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魔物使いの少女  作者: つい
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他界他界

「あれ?なんかメッセージ来てる」


 私がゲームにログインすると、運営からメッセージが来ていた。


 読みたいけど、師匠達との合流が先かな。


 前回は街の端っこでログアウトしたので、すぐに街から出て師匠を呼ぶ。


 昨日はネルちゃんを仲間にした後、予定通りイモムシを狩ってレベルを上げた。そして、レベルアップした時自動的に、新しく『念話』なるものを覚えた。


 簡単に言うと頭の中で会話をするスキルだ(?)。

 

 まあつまり、ここで私が師匠に向けて『師匠ぉぉぉぉぉ!!』って伝えたい!と思うと、師匠に『師匠ぉぉぉぉぉ!!』が直接意識に伝わる……ナニヲイッテンダワカンナイネ?


 これは離れているパーティーメンバーと会話したり、相手に聞かれたくない話をする時に使うようだ。私の場合は契約した魔物と会話が出来る。


 これさえあれば人前で龍語を喋っても変人に見られないね。ハナちゃんの名誉は守られた。良かった良かった。


「主人よ、何事だ!?」


 うわっ、なんか師匠走ってきた。


「いや、別に何事も無いけど……」

「急に、『師匠ぉぉぉぉぉ!!』っと聞こえてきたから焦ったぞ!」

「ああ、ごめん……」

「無事ならいいのだ」


 相変わらず師匠は私に対する忠誠心が高いな? 嬉しいね。


「さっそく楽しそうですね」

「む、ネルロか」


 バッサバッサ翼を降ってネルちゃん降臨。ネルちゃんもログインした時に呼んでおいた。変な念話はとばしてないので、余計な心配はかけてないよ。


「なんの話をしていたのですか?」

「かくかくしかじか」

「なるほど。急にそんな風に呼ばれたら、ビックリしちゃいますよね」

「全く、その通りだ」

「えっと、ごめんなさい? ……これ私が悪いの?」


 今、師匠とネルちゃんの間では言葉が通じている。それは昨日ネルちゃんを仲間にした時に生えてきた魔物使いのスキルのおかげだ。


『共通言語』


 このスキルはその名の通り、共通の言語が話せるスキルだ。


 じゃあ『言語翻訳』いらないじゃん? ……って思うじゃん。そんなことはない。このスキルは制約がある。


 まず、このスキルが使えるのは職業『魔物使い』のプレーヤー本人と、現在使役中かつ、忠誠心が百パーセントの魔物の間でしか使用できない。それに加えて、自分の声が届く範囲にしか効果が通じない。まあ、これは拡声器などを使うと無理矢理距離を伸ばせるみたいだけど。


 『共通言語』に関してはこんな感じ。便利。特にネルちゃんと師匠で会話ができるってのがいいね。


「あ、そうだ! なんか運営からメッセージ来てるんだった」

「恋文か?」

「おめでとうございます!」

「絶対違うから……」


 なんか盛り上がる二人を適当にあしらい、本文に目を通す。


 フムフム。


「お相手は誰だ?」

「おめでとうございます!」

「次言ったら、今晩兎ステーキね」

「ぐっ……」


 手紙の内容をまとめるとこうだ。


 本日から新システム『ギルド』が追加。


 今から二週間後に初イベントとなる『城ギルド争奪戦』が行われる。


 ギルドって何? 全然説明書いてないんだけど。


 まあいいか。師匠達にも説明しよう。


「ふむ、面白い。目指すは城ギルドだな」

「そうですね。頑張りましょう!」


 あっれれーおっかしいぞー? なんでギルド知ってんの? ……後で調べよう。


「まあ、二週間後よりもまずは今日だよ! 今日の予定はレベル上げにしたいんだけど……どう?」

「うむ、私は構わんが、ネルロは……」


 ネルちゃんは今することがない。この辺の魔物は弱すぎる。ネルちゃんにとって。それにネルちゃんを恐れて逃げるので、ここには足の遅いイモムシくらいしか魔物が残っていない。


「私は別に構わないのですが……二週間後の為にも強くならないといけませんね」


 そういえばまだ子ドラゴンって言ってたな。大きさもすでにゾウくらいあるけど……まだまだ大きくなるの?


「じゃあちょっと、強いとこ行こうか」

「私と主人がお荷物になるぞ?」

「ネルちゃんフォローよろしく!」

「はい! お任せください」

「他力本願か……」


 実際ネルちゃんという心強い味方がいるのだからいいじゃない。それに私は『魔物使い』だよ?


「はぁ、でどっちの方向なのだ?」

「確か私の調べでは、『狼の森』を抜けた先」

「よろしければ背中乗って行きませんか?」


 え、乗りたい乗る。やったー。





 ……スゴイ、眼下に広がるのは広大な土地、先が見えない。


 ネルちゃん曰く、他の人に見られるとちょっと面倒らしいのでかなり高度を上げて飛んでいる。


「凄まじい高さだ……」

「師匠……怖いの?」

「な!? も、問題ない! 私は将来、月ウサギとして月に行くつもりだからな! このくらい……」

「ああ、ハイハイ」

「そろそろ森が終わりますよ」

「早いな……」


 もともと大きな森ではないけど早い、三分くらいかな? 名残惜しいけど、ネルちゃんなら乗せってって言ったら、いつでも乗せてくれるだろう。


「皆さん、しっかり掴まってくださいね!」

「え?あっ……」


 一瞬でこの後の展開を予想した私は、師匠を抱えてネルちゃんの鱗の出っ張りにしっかりと掴まる。


「いいですか? 行きますよ!」


 あれ? 師匠さっきからずっと黙ってるけど……生きてる?


「師匠! 生きてる!?」

「…………」

「師匠ぉぉぉぉぉ!!」


 私の魂の叫びを置き去りにして、ネルちゃんは急降下を始めた。

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