第一試合③
私たちが得点を決めたので、ボールは敵チームからの試合再開となる。
さて、どうやってとめるかな……。
つまりはあの黒い煙の中に入ったり、攻撃を打ち込んだりしないで敵を止めればいい。
敵はタケシさんを主体に、常に数人の魔法使いが杖を構えながらゆっくり前進中。いつでもあの煙を発生させられる状態だ。
ジオさんの巨大化して止めるやり方はもう通用しないだろう。さっきはとっさのことで敵の判断が遅れたが、冷静に考えれば的がでかいため力を吸収し放題だ。
それに巨大化すればジオさんのステータスも強くなる。吸収される量が増え、敵の強化が捗ってしまう。
「とりあえず姫ちゃん念力で、 ほかの人は姫ちゃんを聖水から守って!」
そう私が指示した直後に前線組は姫ちゃんを囲むように陣取り、敵の足元からボールが浮かび上がり始めた。
敵の聖水をネルちゃんが代わりに受ける。姫ちゃん以外は聖水が弱点とかないので問題ない。
残り時間全部これで乗り切れるかな……流石に無理かな?
私がそう思考しているうちに動きがある。
姫ちゃんの念力が切れたのだ。
姫ちゃんの念力は万能じゃない。
操作可能範囲があるること、物体を視認できないと発動できない。この二つが欠点だ。
もしこの二つの制限がなければ、一点取った時点でボールを宇宙まで飛ばし、姫ちゃんは巨大化したジオさんの掌の中で試合終了まで過ごすっていう作戦を実行していた。これするとブーイングの嵐で私のメンタルが死にそうだけど。
姫ちゃんを守るには囲む必要があるけど、そうすると姫ちゃんの視界からボールを隠してしまう可能性がある。特にうちのチームはほぼ全員体がでかいから。
かといって包囲を解いたら守るのが大変だし……。
そう悩んでいる間にも敵にかなり侵入されてしまった。
仕方ない、かなり脳筋で適当な作戦だけど、もうこれしか思いつかない!
私は覚悟を決めて、装備しているワンピースに少量のⅯPを送った。
すると、タケシさんを囲むように10体のスケルトンが出てくる。
「ああっと! チームジダデアここでスケルトンを召喚! その数10体! これはかなり面倒だ!」
私のチームメンバーはスケルトンも入れて明らかに人数オーバーしているが、特に待ったはかからない。……まあ8人でも参加できた時点で、人数制限緩いのは察しがついてたけどね。
スケルトンを物理や魔法で倒すのは面倒だ。だから一般的な倒し方は聖水や聖魔法を使うこと。
聖魔法は一般職のプレイヤーは覚えられなかったはず。つまりスケルトンを倒すには聖水を使うしかない。でも姫ちゃん用に聖水は大事にしたいはず!
私の思惑通り、タケシさんのドリブルが止まる。ストレージを操作して剣を取り出し、戦い始めた。
よし、姫ちゃん今だ!
念力でボールを奪取、タケシさんたちはそれに気づいたが、スケルトンに邪魔されて聖水を姫ちゃんにかける余裕はない。
よし、なんとかうまくいった!無理やり聖水を消費させようって作戦だったけど、温存したってことは数が心もとないのかな?
残念ながらシュートを外してしまい、得点には繋げられなかったが、とりあえず防衛に成功したのでよしとする。
再び敵ボールから試合再開。
同じようにスケルトンをけしかけるが、今度は5体が砕かれて、突破されてしう。
私が呼ぶスケルトンは低ランクだから仕方がない。
そしてかなり自陣に侵入される。比較的後方に待機していた私から見ても目と鼻の先に敵がいる。
何とか進行を止めようとタケシさんの行く手を……うん、あっさりと突破されたわ。
タケシさん絶対現実でもサッカー部だったでしょ?サッカー部のクラスカースト最上位者はパズ〇ラ、モン〇ト以外ゲームしちゃいけないんだよ?(大暴論)
そしてついにタケシさんがシュートを打つ体制に入り、その足がボールに触れる直前、師匠の必殺脳天揺らしが炸裂した。
そのおかげか狼さんが何とか頭でボールをはじき、難を逃れた。
私と師匠は吸い取る力もないのでガンガン敵に近づいていける。今回私は失敗したけどこの強みを生かすことが多分防衛のカギだ。……弱いを生かすのが強みって変な感じだけど。
狼さんが全力疾走で弾いたボールの所へ向かいラインギリギリで止める。
前線メンバーがおかしいだけで、狼さんの身体能力は高い。前線メンバーがおかしいだけで。
狼さんから師匠にパスがつながり、師匠のパスを私が受け、受け……うん。
師匠のキック力は強い。私が止められるわけない……ごめんて。
奇麗に受け止めそこなったボールは運よくなのか悪くなのか、スケルトンの一体に当たり止まる。衝撃でひび割れが広がり、その子は砕けた。ごめんて。
そのボールを姫ちゃんが念力で回収。しかし敵の防衛メンバーが聖水をかけよう邪魔するので攻撃にはうまくつなげられない。
そうこうしているうちにタケシさんたち攻撃メンバーも戻ってきてしまい、前線は厳しくなる。
「みんな無理して攻めなくていいよ! 私も防衛頑張るし!」
私の指示を聞いた姫ちゃんが念力をやめて、みんなと一緒に下がってくる。
「流石にハナに防衛任せるのは不安すぎるだろ……」
ゴブリンさん?事実でも言っていいことと悪いことがあるよ?
……実際下がってきてくれて少しほっとしたけども……。
「さあ後半戦も残り時間半分となりました! チームジダデアは防衛メインに切り替えたようです! レジスタンスはここから逆転できるのでしょうか!? 勝負は最後まで分かりません!」