第二試合
モニターに表示されたトーナメント表を凝視する。
いったん両目をぎゅっと閉じて、開いて凝視する。
片目でそーっと見る。
半目で見る。瞳孔を大きく開いて見る。目をよーく擦ってから見る。
どんな見方をしても、表示される文字は変わらない。
ジダデアVSカイアス
カイアスとはダンさんのギルド名だ。私の予想通り、メサリアさんのギルドは負けてしまったようだ。
「さて次の試合は城ギルドリーグ決勝です! ジダデアVSカイアス! どちらも一回戦では敵チームに大差をつけて勝利しています! 果たしてどちらが勝つのか!? 全く予想ができません!!」
司会者の言葉に会場が盛り上がるが、私の気分は盛り下がる。
「どうしたハナよ? ずいぶんと元気がないように見えるが」
師匠がそう私に話しかけてくる
「いやだって……次の相手……」
大きなモニターに第一試合の見所さんをまとめた動画が再生されている。
そこには
豪雨のように降り注ぐ魔法をその身に受けきり、ボールを止めるダンさん。
一歩も動かず、矢だけでボールを操作し、敵の妨害魔法を潜り抜けゴールを決めるアルク。
こんなんどうしようもないのですが……
「さあ試合会場の準備ができました! 城ギルド決勝リーグ張り切っていきましょう!!」
いやあの私の心の準備はまだなんですけど。
そんな思いむなしく、私の体は光に包まれた
ーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると目の前にダンさんがいる。
第一試合同様に、私たちは向かい合って横一列に並んでいた。
「さあいよいよ決勝戦! 先攻は……ジダデアチームだ!!」
そう司会者が言うが、私はその言葉に耳を傾ける余裕がない。なぜなら
いや人多くね?
第一試合とは比べ物にならないくらい観客席に人がいる。
「……ナさん! ハナさん! 大丈夫ですか?」
ネルちゃんに呼ばれて我に返る。
「あ、ごめん。多分大丈夫」
「私たちが先攻です! 頑張りましょう!」
そういうとネルちゃんは力強く空に飛び立って行った。
立ち位置は第一試合と同じ感じで、ただし今回は結構シュートされると思うのでジオさんがゴールキーパーに戻っている。
前線組のデラさんがゴブリンさんにパスして試合開始。
すると早速アルクの矢が飛んでくる。
ゴブリンさんは三回ほど躱すが、遂に捉えらえ、足元からボールが弾かれた。
すかさず姫ちゃんが念力で抑えようとするが、またもアルクの矢が飛んでくる。
姫ちゃんの念力ではボールを高速で動かすことはできないし、力を加えられるとすぐに解けてしまう。
結果としてボールはまた弾かれる。
……全然攻められない。
ボールは味方側に弾かれるので敵にボールを取られる心配はない。しかしこれでは攻めることもできない。
結果としてボールはコロコロ下がってきて、自陣後方に待機する私の目の前まで転がってきた。
うーん、どうしようか?
私がそう頭を悩ませながらゆっくりボールに近づく。すると
「おいハナ! 急げ! 敵来てるぞ!」
狼さんが突然そう言ってこちらに走ってくる。
そして、私の足がまさにボールに触れようとしたその瞬間、突如としてボールが一人でに動き始める。
何もなかった空間がぐにゃりと歪み、一人のプレイヤーが現れた。その恰好は、どこからどう見てもジャパニーズ忍者だ。
アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?……ってふざけてる場合じゃない!これ結構ヤバいんじゃ?
かろうじて狼さんのタックルが決まり、飛んでったボールを師匠が回収して前線のデラさんまでパスする。
何とか助かった……にしても忍者なんていたのか……。
よくよく考えたら私はアルクとダンさんばかりに目がいって、他の敵チームのメンバーをだれ一人知らない。タケシさんの所が特殊ギルドなだけで、普通の城ギルドはギルドメンバーにレア職持ちがいてもなんらおかしくはない。
つまり警戒すべきはアルクとダンさんだけではないということだ。
はい解散!閉廷!人生オワタ!……ってやりたいけど、チーム最弱の私が真っ先に諦めるのは流石に自分でもどうかと思う。
せめて一回は役に立たないと。今のところ私何にも役に立ってない。え?それはいつものこと?……うん。
とりあえず気持ちを切り替えて、まずはどうやったらアルクに邪魔されずに攻められるか。それを考えよう。
プレイで貢献はできない。私はチームの司令塔になるべく頭を必死に回転させた。