面って念じて画面を開くと、骨折という状態異常になっていた。体力も2しか残ってない……いやむしろそんなに残ってるのか……。骨折はアイテムを使うか、その部位を動かさないで数分待機すると治るようだ。


「ちょっとだけ、休むね」

「誰も近寄らせません」

「私も無力ながら協力しよう」


 ヤバイ、師匠がめちゃくちゃ傷ついてる。


 涙を流して倒れる少女と、周りに殺気を発しながら周囲を警戒するウサギとドラゴン。

 

 シカ一匹倒しただけで毎回こんな醜態晒すの恥ずかしすぎるんですけど?


 私は恥ずかしさと痛みに必死に耐えながら回復を待った。

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