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魔物使いの少女  作者: つい
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終戦

 

 目を覚ますとそこは真っ暗な空間だった。


 床や天井があるかもわからない。しかし、なぜか自分の体ははっきりと見える。


「ここは退場プレイヤーの待機部屋かな?」


 イベント中に退場したプレイヤーは一つの部屋に集められ、そこでログアウト、もしくは一般フィールドに戻る、イベント終了までモニターで観戦が選べるらしい。


「やっぱり私は一発退場なのか……」


 復活可能なのは人類側の話であって、魔王軍に味方する私は適用外のようだ。まあこのゲームの主人公はニンゲンだからね仕方ないね。


 それに使役魔物をほぼ失った魔物使いなど復活したところでって話だ。


 もうイベント終了間際だしこのままここでモニター観戦してようかな。っておい、モニター砂嵐なんだが?


 確かイベント中は実体のない無色無音無味無臭のカメラが飛んでいて、見所さんを映してるって話だったんだけど……もしかしてそれも人類軍限定ですか?


 私の疑問に答えてくれる声はなく、ただただ沈黙が流れる。


 はぁ、このままここにいてもしょうがないし、師匠たちも復活はまだしないだろうし。今日はここでやめようかな?……でもまだ姫ちゃんがんばってるしなぁ。


 わたしがそう一人でうんうん考えていると突然、私の脳内に声が響く。


「ハナよ、ハナよ聞こえるか?」

「……えっと、魔王様?」

「おお! どうやらつながった様だな」


 何が何だかわからないがどうやら魔王様と念話がつながったらしい。


「まずは戦争、ご苦労であった!」

「あ、ハイ」

「そんなところに一人いるのもつまらんだろう、こっちへ来い」

「いやそういわれても……」


 この空間からどうやって脱出すればいいのやら……。メニュー画面を開いてみてもログアウトしかできないし、あたりを見渡しても砂嵐モニターしか見当たらない。


「そうか…………ならば」


 そう魔王様が言うと突然、目の前に真っ白い、フラフープくらいの大きさの穴が現れる。


「タムタスに頼んで空間をつなげてもらった。そこを通ってくるとよい」


 うんうん、人生空間と空間がつながっちゃうこともあるよねー(脳死)


 私は考えることをやめ、無心で穴に飛び込んだ。


 ダンさんとの戦いで結構疲れているのだ。ツッコミはなし、起こったことをありのままに受け入れよう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を開けるとそこは魔王城の玉座部屋、つまり魔王様の御前だった。


「よしよしハナも来たな。タムタス、頼む」

「はい、お任せください」


 タムタスさんの細い目がカッと開き、緑色に輝き始める。


 そのままタムタスさんが呪文を唱えると、壁に戦場の様子が映し出される。映写機かな?


 タムタスさんが見ている映像を壁に映しているらしい。どうやってるかわかんないけど。


「おお、なかなか白熱しておるではないか!」


 魔王様が子供の様に興奮して叫ぶので、私も映し出された映像に目を向ける。


 うーん、どういう状況だコレ


 どうやら私が倒されてから結構時間がたっているようで、映像を見る限り


 ダンさん率いるプレイヤー軍が西城を守り、デラさん率いる魔王軍が攻め入っている感じかな。


 もともと西城にいた魔王軍は先ほど全滅してしまったはずなので今戦っているのは北城からの援軍だろう。


 ということは姫ちゃんやジオさん、アルクも戦闘に参加しているはずだ。


 私がそう思った瞬間、瞬時に場面が切り替わりダンさんと絶賛交戦中の三人が映る。


 え、ダンさん倒せそうじゃん。


 ダンさんを削ることができる火力を持つデラさんにジオさん。


 物理無効で一方的に攻撃できる姫ちゃん。


 最強の後衛アルク。


 うん、改めて考えると負ける要素なかったわ。


 あれだけ無双しまくっていたダンさんがここまで追い込まれているのを見るのはもはや切なくなってくる。これが盛者必衰か……



 しかし、結構ダンさん耐えるね。現状ダンさんは防戦一方でアルクデラさんジオさんの攻撃を受け続け、さらに時間がたてばたつほど姫ちゃんの呪いが効いてくる。


 なのに一向に倒れる気配が見えない。


 流石にここから反撃されることはないと思うけど……そろそろ時間がないなぁ。


 残りのイベント時間は数分しか残されていなかった。ここからダンさん倒して南城までいくのは無理がある。仮に着いたとしてもそこからさらに防衛を突破しなきゃならんのだ。何その無理ゲー。


 つまりここでダンさんを倒そうが倒さまいが結局引き分けには違いないのだが……見たくない?ダンさんが倒れるとこ


 だってあのダンさんだよ?ぶっちゃけ私の中でタケシさんの勇者よりも恐怖を感じた。このゲームの最強にして最凶


 私の現在ポジは最高の位置にある。なってたって自分が頑張らなくていい。応援するだけでもしかしたら恐怖の大王が倒れる瞬間を拝めるかもしれないのだ。


 着々と減っていくイベント終了時間をにらむ。ええい!ダンさんのHPが見れないのがもどかしい!


 ああまずい!イベント終了まで一分を切った!頼む!倒れて!倒れてくれ!


 残り30秒……


 がんばれがんばれできるできる絶対できるがんばれもっとやれるって!! やれる気持ちの問題だがんばれがんばれそこだそこだ諦めんな絶対にがんばれ積極的にポジティブにがんばれがんばれ!! 私だって(応援)頑張ってるんだから!


 3,2,1、



 そしてついに


 ダンさんのアバターが力なく倒れかけ、光に包まれて消えた。同時にジオさんたちの体も光に包まれる。


 イベント終了による転送だ。生き残っている魔王軍は魔王城に、人類はそれぞれの所属する城に帰ることになる。


 ……はたしてダンさんは倒せたのか、それとも単に時間ぎれで転送されたのか。


 戦場には一切の人影が無くなった。



 答えは本人しか知らない。






 

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