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魔物使いの少女  作者: つい
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試練

 

 とりあえずネルちゃんに速度アップ、ジオさんに筋力アップの強化魔法をかける。正直焼け石に水って感じだけど、ないよりはあった方がいいだろう。


 そしたら作戦スタート。ネルちゃんは爆発威力を最大まで高めた火球を放つ。


「ハハハハッ! どこに撃っている? 目くらましのつもりか?」


 それらは全て地面に命中し、盛大な土煙を上げた。


 大丈夫、これでいい。

 砂煙に紛れたジオさんが、相手の右足にタックルを決める。対格差は大きいが、流石にジオさんが全身の力を使えば足の一本くらい押すことができた。


 ジリジリと、確実に敵巨人の足がずり下がっていく。


「このっ! 離せ! うおっ!?」


 そして敵巨人は不意にバランスを崩し、尻もちをついた。


 そう、敵巨人の周りには、たくさんのクレーターができていた。ネルちゃんの火球でさっき作ったものだ。


 そしてまだ作戦は終わってない。


 クレータに足を取られて尻もちをついた敵の頭は、さっきに比べるとずいぶんと低いところにある。


 すかさずネルちゃんが再び爆発重視の火球を発射。


「クソッ! 目が」


 さっきは頭の位置が高すぎて砂煙が届かなかったが、今度は十分届く距離だ。首尾よく敵の視界を防ぐことに成功する。


 さあここからは私たちの反撃だ。


 ジオさんの飛び蹴りがもろに敵巨人の顔面に入り、敵巨人はあお向けに倒れる。


 ジオさんが追撃をしようと敵巨人の顔に向け、こぶしを振りかぶる。


 すると突然、敵巨人が叫んだ。


「降参だ! 俺の負けだ!」


 そう言って巨人化を解く。


 それを聞いてジオさんの完全体モードが解除される。


「次は覚えてろよ!」


 そんなありきたりなセリフを言って敵巨人軍は去っていった。


 場には一瞬静寂が訪れ、次の瞬間巨人たちの雄叫びが響き渡った。


 私たちは勝ったのだ。


「やったねジオさん!」

「はい……ですが少し妙なんですよね」

「妙って……何が?」

「敵が降参を宣言したことです。ご存じの通り、巨人族は力を開放すると敵の殲滅まで戦い続けます。僕は敵の降参を聞き、敵の消滅と判断したため力の完全開放から戻ることができました。相手は降参したということは完全に力を出し切ってなかったということです。本気を出さないことに何のメリットが……」


 そうブツブツと言いながら考え込んでしまった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ジオ、それにハナ。二人ともよくやってくれた」


 族長はわたしたちにそう言った。


「まさか倒してしまうとは……せいぜい5分も粘れば御の字と思っていたが」


 ん?今族長さらっと不思議なこと言わなかった?


「やっぱり……」


 ジオさんが溜息をついてそうつぶやく。


「えっと……どういうこと? いまだに話が見えないんだけど」

「今回の襲撃は族長が仕組んだものだったってことです」

「いかにも! 仲のいい集落の連中にお願いしてな」


 なるほど……え、なんで!?


「族長、なぜですか? 目的を教えてください」

「ふむ、二人とも合格じゃ」

「合格……?いったい何が」

「これはおぬしたち二人に向けたテストだったのだ。ハナに対しては今後協力関係を築くにふさわしいかどうか。そしてジオ、お前に対しては……次期族長にふさわしいかどうか」

「次期……族長?」

「そうだ。そして二人とも合格だ。ハナよこれを受け取るがいい」


 私の目の前に黄色い光が収束し、一つの小さなメダルとなる。


「それは巨人族との友情のあかしだ」


 私がそれを手に取ると


「称号<巨人の友達>を獲得しました」


 そんなシステムメッセージが頭の中に響いた。


「そしてジオよ、私は族長を退く。そして今日からお前がこの集落の族長となるのだ!」


 ジオさんの前には骨のオブジェがついた首飾りが現れる。


「受け取れ。今後はこの集落を頼んだぞ」

「……はい」


 ジオさんは慎重に手を伸ばし、首飾りを手に取って首を通した。


 すると


 真っ赤な光が首飾りを中心に発生し、ジオさんの体に吸収されていく。


「これでジオもかなり巨人の力が強まっただろう。ふむ、流石私の息子だ。お前もかなり巨大化できるようだな。まあ私にはまだまだ遠く及ばないがな!」

「……いつか絶対追い抜きます」


 そうジオさんが言って、親子で仲良く笑いあう。


 うまく仲直り(?)できたようでよかった。


「おっと、もうそろそろ時間か」

「時間? なんの?」


 私がそう尋ねると、族長さんはふと優しい顔になり、静かで、落ち着いた声音で告げた。


「お別れだ……私も随分長生きしたからな」

「え? ちょっと待ってよ! そんな急に」

「ハナよ、ジオを頼んだぞ。そしてジオよ、……強くなれ。何よりも強く。この集落の命運は全てお前にかかっているのだからな。頼んだぞ。……それではさらばだ」


 肌色だった族長の顔がだんだんと灰色に変わっていく。そして、族長は巨大な石の彫刻へと変わり果てた。


「そんな……こんな、こんなのってないよ……」


 私でさえこれだけ悲しいのだ。ジオさんはどれだけ悲しいのだろうか?私には想像もできない。


 せめて族長との約束を守ろう。巨人族と今後も仲良く、助け合っていこう。それが私にできることだ。


 ジオさんは茫然と族長を見つめている。そして、小声で呟いた




「行ってきます……パパ」





「ん? おいジオ、今パパと言ったか???言ったな?」



 突然、彫刻と化したはずの族長の顔が動き出した。


 目はカット見開き、口はこの上ないほど緩み切っている。



「ついに! ついについについに言ってくれたな! ジオよ! もう一回頼む! もう一回パパといってみてくれ! さんはいっ!!」

「えーと……なんで生き返って?」

「ん? そもそも死ぬなど一言も言っておらんが? 巨人状態を維持し続けるのは大変だ、数年に一度休眠に入るのだ。そしたらジオがパパとかいうからな、コレはもう休眠してる場合じゃないぞ! なあジオ?」

「ハナさん行きましょう」

「そうだね」

「ちょっと待て、だからパパを一人にしないでくれぇ! おーい! おーーい!!」


 洞窟から出ると、新たな族長誕生を祝うパーティーが開かれた。やけに準備がいいなと思ったけど、きっとジオさんがいないうちにみんなで打ち合わせでもしたたんだろうね。ほんとに心臓に悪いテストだったけど、結果は無事に合格できたし、巨人族とは仲良くなれたしまあいいか。


 ここ最近は色々ほんとに私頑張った!今日くらいは陽気にパーチーと洒落込んでも罰は当たらないだろう。


 せっかくなのでゴブリンさんと姫ちゃんにも魔王城経由で来てもらって、ついでに魔王城の面々もついてきて、みんなで明け方までワイワイ楽しく騒いだ。



 ああ、今が本当に楽しいっ!!!!





 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方そのころ、洞窟内の族長


「え、嘘? 私だけ仲間外れ? おーいジオ? ハナ? あっ(察し)」








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