表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの少女  作者: つい
85/129

第一試合

 

 目を開けるとそこは部屋だった。でっかいモニターが一つと長机に、椅子が11個。控室ってことだろうか?


 モニターの電源が入り、でかでかとトーナメント表が表示される。


 これは……一般ギルドの表かな?


 ずいぶんと文字が細かくて、かなりのチームが参加しているようだ。


 30秒ほどすると切り替わり、今度は城ギルドのトーナメント表が表示される。



 えーっと、私たちの初戦は……タケシさんのところか。



 とりあえずよかった。無論、楽勝ってことはないだろうけど、アルクたちに勝つよりはよっぽど現実的だね。


 そうしてまた30秒ほどすると画面が切り替わり、試合会場が映し出された。



 ヒッ……こんなに人いるの?私動けないかも……。



 観客席を埋め尽くす、人、人、人……。



 このゲームってこんなに人いたんだ……。普段全く見かけないからびっくりだわ。……見かけないっていうか、見ないようにしてるんだけど……。



 私が人の数に圧倒されていると、カメラが一人の男性プレイヤーに寄り、彼がマイクを持ってルール説明などを始めた。


 まとめると


 全試合は録画され、某動画サイトにアップされる。


 試合中はどんな技を食らっても死ぬことはないが衝撃は伝わる。


 ボールやゴールは壊れない。


 チームを見分けるために参加者は待機室においてあるユニフォームを装備する。


 こんな感じかな。



 ユニフォームって何? 私たちの待機室にそれらしきものはない。


「ちなみに、チームジダデアにはユニフォームがありません! 運営の判断です! なので文句は運営まで!」


 じだであ?なんだその言いにくいチーム……私たちか。


 そういえばそんなギルド名付けたような……?


 ……まあつまり私たちにユニフォームはないってことね。


 確かに必要ないという根拠は分かる。流石にチームメイトとウサギを見間違えたり、チームメイトと大型バス程度の大きさがあるドラゴンを見間違えたりはしないだろう。


 でも……みんなでおそろっちユニフォームとか陽キャっぽくてちょっとあこがれだったな……。


「ハナ、01と協力してキック力増強のアクセサリー持ってきたからそれで我慢しろ」


 そう言ってゴブリンさんが出したのは人数分のミサンガだ。……ん?01さん?……聞き間違いかな。


 師匠やネルちゃんは今人化してるけど、装備品は変身サイズに合わせて変化する便利仕様なので問題ない。


 全員の装備が終わったところで、画面の中の司会者が再び声を上げた。


「それでは早速第一試合行きましょう!」


 参加チームが多いため、様々な試合を同時進行でやるようだ。次々にギルド名が挙げられていく。そして最後に


「えー、最後は今大会の目玉! ジダデアVSレジスタンスです! 城主ギルド同士の対決です!」


 レジスタンス……?あ、タケシさんのギルド名かな?普段聞かないから全然わからん。


「以上が第一試合の組み合わせです! それでは選手の皆さん、間もなく転送が始まりますので準備の方、お願いします!」


 司会者の人がそう言った10秒後、私たちの体が光る。


「まず一勝! みんな頑張ろう!」


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けるとそこはサッカーコートだった。


 すでに私たちは横一列に並んでおり、ネルちゃんと師匠の人化は解けていた。


 そして私の目の前にはタケシさん。


 私はたちはそれぞれ向かい合って横一列に並んでいた。


「それでは先攻後攻を決めます!……先攻はレジスタンスチームです!」


 コイントスが行われ、先攻が向こうになったようだ



 ジオさんはゴールに向かって走り、私たちは適当にばらける。



「それでは……試合、始め!!」



 高らかにホイッスルが鳴り響き、タケシさんたちがボールをける。


 走りこんでくる気配はなく、まずは慎重にこっちの様子を見てるようだ。



 フッ、甘いな!



