脱ゴーストタウン
北城の城門前でネルちゃんから降り、城下町の被害状況を確認しながら城まで歩くことにする。
思ったより被害は少ないかな?
一瞬得した気分になったが冷静に考えたら戦争前にメサリアさんに荒らされてたからそうでもないか。
そんな感じで城下町をみつつ、北城に入る。
ゴブリンさんは中庭で作業していることが多いのでそのまま中庭に向かう。
「ゴブリンさん久しぶり!」
「おう」
久しぶりに見たゴブリンさんは
でかくなっていた
誰?ってなるほど様変わりはしてないが、見た目に大きな変化が起こっていたのだ。
まずムキムキになった。今までは細マッチョって感じだったけど今ではゴリゴリのボディービルダーだ。
そして身長も少しだけ伸びたかな?多分2メートルくらいはあるんでなかろうか。
「えーと、進化したの?」
「ああ、やられてから暇だったからな。北城に入れねぇから作業もできねぇし」
ゴブリンは進化の多い種族らしいけどこれどこまで大きくなるんだろう。ジオさん並みに大きくなったりするの?ゴブリンにも省エネモード搭載されてんのかな?されてなかったら困るぞ。
私がゴブリンさんの将来についてうんうん悩んでいるとゴブリンさんからウキウキで話しかけられた。
「そんなことよりもハナ! コレが新作兵器なんだがどうだ!?」
「へ?」
そう言ってゴブリンさんが見せてきたのは戦車だ。しかし、驚くべきはそこではない。
「英国兵器じゃない……だと?」
そう、それはどこからどう見てもへったんだったのだ。
「すごくいいと思う! 最高! ゴブリンさん天才!」
いいぞ!これは非常に喜ばしい傾向だ!ドイツ戦車は強い!ここでべた褒めして、なんとかこの路線を確保しなければ!
「そうか、オレとしてはやっぱりなんかインパクトがたりねぇなって思ってたんだが。……そんなにいいか?」
「うんうん! もうホントに凄い! 是非このままがんばってほしいな!」
「おう! 任せとけ!」
さよなら英国こんにちは最強。
ゴブリンさんもハッピー私もハッピー。……幸せってこういうことを言うんだよねきっと。
こうしてルンルンハッピーな空気でお開きとなり、今日は各々過ごすことになった。
まあ戦後直後だからね。トッププレイヤー達はガンガン狩りを再開してるんだろうけど私はトッププレイヤーじゃないし……あれ、違うよね?ん?城主プレイヤーって……ん?
ともかく!使役魔物の体力面を考慮して今日はもう自室にこもって粘土あs……じゃなくてゴーレム制作して過ごそうと思う。ホワイト企業だからね。決して私が疲れてるとか外でたくないとかではない。
自室に入ってドアを閉め鍵をかけて一息。あっそうだアルクが城下町に入れるように設定しなきゃ。
城下町の設定画面を開いてプレイヤー立ち入りに関するページを開き、アルクとプレイヤー名を打ち込んだら立ち入り許可をする。これでよし。
まあアルク一人増えたところで城下町が脱ゴーストタウンにはならないが、かといって他にプレイヤーの立ち入りを許可する気にはならない。……一応恨まれることしてるって自覚はあるからね。
アルクの話によるとプレイヤーやNPCが払ってくれる税金というのはかなりウマウマというのが少し心残りだけど……仕方ない。
今のところはお金に困ってないし、また必要になったら考えよう。
そう自分を納得させて、ゴーレム製造を開始した。
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ゴーレムを作り始めてから2時間ほど経ったころだっだ。
なんか、外が賑やかだな。
この町で流れる主な音なんてゴブリンさんの作業音くらいだが、明らかにそれとは違った音が外から聞こえてくるのだ。
「まさか!?」
慌てて城下町設定を確認するが、相変わらずプレイヤー立ち入りは禁止になっているのでとりあえず胸をなでおろす。って……ん?
よく見ると、魔物(敵対MOB)の立ち入りが許可になっている。
ってことはつまり?
恐る恐る窓から外を覗くと様々な魔物が百鬼夜行で地獄絵図。この付近じゃ見ないような魔物までいるし……
設定を戻そうと思ったその時だった。
「ハナよ、聞こえるか?」
魔王様と念話が繋がる
「……何、魔王様?」
「どうだ?城下町は多少に賑やかになったか」
「えっとつまり?」
「ハナは今回の戦いで勇者討伐という快挙を成し遂げたからな。尊敬する魔物が増えておるのだ。だからハナの城の場所を教えてやった」
そうするとこれはあれですか?全部私のファンってことですか。
「まあ簡単に言えばそういうことだな。うまく国を治めるのだぞ」
そういうと念話が切れてしまう。
すると扉がノックされ
「ハナ様、少々外の様子が……」
姫ちゃんの声がする。
「あ、うん」
で、いったん城下町全部が見渡せるバルコニー的なところに、師匠たちもつれて出てみる。すると
「うおぉぉぉーーーー!!」「ハナ様だぁーーーー!」「こっち向いてえぇぇぇーー!」
といったように様々な声があちこちから飛び交う。ナニコレ?
「ハナさんここはビシッと一言決めちゃってください」
「ふむ、そうだな。ここでハナの威厳を見せつけることも大事だろう」
「素敵ですハナ様」
なんか盛り上がる仲間たち。そして
「ほらよ、これつくっといたぞ」
そう言ってゴブリンさんが拡声器を渡してくる。
「えーとっ……」
私が少し喋るとガヤガヤとした話し声はピタリと止まり、百どころではない無数の目に見つめられる。……全部ニンゲンだったら完全に致死量ブッチギリオーバー……。
盛り上がる一言ってなんだ?えーとえーと……
そうして私はふと頭に思い浮かんだ一言をほぼ反射的に叫ぶ
「ニューヨークにいきたいかあぁぁぁ~!!!」
うん、待って今のなしタイムノーカン何言ってんだ私。
場は一瞬静寂に包まれ
「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
とてつもない雄叫びと、拍手に包まれた。
ナ ン ダ コ レ ! ?
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このわけのわからない光景を一人のプレイヤーが見ていた。
アルクはハナに「城下町に入れるように設定したから遊びに来て」とメッセジーを貰ったため、さっそく来ていたのだ。
そんなアルクを迎えるのは謎の集会。流石のアルクも思わずつぶやかずにはいられなかった。
「……ナンダコレ」