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魔物使いの少女  作者: つい
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族長

 

 狼さんがいなくなってから城の自室に戻ると魔王様から念話が届く。


「ハナよ、暇だろ? 今すぐ魔王城に来るといい」


 有無を言わさずそう一方的に告げると目の前に01さん作のどこでもなドアが現れた。


 強引すぎるでしょ……暇だけどさ。


 ゴブリンさんと姫ちゃんは忙しそうなので師匠とネルちゃんを連れてドアを潜った。


「よし、ハナよきたな」


 ドアを潜って直接玉座部屋とは……流石に危機意識低すぎでは?私が勇者を引き連れてたらどうするの?


「ハハハッ! 勇者ならハナ自身が倒してしまったではないか!」


 安定の心読みで豪快に笑飛ばす魔王様。


「で、なんの用?」


 私がそう聞くと


「ああ実はな……ジオがお前に話があると言っておってな」

「そうなんです、ハナさん」


 うわビックリした。ジオさんいたのね。


「ようやくハナさんの仲間になる決心がつきましたか。さあハナさんさっさと契約しましょう」

「ちょっとネルちゃん落ち着いて」

 ネルちゃんがヤレヤレと言った様子でそんなことを言い出すので慌てて止める。


「いや、実はネルロの言っていることに関係しているんだけど……」

「え? ホント?」


 つまりジオさんが仲間になってくれるって事でおk?


「ただ父が……族長が一度ハナさんに挨拶にくるように言ってるんです」


 んんん?つまり娘さんをくださいお父様的なことを私にしろと?


「ハナさんは勇者も倒したし信用できる人だって族長もわかってるはずなんだけど……一回会わせなきゃ契約を許可しないって」

「なるほどすぐにいきましょう。ハナさんをみればあのお爺様もたちまち気に入るでしょう」


 いやあのネルちゃん? なにを根拠に……


「もうすでに通路はつないである」


 魔王様が指さす先には別のどこでもなドアがあった。……ていうか部屋のあちこちに置かれてる。01さんまさか量産化にも成功したの?


「ありがとうございます魔王様。それではハナさん行きましょうか」




 いやあの皆さんなんかテンポ早くないですか?魔王城の滞在時間まだ30秒くらいなんですけど……



 ネルちゃんに背中を押されながら、私はそんなことを思った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けるとそこは濃い霧の中だった。


 気温は少し寒いくらい。ここがジオさんたち巨人族の住処なのかな?


「皆さん迂闊に動かないようにお願いします。ここはかなり標高が高いところなので崖から落ちてしまいます」


 ジオさんがそう言うので私は地蔵のようにぴたりと止まる。まだ死にたくねぇ。


「なんでこんなに霧がすごいの? 標高が高いから?」

「それもありますが……僕たちの村を隠しているんです。ここから分かれ道の多い山道を歩きます。そこで間違った道を選ぶと入り口に戻されてしまいます」


 あ、なんかよくアニメとか漫画で見るやつね。迷いの森とか迷いの霧とか。


 ジオさんを先頭に、みんなで仲良くおててを繋いでピクニック。なお足場を踏み外したら死亡。はぐれたら孤独死の鬼畜コース。


 そうして歩くこと5分ほど、遂にジオさんの足が止まる。


「着きました。あとはまっすぐ進むだけです」


 ようやくついたようだ。当然私は道順なんて覚えてない。まあきっと師匠かネルちゃんが覚えているだろう。


 ジオさんに言われた通りまっすぐ進むとやがて霧が晴れ、そこに村が出現した。


 簡単な木の柵で囲われており、建物は家というよりテントの様なものだ。というかテントだこれ。


 サイズ感も普通でめちゃくちゃでかいわけでもない。


 そういえば巨人族は普段は省エネモードで過ごしてるんだっけ?道行く人もちょっと背が高い人レベルのばかりで、圧倒的巨人感のある人はいない。


「それでは皆さん、族長のもとに案内しますのでついてきてください」


 周りをきょろきょろしながらジオさんについていくと、やがて洞窟の前で止まった。


「この中に族長がいるの?」

「はい、そうです。……あの父上は変な人なんで、気分を害したら申し訳ないです」


 ジオさんが申し訳なさそうに言って、洞窟の中に入っていくので私たちも続く。


「族長、ハナさんを連れてきました」


 洞窟の中は少し進むと巨大なホールのような部屋に出た。学校の体育館くらいはありそう。


 そしてその奥、多くのたいまつに照らされた、巨大な顔。


 そう、顔。




 え?顔?




 ちょっと待って?顔でこのサイズって族長どんだけ大きいの?つまり体はこの山の中に埋まっているということだろうか?え、でも山ってことは数十メートルどころじゃないないだろうし、下手したら数千メートルあることになるんじゃ?


 私が規格外の族長の大きさに困惑していると突然、閉じられていた族長の瞳がパッと開き、ギロリと私を見つめた。


 それだけで私は蛇に睨まれた蛙のように、一歩も動けなくなる。圧がヤベェ。


「ジオよ……」


 心身に響く太鼓の様な声が発せられ、私はさらに体を固くする。そして


「いつもパパと呼べといってるだろー? 恥ずかしがりなんだからもう、しょうがないやつだな!」



 ん?んんんんんんんんん?



「族長、ハナさんが見てますので」

「族長じゃなくてパパと呼べパパと! ほら、さんはい!」

「族長」

「あーもう! お前は可愛い息子だな!!」


 ジオさんが頭を抱えて長い溜息をつきこちらに向き直る。


「これが私たちの集落の族長で、僕の父親です」


 嫌そうにそう紹介した。


「ん? お前がジオの言っていたハナというやつか! ふん! 確かにジオの話の通りいい奴そうではあるが、そう簡単にジオはやれんぞ!」

「あ、ハイ」


 え、おかしい人ってそういう……。これはちょっと予想外すぎる……。


「第一お前はジオの何を知っている? 外面だけで知った気になっているんじゃないのか? ん?」

「あ、ハイ」


 うん、なんかたぶんいいこと言ってるんだけど色々な意味でインパクト強すぎて話が入ってこない。


「そうかそこまで言うのならジオのことを話してやろう。そうだな、まずは可愛い可愛い赤子の時の話からしよう。しかし、話を聞いたからって知った気にはならないことだな。これから話す話をしっかりと受け止めて、自己を見つめなおし、そのうえでそれでもジオに対する気持ちが変わらないのか。それから……」

「父さん、いい加減にして」


 まさにマシンガントークというか、ペラペラ話し出した族長をジオさんが顔を真っ赤にしながら止めた。


「とにかくハナさんはここに連れてきたし、僕はもうハナさんについていくって決めたことだから」


 そうきっぱりと言って族長さんに背を向ける。


「ハナさん行きましょう」


 そう言ってジオさんが洞窟の入り口に戻ろうと歩きだすので私は慌てて後を追う。


「ま、待てジオ! 駆け落ちか!? 許さん、許さんぞ! パパは許さないからな! 置いてかないで! パパを一人にしないでくれぇ!!」


 その声を背に受けながらジオさんの歩みは止まらない。


 ジオさんの表情は見えない。しかし、洞窟のたいまつがジオさんの耳まで真っ赤に照らしていた。







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