 不意にボールが敵チームの足元を離れて、フワフワと浮かぶ。



「な……!?」



 タケシさんが驚き、茫然としている間にボールはプカプカ浮き上がっていき、ネルちゃんがゲットする。



「ナイス姫ちゃん! ネルちゃん決めちゃって!!」

「反則だろこんなの!!」



 超次元サッカーだからね、念力使うくらい当たり前。



 ネルちゃんは飛び、プカプカ浮いてるボールを思いっきり尻尾で弾く。さらにボールと一緒に火球を飛ばす。


 あらゆるプレイヤー達を吹き飛ばして、ゴールキーパーさえ吹き飛ばして、ボールはあっさりとゴールネットを揺らした。



「決まったぁぁぁぁ!! 最初に得点を決めたのはジダデアチーム! 開始わずか20秒!」


「姫ちゃん、ネルちゃんナイス!!」


 念話でそう一言伝えて、敵チームに目をやる。……みんな茫然としてるわ。


 ……まあ敵チームには申し訳ないけどもう手加減する気はない。


「みんな! どんどんいこう!」


 念話で皆を鼓舞して、攻めの姿勢でゲームをつ続ける。


 その後も姫ちゃんの念力でボールを奪い


 デラさんの圧倒的パワーによって繰り出される爆速シュート。


 ゴブリンさん、01さん共同開発、バズーカ砲。


 ネルちゃんの一人ドラゴントルネード。


 とりあえずうちのチームは火力がすごい。ぱわーいずちから!


 なので火力も念力もない私と師匠や、ゴールを守るジオさんは暇していた。


「チームジダデア! 猛攻が止まりません! ついに5点目です!」


 あ、何?もう5も取ったの?……目指せ33ー4!


 師匠と二人、味方達の背中を眺めているときに事件は起きた。



 いつものように姫ちゃんが念力でボールを奪う。


 そこに敵チームの一人が近づいてくる。


 でもまあ、姫ちゃんは透過することで物理無効になるから、直接妨害はできない。


 しかし、敵は剣を振るうことはなく、代わりに懐から水を取り出した。


 あ、やべぇ。


 流石に私でも一瞬で察しが付く、あれが聖水であると。


 直に聖水を受けた姫ちゃんの念力が止まり、敵チームにボールを奪取される。


「すみませんハナさん……」

「ドンマイ! 気にしないで!」


 しかし、その後も執拗な姫ちゃん攻撃は続く。


 姫ちゃんが距離を取ろうとすると、今度は風魔法の風に乗せて聖水をデリバリーしてきやがる。


 ……流石城ギルドメンバー、単純にゲームがうまい。


 姫ちゃんでボールが奪えなくなったことにより、だんだんと敵チームがボールを持っている時間が増えてきた。……というかこちらがほぼ奪えなくなってきた。


 ネルちゃんはシュートに向いてるけど敵からボールを奪うのが苦手だ。体が大きすぎて細かく動けない。デラさんも同様、細かい動きが苦手のようだ。


 唯一我らがゴブリンさんの器用さは健在で、巧みにボールを奪うこともあった。しかし、それは確実ではない。



 でもまあ、だからどうということはないんだけどね。「ボールを奪う」→「敵の妨害」に作戦変更すれば十分ネルちゃんが活躍できる。細かい動きは必要ない。上空から敵チームに向けて火炎ブレスするだけだ。


 デラさんも敵がボールを持っている持っていないに関わらず、片っ端から蹴散らしていく。現実サッカーならともかく、このサッカーではルール上何も問題ない。


 それに万が一敵にシュートを打たれたとしても、ジオさんを突破する火力が出せるとは思えない。


 結局この完璧な布陣で前半戦終了ホイッスルが鳴るまで、敵がシュートを打つことはなかった。


 ちなみにこちらはゴブリンさんが4回ほど敵からボールを奪い、それをデラさんもしくは上空のネルちゃんにパスするという流れで3点の追加点を得ていた。


 ゴブリンさんって安定感があるというか……何気にこのチームで一番スペック高い。


 現在8-0。


 前半の私や師匠ジオさんはというと、念話で談笑しあっていた。ジオさんはともかく、私や師匠が前線なんて行こうものなら、巻き込まれて吹っ飛ばされて場外ホームランだからね。


 でも完全に遊んでいたわけではなくて、私は定期的に皆にバフをかけていたし、師匠は姫ちゃんと一緒に敵の妨害に励んでいた。


「あのハナさん……これゴールキーパー要りますか? 後半僕も前線に行っても……」

「うーん……いいよ! 暇するくらいなら、みんな楽しめた方がいいしね!」


 というわけで後半はただでさえオーバー気味の火力にジオさん追加!


 勝ったな風呂入ってくる!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