血祭り
で、とりあえず8人全員集合。
「ハナよ、ポジションはどうすのだ?」
「うーん、よくわかんないからジオさんがゴールキーパーで他は適当で」
「おいハナ、俺はまだ参加するとは言ってないが」
狼さんがなんか言ってるけど無視。っていうか……
「狼さんもしかして進化した?」
なんか前より大きくなっているような……
「お前を倒したらなぜか経験値が大量に入ったからな」
あー、私一応城主プレイヤーだし勇者倒してるからかな?プレイヤーとしてのランクが結構高いのかもしれない。
ネルちゃんがギロリと狼さんをにらみつける。コラコラ、チームになるんだから仲良くしなさい。
「多分みんな現段階では実力がバラバラだと思う。私はまだオフサイド理解してないし……というわけで試合まで日はあるから全員同じレベルになれるまで頑張ろう!」
おー!とみんなで声を合わせて、さっそく特訓が始まった。
サッカーをよく知らない私と狼さんの、サッカー知らない組はサッカーのルール確認から。師匠に教わる。
既にルールを知ってる組はボールと友達になる訓練だ。
「オフサイドってノーサイド的な?……全然違う?」
「ふむ、違うな」
「ハナさん見てください! 私ドラゴントルネードが一人でできます!」
「おいハナ、ルールは何でもありなんだよな? じゃあこの発明品試してみても……」
「ハナ様、この程度のボールなら念力で浮かせることができます!」
「あのハナさん、手を巨大化すると前が見えないんですけど」
ちょっと皆さん?ツッコミが追い付かないので自重して?
「おいハナ、俺はどうやってドリブルすれば」
「チッ、もっと丈夫なボールはねぇのか? 蹴ったらまた割れちまったよ」
狼さんは頑張って?
デラさんはもっとボールと仲良くして?
そんなこんなで特訓の日々が過ぎ、気づけば試合の前日になっていた。
「みんな、いよいよ試合は明日! これまでのつらい練習を思い出して、自分に自信を持って臨もう!」
なんか監督っぽいことを言ってみる。この手の激励、実際に聞いたことないからわからんけど。
ーーーーーーーーーーーーーーー
試合当日、人数は11人に満たなくてもチーム登録をすることができた。デラさんや狼さんはそもそも私の使役魔物ではないんだけど、しっかりチームメンバーとして登録されている。即席チーム扱いなのかな?まあ、参加できるならなんでもいいか。
エントリーチームは始まりの町にて待機なのだが、この待機時間が私にとってなかなかに地獄だ。
そう、私たちはすごく目立つ。
特にゴブリンさんと狼さんとデラさん。でけぇ。
「あれ……ゴブリンか……!?」
「あの狼って……近くの森に出るやつ……だよね?」
「おい、あの鬼って前回イベントの……」
うわー!もう早くイベント始まって!こんな風になるなら前みたいに、遅刻ギリギリで来ればよかった!
イベント開始を待つ人で噴水広場はにぎわっていたが、私たちの周りだけポカンと空いている。
いいもん、寂しくないもん。魔物に囲まれてれば幸せだもん!
そう自分に言い聞かせ、進みの遅い時計をにらんでいると不意に声がかけられる。
「ハナ」
声のした方に顔を向けるとそこにはアルクがいた。
「アルク! 久しぶり」
「……なんで念話?」
「気にしないで!」
周りにこれだけ人がいるのに声を発するとか無理だから!
「ハナ……そのメンバーで出るの?」
「そうだけど?」
「……ズルい」
いやいやそっちのダンさんもかなりズルいからね!?
そんなやり取りをしていると、さらに声が投げかけられる。
「アルク、と……ハナか、ずいぶんと分かりやすいな」
あ、タケシさん
「ハナ! あなたの秘密はアルクから聞いたわ! 容赦しないわよ!」
メサリアさん? 秘密って……?
アルクに目を向けると
「実は……」
んんんんん!!?私を魔物だと勘違いしてる!?
「なんでそんな嘘ついたの!?」
「まさか信じるとは思わなくて……」
なんてこった……面と向かって訂正?そんなこと私にできるわけない。
いつか何とかして誤解を解かなくては……。
「その鬼……ハナの使役魔物か?……っと人間の言葉は通じないんだったな」
最後に現れたのはダンさん。お前も勘違い野郎か。
ちょっと待って?影響力のある城主プレイヤー二人に勘違いされたままってヤバくない?絶対あることないこと私の変な噂がインターネットの海で生まれる気がするんだけど。
「ちなみにタケシも勘違いしてる」
「あーもう! アルク? 今すぐ訂正して?」
「もうイベント始まるから無理」
そう言われて時計を見るとイベント開始10秒前。
「10秒あれば言えるでしょ!? 一言違うっていうだけじゃん!?」
必死にアルクに念話で呼びかける
「……分かった」
イベント開始3秒前
「みんな、ハナから伝言」
イベント開始1秒前
「全員血祭りにあげてやるって」
おま……お、おま、お前ぇぇぇぇぇ!!!!
心の中で大絶叫して、私たちの体は光に包まれていった。