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魔物使いの少女  作者: つい
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昔話

 

「ねえジオさん、なんで族長は体が山に埋まっているの?」


 ふと気になってジオさんに聞いてみる。


 過去に悪さして封印でもされたのだろうか?ああ見えて昔はやんちゃだったのかもしれない。


「ああ、そのことですか。僕も母から聞いたのですが、どうやら……」



 ジオさんの話をまとめると



 ジオさんが生まれる。

 ↓

 よーし!パパ張り切ってかっこいいとこ見せちゃうぞー!(省エネモード解除の完全体になる)

 ↓

 バク転。

 ↓

 着地と同時に大地が割れ、膝くらいまで埋まる。

 ↓

 動けない巨人族とかただの的でしかないので、土を盛り体を隠す。族長山の完成。

 ↓

 元々集落は別のところにあったが、族長が動けないので族長山に引っ越し←今ここ



 これはひどい。



「父は巨人族の中でも異常に大きいんです。バク転時の衝撃は、様々な生物や地形に深刻なダメージを与えました」


 なんて迷惑なおっさんなんだ……


「ジオさんは族長さんのこと嫌いなの?」

「嫌いというか……鬱陶しいんです。いつまでも僕を子ども扱いして……」


 ジオさんが顔をそむけながらそう言い、私は全てを察する。



 ああ思春期だこれ。



 てっきり親子仲でも悪いのかと思ったけどなんだ思春期少年ってだけか。安心した。



「それよりもハナさん、さっそく契約お願いしてもいいですか?」

「あ、うん」



 スキルを発動させて、ジオさんと契約成功。名前はジオさんのままでいいかな。


「ありがとうございます」


 これで正式にジオさんが仲間になった。戦力の大幅増強だ。


「それでこれからどうします? いったん魔王城に戻りますか?」


 ネルちゃんがそう言って人化を解いて翼を広げる。


「うーん……そうだね、ゴブリンさんたちも心配だし、今日は帰って観光はまた今度みんなでこようか」



 そう決めて、みんなでネルちゃんの背中に乗ろうとしたその時だった。



 平和な集落に突然、鐘の音が鋭く響き渡る。


 何事?


「この音は……敵襲の合図です!」


 敵という単語に少し体が硬くなる。


「ネルちゃん! 前言撤回! 戦うよ!」

「はい!」


 鐘の音を聞いた人々が一斉に同じ方向に走っていくので私たちもそれに続く。


 そして、その先で私が見たものは衝撃的なものだった。


 何百という人々が、次々に体を巨大化させていく。男も女も関係なく、全員が巨人となって戦闘に向けて準備をする。


 村人全員が戦闘員。これが巨人族の戦い方なのだ。


「ハナさんすみません、僕も行きます」

「気を付けてね!」


 ジオさんも仲間たちのもとに走っていき、やがて巨人に姿を変える。


「ネルちゃん私たちは上から!」

「了解です」


 ネルちゃんの背中に飛び乗り、空高く飛翔する。


「敵襲って……相手は誰なんだろう」


 ニンゲンだろうか?それとも別の魔物か?


 そう思いながら戦地と思わしき場所に目を向けると、お互いに殴り合う巨人族がいた。


 そう、敵襲とは別集落の巨人族のことだったのだ。


 数十メートルの巨人たちがそこかしこで殴り合う様はすさまじい迫力だった。


「ヤバい、見分けがつかない」


 お互いに殴り合う巨人族はどっちが味方でどっちが敵なのか、私には見分けることができない。それに見分けられたとしてもこれだけ密着状態ではネルちゃんの火炎ブレスも使えない。


 そうして私たちが攻めあぐねていること数分、戦場に今までとは明らかに異質なオーラが漂う。


 一気に空気に緊張感が強まり、息苦しい。


 そしてそいつは現れた。



 他の巨人族と比べて、頭一つなんてもんじゃない。圧倒的な巨大さ。


 戦闘の手がすべて止まった。


 その巨人族が、心身を震わす声でいう。


「まさかこんなところに集落を移動させていたとは、おかげずいぶんと探すのに時間がかかったぞ」


 発言から察するに、ライバル集落なんだろうか?


「今すぐアイツを出せ、一対一で勝負をさせろ」


 アイツ……それは間違いなくあの族長のことだろう。しかし、あの人は今動けない。


 静まり返った戦場で、一人の巨人がその巨大な巨人の前に立ちふさがった。



 ジオさんだ



「おい小僧、邪魔だ」


 まるで赤ちゃんと力士の様な、その対格差は凄まじい。


 それでもジオさんは一切臆することなく、にらみつける。



「ほう、いいだろう。まずは貴様から叩き潰してやる」


 獰猛な笑いを浮かべて敵巨人はそういうと、今度は私たちの方を向いた。


「そこのトカゲ共も仲間だろ? まとめてかかってこい」


 なぜか私たちも戦闘への参加が許可された。いやありがたいけど。


 ジオさんが理性を失う本気モードに変わる。そして敵も同様に本気モードに変わる。お互いに体がさらに盛り上がり、顔がさらに醜悪なものへと変化する。


 まずはネルちゃんの火球を様子見に撃つ。直撃はしたが、効いている様子はない。


 敵巨人が右こぶしを振りかぶり、振りぬく。その速度は私から見ても遅い。あたることはなさそうだ。


 そう私が安心した次の瞬間。突風が巻き起こり、ネルちゃんがバランスを崩す。


 私は危ういところで師匠をキャッチしネルちゃんの鱗の出っ張りをつかんだ。


 これはまずい。


 ジオさんの蹴りが相手の右足に入るがびくともしない。


 ここで私の中でこの敵巨人がある人物と重なる。そうダンさんだ。


 圧倒的攻撃力と防御力。ダンさんを巨人化したらまさにこんな感じだろう。


 まあつまり何が言いたいかというと。


 正直この勝負、勝てる気がしない。


 敵のパンチを食らったらネルちゃんであっても一撃で沈む。ジオさんは一発くらいは耐えるかもしれないが、戦闘継続が不可能なダメージを貰うだろう。


「ふん、ちょこまかと逃げてばかりでは勝てないぞ?」


 こちらをあざ笑うかのように、敵巨人がそう言った。


 確かにその通りだ、何か、何か考えないと勝てない。でもどうやったら……。


 その時、今まで沈黙を貫いていた師匠が口を開いた。


「ハナ、ネルロよ、こういうのはどうだ? まず……」

「オッケー!ジオさんにも伝えておくね」

「分かりました」


 流石我がチームのブレインだ。確かにその作戦なら勝利が見える。



 私はジオさんとも作戦を共有するべく、急いで念話をつなげた。



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